第15段 * 大阪女子国際マラソンを終えて *

 
2004年1月25日アテネオリンピック予選を兼ねた大阪女子国際マラソンが行われ、坂本直子が2時間25分29秒のタイムで優勝した。坂本は日本人トップ、かつ2時間26分を切るという条件をとりあえず満たした。世界選手権2位の野口(内定)についで、現段階では世界選手権4位の実績もある坂本がオリンピック代表の有力候補になっている。高橋尚子は東京女子国際マラソンで最後に失速して2時間27分21秒の平凡なタイムで2位となり代表入りは大いに微妙。この思わぬ敗戦が代表選定に波紋を起こしている。3月14日の名古屋女子国際マラソンが終わらないと最終的にどうなるかわからない。

 大阪のコースは速いタイムの出る高速コース。坂本をはじめ渋井陽子、千葉真子、大南博美など有力選手が揃い、速いタイムでの決着が期待されていた。ところが1月25日大阪は午前中小雪が舞い、スタート時点の気温3.8度の過酷なコンディション。また勝負を意識するあまり前半は超スローペース、そして30Kmまでなかなかペースが上がらない。
見ていて迫力のないつまらない展開になってしまった。競馬に例えれば前半超スローペースで最後3ハロン(600m)だけの ”上がりの競馬” になってしまった。30Kmすぎてでレースが動き坂本がスパート、すると千葉、渋井、大南は全くついて行けずあっという間に差を広げ大勢は決した。30Kmから35Kmまで15分47秒でクリアしたのは見事、安定して速いラップをふめる様になって欲しい。しかしそれにしても他の有力選手がこれについて行けなかったのは情けない。結局坂本が2時間25分台で1着、何とかオリンピック代表候補の資格を得たが平凡なタイムだけに決定とは言いにくい。世界選手権3位の千葉は今回2位になったものの、2時間27分38秒と平凡で東京での高橋のタイムより劣っており代表入りは苦しいと思われる。渋井の所属するチームの監督は、「予想外の遅いペースにリズムをつかめなかった。」と言った。しかしそんなのは理由にならない。今のマラソンは自分でレースを作れないようでは勝てる見込みは少ない。

 
残るは3月14日の名古屋女子国際マラソンのみ、翌日にはアテネへの切符が確定する。有力処では土佐礼子、大南敬美くらいか?名古屋は3月に行われることもあり、例年気温が高くなる。また風も強く記録が出にくいと言われている。今回の大阪での結果を受けて、名古屋を走る選手の中から代表が選ばれる可能性が低くなったと言われている。名古屋ではかなりの好タイムで日本人1位、のみならず優勝しないと代表には選ばれないだろう。例え名古屋で1位になっても今回の様な平凡なタイムでは、高橋の実績が重視されるのでは・・・?

 前回の高橋の東京での敗戦は慢心だったのか?それとも力が落ちてきたのか?高橋本人も小出監督、日本陸連関係者、それに見ている人誰もが高橋の勝利を100%信じていた。事実レース中途までは高橋が予想通り独走しぶっちぎりの優勝・・・と思っていたらあっという間に失速したのには驚いた。さすがの小出監督もショックのあまり、あらかじめ設定していた記者会見をCanelしてしまった。当然優勝しアテネ確定で臨むはずの記者会見がダメになってしまったのだから・・・。

 当初は高橋陣営は名古屋への出場も考えていた様だが、今回の大阪での期待外れの平凡な結果にどう対応するのだろうか?大阪で大勢が好記録を出していれば当然名古屋に出場せざるを得ない。東京女子国際マラソンの直後は高橋陣営、さすがの小出監督も少々弱気になっていたが、昨日のレース結果を見て俄然強気になった。橋陣営ははっきりとは態度を示していないが、多くの報道を見ると名古屋に出ない公算大と思う。小出監督は「代表選考はまだわからない。ただ専門家が見れば誰が強いのかわかっている。」と言い切った。高橋への親心のつもりかもしれないが、
他の選手や監督に対して失礼かつ不遜な発言である。確かに高橋は2時間20分を切る日本最高タイムを持ち、また優勝経験も豊富で自他共に認める日本No.1である。しかし小出監督にあからさまにこの様に言われると、へそ曲がりの私は反発を感じる。高橋は名古屋に出て有無を言わせぬ強さで勝ち、すっきりした決着でアテネ代表を決めて欲しい。(結局高橋は名古屋を見送り、3月15日の結果発表を待つことになった。さてこれが吉とでるか、はたまた凶とでるか?)

 
マラソンのオリンピック代表選考にはかつてすっきりしない決定が見られた。1986年ロサンゼルスの瀬古(現SB食品監督)の場合。瀬古は故障で福岡、東京などのオリンピック代表選考レースに出られなかった。そこで日本陸連は決定を先送りして、実績抜群の瀬古を琵琶湖マラソンでの平凡なタイムで優勝にもかかわらず無理やり代表に選出した。本番では14位の惨敗、マスコミからは非難の嵐を浴びた。2000年シドニーの弘山晴美の場合。弘山は同年の大阪で当時日本歴代3位の記録を出しながら、ルーマニアのシモンに僅か2秒差で敗れた為代表には選ばれなかった。但しこの時選ばれた高橋、山口、市橋と揃ってレベルが高く選考が難しい状況だった。現状を考えれば特に日本の女子マラソンの代表枠が3は少ないと今も痛切に感じる。

 女子マラソンの場合代表枠が3なのに、選考レースが世界選手権、東京、大阪、名古屋と4レースある。条件の異なるレース結果の比較が難しい。コース設定、気温、風などなど、単純にタイムだけでは比較できない。以前は現在の様な基準が明示されておらず物議を醸したが、その反省を踏まえて現在の基準が示されている。代表候補の要件として、”日本人トップ”、”2時間26分未満”が設定されている。
し4つのレース全てでこの要件を満たしたら選考は困難を極めることだろう。ましてもし4つのレース全て日本人が優勝したらどうするのか?

 何かうまい方法はないものか?いっそのことアメリカの陸上、水泳の全米選手権の様に一発勝負などと考えたりもする。もっとも層が薄い競技でこれをやると、その時だけたまたま調子が良く選ばれるケースも出てくるのでリスクが大きい。代表枠と選考レースの数を合わせるべきと思うが、その場合どれを選考レースにするか難しい。一定期間の間の指定レースの実績で各国の代表枠を割り当てる方法もある。しかしどの期間のどのレースを対象にするのか、具体的な割り当て方法は・・・などと考えると実現は難しい。

 とにもかくにも
3月15日の代表発表では誰もが納得するすっきりした選考結果を示して欲しい。
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