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 朝起きて外を見ると暑い雲に覆われて小雨が降っている。雲が真っ黒ではないのでひどい雨になりそうもないが傘は手放せない。傘をさして歩くのはうっとうしいが仕方がない。強い雨風にならなければ良しとしなければ・・・。

 今日は1日ザルツブルクの街中を見て歩く予定なので『SALZBURG CARD』を利用することにした。これは24時間、48時間、72時間の3種類あり、市内の交通機関が乗り放題、それにホーエンザルツブルク城などほとんどの観光スポットが無料(各々1回限り)で入場できると言う優れもの。ホテル、観光案内所などで買える。ちなみに24時間カードは20Euro、何ヶ所も見て回ろうとする方には絶対にお得。それに一々Ticketを購入する煩わしさもない。カードを買って自分で署名して利用開始日付と時間を記入すれば使えるようになる。10時から使用開始と書けば翌日の10時まで使用できる。最初に打刻してもらえばそこから有効になる。今回はこのカードを充分に活用した。

 ザルツブルク中央駅前からトロリーバスに乗り旧市街へ向かう。ホーエンザルツブルク城のケーブルカー乗り場を探してうろうろしていると、同じツアーのYさん夫婦とばったり会った。目的地が同じなので同行することになった。

 
ホーエンザルツブルク城塞標高120mの小高い山の上に建っており、完全な状態で現存する中世の城塞としては中央ヨーロッパ最大。1077年大司教ゲブハルト・フォン・ヘルフェンシュタインT世が己の安全な隠れ家として建て、以降700年に亘り増改築が繰り返され大司教レオンハルト・フォン・コイチャッハの時代に現在の姿になる。1076年中世ヨーロッパ史上有名な「カノッサの屈辱」が起き、大司教ゲブハルトはローマ教皇側に加担。ドイツ王ハインリッヒW世の報復を恐れた大司教ゲブハルトがこの城塞の建築に着手した。その後ヨーロッパの政情不安が長く続き、歴代の大司教が堅固な城を更に頑丈にしていった。 この城は一度も攻め落とされたことはなく、まさに難攻不落の実践的な城塞と言える。大司教が城塞を降りザルツブルクの街中に住む様になったのは、ヨーロッパ全域を巻き込んだ宗教改革も一息つき政情が安定してきた17世紀以降のこと。

 ケーブルカーに乗り城塞に上がる。ここからはザルツブルクの街中が一望に見渡せる。これなら敵が攻めてきてもその動きがよくわかる。小高い山上の堅固な城壁に阻まれてどうにもならないはずだ。城壁を見上げると壁に薄紫の小さな花が下を向いて咲いている。生き物はたくましい・・・どんな環境でも何とかして生きていこうとしている。

 
場内の一角にマリオネット博物館があるが今回は見なかった。博物館近くの柱の横穴に鳥の巣があり雛が5羽いる。何の雛だろうか?城内の建物間ををぐるっと一巡りして城内に入った。入り口で日本語イヤフォンガイドを借りて各部屋の説明を聞いて城内を回る。
 大司教の豪奢な居間「黄金の間」、儀式の間拷問部屋、1502年に作られたザルツブルク・ブル(ザルツブルクの雄牛)と呼ばれるオルガンなどを見ることができる。ザルツブルク・ブルはいったいどんな音がするのか聞いてみたいものだ。歴代の大司教の肖像画が飾られている部屋があり、そこにある模型を見ればこの城塞が増改築でどの様に変化していったのかが分かり様になっている。拷問部屋には様々な器具があるが、イヤフォンガイドの説明では「一度も使われることがなかった」と言っていたと記憶している。またこの部屋には深さ5m位の地下牢(縦穴)がある。この地下牢には名前は忘れたがある大司教が幽閉されたそうだ。あんな日の当たらない薄暗く、それも落とし穴の底の様な部屋に長期間閉じ込められたら、おそらく私は発狂しまうだろう。
 建物内の迷路の様な通路を通り屋上の高い見晴らしの良い所へ出る。ここからは360度全て見渡せる。晴れていると遠くの山ももっとはっきり見えるのだろうが、それでもかなり遠くまで見えた。東西南北あらゆる方向の見通しが利くということにあらためてこの城塞のすごさを実感させられた。

 ホーエンザルツブルク城内のホールでコンサートが開かれている。Mさんが今晩のコンサートの希望者を募っていた(最終的には7人)。私は既に日本でマリオネット劇場のTicketを予約していたので、今晩はここへ来る事ができない。ここで実際に音楽を聴いたYさんによると、普通のコンサートホールで聴くのとは違う雰囲気だったとのこと。

 ホーエンザルツブルク城からケーブルカーで降りて来ると12時をすぎている。
Mさんがプチ・ポアンの店に案内してくれると言うことで、14時半にMozartの生家の前で待ち合わせすることになっている。そこで昼食をとる前にもう1ヶ所行こうということになった。

 
レジデンツ(大司教舘)は1120年から1803年までの歴代大司教の宮殿。現在の大司教舘は1595年ザルツブルクを”北のローマ”にしたいと考えていた大司教ヴォルフ・ディートリッヒ・フォン・ライテナウの命で建てられた。その後18世紀大司教パリス・ロードローンの時代に現在の姿になった。

 ここには大司教の威光を示すが如く約180もの部屋がある。「
皇帝の間」、「騎士の間」、「戴冠の間」、「白の間」、「控えの間」などが見学できる。ここは”No Flash OK”なので写真を撮影できる。どの部屋も大司教の権力を誇示するかの如き豪華な装飾品で満ちている。ここでもストーブが調度品の一つとして各部屋に鎮座している。ゴブラン織りのタペストリーも素晴らしい。「会議の間」では6歳のMozartが初めて大司教の前で演奏を披露している。この演奏をきっかけに、後日マリア・テレジアに謁見し御前演奏を行なった。 その時の幼きマリー・アントワネットとのエピソードは今も語り継がれている。ここのホールでもコンサートを行なっている。さすがザルツブルクは”音楽の街”。
 レジデンツの3Fにレジデンツギャラリーがあり、1610年以降の大司教のコレクションが展示してある。ルーベンス、レンブラント、ブリューゲルなどの作品を鑑賞した。

 ゲトライデガッセのファーストフードの様な店で軽い昼食を済ませ、Mさんとの待ち合わせ場所へ行く。Mさんの案内で
プチ・ポアンの直営店へ・・・建物の奥まった所にありそこにその様な店があるとはちょっと気がつかない。モノも良いが値段もよい。表示価格の20%Off、更に現金だとTax分(約13%)を先に還してくれるとのこと。ここへは日本人がけっこう来るらしく、店員(男性)が”げんきん”とか”ちょっと待って”など片言の日本語を話している。 それだけ日本人が多くここへ来るのだろう。Mさんが「日本で買うとここの5〜6倍はしますよ」と言っていたが、実際日本に帰国してから調べたら確かにその位する。輸入すると関税、輸送費、マージンなどで価格が跳ね上がる。それにしても価格の差の大きさには驚いてしまう。

 Yさん夫婦とはそこで別れ、ベネディクト派の
ザンクト・ペーター教会方面へ向かう。696年にキリスト布教の為にテオドーニU世の命で聖ルーペルトが開いた。1127年建設当時のロマネスク様式はほとんど残っておらず、17〜18世紀にバロック様式に改築され現在に至る。尚、教会は閉まっていて中に入ることはできなかった。

 教会の裏手には
墓地がある。この墓地は映画「Sound of music」の中で、トラップ一家がナチスの追及から逃れる為ノンベルク修道院の尼僧の手引きで隠れるシーンで使われている。映画の中では一家は墓碑の後に隠れたが、墓の後には隠れる様な場所はないと思うのだが・・・?私の記憶違いなのだろうか?それとも見過ごしただけ・・・?映画の中ではノンベルク修道院のすぐ裏手に墓地があるように描かれていたが、実際は直線距離で600m位遠く離れている。

 教会の裏手の崖には
カタコンベ(納骨堂)がある。垂直に切り立った崖にある急な階段を上がっていくと、メンヒスベルクの山肌を見事にくりぬいて作られているのが分かる。ここは昼なお暗く薄気味悪い。神聖な場所ではあるが、やはり心地よい場所とは言えない。

 レジデンツ広場を抜けると、すぐ近くに1705年創業の老舗
カフェ『トマッセリ』がある。1Fと2Fにテラスがある。店に入るとけっこう混んでいたが、観光客は少なく地元の人達が談笑している。ウイーンの『ザッハー』はいかにも高級感を出していたが、ここはぐっとくだけてやわらいだ雰囲気がある。1Fが満員で2Fに通された。Cake担当の女性に好みのCakeを注文すると、テーブルまで持って来てくれてそこで料金(チップ込み)を払った。Coffee担当の男性が来て別に注文をとる。やはりテーブルまでCoffeeを持ってきた時に料金(チップ込み)を払った。支払い方法は店により異なり、CakeとCoffeeの料金を合わせて支払うこともある。

 ホテルで夕食を済ませる様に、先ほど昼食をとったゲトライデガッセの店でパンやサラダを買う。シュターツ橋近くのバス停からバスに乗りホテルに戻る。18時頃早めの夕食を済ませる。予約しているTicketの引き換えが午後7時までと書いてあるので、駅前のターミナルから18時40分頃のバスに乗り
マリオネット劇場へ向かう。

 
マリオネット劇場でTicketを引き換えホールで開場を待つ。入り口の上部に昔のポスターが貼ってあるが、その中にいかにも古そうな日本語のポスターがある。よく見ると入場料が最も高い特別席で1000円とある・・・戦後であることは分かるが何年に開催されたのかはどこにも書いてない。

 
今晩の演目はオペラ「ヘンゼルとグレーテル」・・・言葉はドイツ語で全くわからないが、童話の荒筋を知っているので見ていて何を演じているのかは分かる。ここで演じるのは人間でなく、操り人形である。1つの人形に2人ついて楽曲に合わせて見事に人形を操作する。舞台も奥深く手前と奥と人形が行ったり来たりしている。”よく糸がこんがらないものだ”とただただ感心した。幻想的な舞台に素晴らしい人形操作・・・ただならぬ感銘を覚え実質2時間の公演が終了。カーテンコールで操作している人達の姿が見えたので、人形の大きさがどれほどかよく分かった。観客から惜しみない拍手が出演者に贈られた。感想は全てこの一言に尽きる・・・「感動した!」

 マリオネット劇場前からバスに乗り21時45分にホテルへ戻る。部屋の窓からホーエンザルツブルク城に明かりが見える。翌日行った人から聞いたのだが、開演が遅れ終演は22時半頃だったそうだ。
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