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10月5日(水)

 村上ファンドが阪神電鉄に対しプロ野球の阪神タイガースの上場を提案していることが明らかになった。村上氏は既に38.13%(10月4日現在)の阪神電鉄株式を所有している。阪神電鉄の『最良の資産』阪神タイガースを上場させることにより、全株式を保有する阪神電鉄は莫大な上場益を得られる。そこで得た利益をグループ内の他事業分野にも投資できる。阪神電鉄の業績向上に大きく寄与し株価上昇や増配も見込める。加えて選手グッズ販売権やTV放映権などにより、球団自体のビジネスを大きく膨らませることも可能になる。すると大株主の村上ファンドにも大きな利益をもたらすとの目論見があるのに違いない。もしかしたら所謂”取らぬ狸の皮算用”かもしないが・・・?但し現時点では過半数を超えていない為、臨時株主総会を招集したところで可決される見通しはない。然るに球団の上場ネタで(結果がどうなろうが)市場が反応し、阪神電鉄の株価が上昇すれば当面村上ファンドの含み益が膨らむことになるが・・・。

 ある証券専門家は「
投資ファンドとして活動する以上、経営云々が目的ではない。株主総会で自分の議案を提出して株価を上げ、株式を売り抜けて売却益を上げるのが目的だろう。」との見方を示している。私も全く同じ見方であり、その筋ではこの様な見方が大勢を占めている。一方で共同通信が「経営権を掌握する為株式の過半数取得を視野に買い増しを続けていることが5日、関係者の話で分かった。」と報じている。この類の報道は時として信憑性に欠けることがあり素直には信用できない。とにもかくにも情報が錯綜していて今のところ実態がよく分からない

 東証マザーズに上場申請する場合には決算書と株主総会決議が必要で、かつ審査には少なくとも3、4ヶ月要する。阪神タイガースは12月期決算で決算書作成が早くて2月中旬、それに株主総会を経て上場申請出来るのが2月下旬になる。それからの上場審査、承認、そして上場の段取りでは上場益を得るまでにかなりの期間を要する。
巨額の投資をしている村上ファンドがそんなに投資効率の悪いことをするとは考え難い。また日本プロ野球協約では筆頭株主の変更や特定株主が発行済み株式総数の49%超を所有する場合、実行委員会およびオーナー会議の承認が必要と定めている。仮に村上氏が阪神電鉄を乗っ取りタイガースを上場して日本プロ野球機構の規定に触れる状況に陥った場合、プロ野球の実行委員会及び最高意思決定機関のオーナー会議が球団存続を認めるとは考え難い。数多くの高いハードルが待ち構えているのにも関わらず、果たして村上氏が”無駄な”労力を費やすことはあるのだろうか?

 今回の阪神電鉄を巡る騒動に絡み堀江氏の存在が取り沙汰されている。村上氏の動きの陰にプロ野球球団経営に強い関心がある者の存在があるのでは?・・・言い替えれば村上ファンドに出資して阪神電鉄に狙いを定めている者がいるとの見方が出ている。そこで最も有力視されているのが昨年近鉄球団獲得に失敗した堀江氏・・・フジサンケイグループから掠め取った巨額の資金がまだ手元にかなりあると思われるので名前が挙がってもおかしくない。堀江氏は当時”金があればいいってもんじゃない”と陰口を叩かれて撥ねられた経緯があり、ここで再登場してもまたもや拒絶される可能性がある。

 一方村上氏がどれだけ球団経営に関心があるかは分からない。ファンドマネージャーとしては出資者に対して利回りを保証する立場にあり、短期で利益を確保するMissonを全うするには球団経営の様な不確実な事業に手を出すとは考え難い。今までに既に村上氏は約1000億円もの巨額の資金を投じているので、当然出来るだけ早く利益を確保することをまず第一に考える。とすれば何らかの方法で阪神電鉄株式を出来るだけ短期間に捌きたいと考えるのが普通の感覚・・・しかしながら約1000億円もの株式を捌くのはなかなか容易ではない。

 村上氏の取り得る選択の道は
長期保有市場での売り抜け阪神電鉄への買い戻し要求第三者への(市場外での)売却の4通り考えられる。まず長期保有は既述している様に考え難い。市場での売り抜け・・・市場への放出株式数があまりにも多く需給バランスが崩れて株価暴落の恐れがあり難しい。とすると阪神電鉄への買い戻し要求第三者への(市場外での)売却のいずれかの可能性が高い。何せよ村上氏が動き出せばその狙いが自ずから明らかになって来る。極論すれば金儲け最優先で動いている村上氏のことだから、結局は条件の良いところに着地するのは”火を見るより”明らか・・・。堀江氏同様遠からずその実態は白日の下に晒されることになる。

 ところで村上ファンドが阪神電鉄株式を短期で売り抜けて利益を得た場合、証券取引法の第164条の『役員等の不当利益返還』の規定に抵触しないかどうか疑問がある。そこで証券事情に詳しい方に問い合わせたところ、以下の様な回答を頂いたので(原文のまま)掲載する。投資ファンドについては適用対象外との考え方が一般的とのこと・・・とすれば村上ファンドは堂々と短期で売り抜けが出来る。法律解釈、あるいは運用は難しい点が多く、この件に関してもまだ理解が不充分なので自分なりに別途調べることにする。

 証取法164条の8では「売付け等の態様その他の事情を勘案して適用しないこともある」としていますがこの解釈を最高裁判例では以下のようになってます。
 「類型的にみて取引の態様自体から役員若しくは主要株主がその職務若しくは地位により取得した秘密を不当に利用することが認められないときは除く。」
 MSCBやCBの多くは10%以上の保有が多いですが証券会社やファンドが短期売買の返還請求に発展していないのは証券会社やファンドの所有株はこの164-8にあてはまっているのだと思われます。ファンドは背後の投資家単位でみる為、短期売買の返還請求の対象にはならないと言う考えも有るようです。


 阪神電鉄を巡る騒動はまだまだ始まったばかりで、この先どの様な展開になるのか分からない。今では過去の出来事になりつつあるライブドア絡みよりも、”今が旬”のこちらに関心があり追いかけることにした。尤もこちらの騒動に堀江氏が出現したら合わせて追いかけることになるが・・・。
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