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第43段   * 大相撲名古屋場所を終えて (2004年7月24日) *

 
横綱朝青龍は名古屋場所、終盤もたつきはしたものの相変らずの強さで13勝2敗の優勝を果たした。千秋楽の結びの一番大関魁皇との対戦は、”これが横綱vs大関の一戦?”と首を傾げたくなるほどあっという間に一方的にケリがついた。今日の一番を見てもその強さはダントツ、他の力士との差は広がる一方。栃東、若の里にまさかの連敗を喫した時はどうなるかと思わせたが、その後はきちんと軌道修正して磐石の相撲で締めた。まさに朝青龍の『黄金時代』到来言っても過言ではない。もはや次の興味は”いったい誰が朝青龍の独走を止めることができるのか?”の一点になっている。

 相変らず人の大関は情けないとしか言いようがない。終わってみれば武双山は8勝で辛うじてカド番脱出、しかし14日目の魁皇戦で古傷の肩を痛めて千秋楽は休場となる始末。千代大海は終盤戦にもろくも崩れて、不戦勝を入れて10勝とはお粗末。魁皇は一応千秋楽結びの一番まで優勝争いをしたものの、対朝青龍戦ははっきり言って惨敗。5日目までに早々と2敗しては苦しい。横綱より負け星が先行したのではやはり優勝の可能性は低い。一方関脇に陥落した栃東はなんとか10勝をあげ一場所で大関復帰を果たした。栃東が朝青龍に完勝した時には期待を持たせたが、魁皇、琴光喜に連敗、更には千秋楽に新鋭の白鵬に破れ尻つぼみに終わった。それでも10勝をあげ来場所は大関に復帰する。まだ栃東は本調子にはほど遠い。僅かではあるが今の大関では唯一横綱のなる可能性があると思う。元大関の雅山は久々に良い相撲をみせて千秋楽まで優勝争いに加わった。来場所は三役復帰の可能性もあるが、果たして大関復帰の目はあるのだろうか?注目して9月場所を見てみたい。一方では若い世代の影が実像としてひたひたと大関陣に迫ってきている。世代交代はもう既にそこまで見えている

 かつてライバルと言われた若の里、琴光喜の2人は、もはや朝青龍にとってはライバルと言える存在ではないのではないか。琴光喜は朝青龍に下手投げの完敗、若の里は土俵際逆転の叩きこみで破ったもののの相撲内容は最低。結局琴光喜は7勝8敗と負け越し、若の里は8勝7敗と全くの期待外れに終わった。琴光喜は相変らずムラが多く、本場所の相撲をとってみないとどうなるか全くわからない。若の里は負ける時はその欠点をもろにさらけ出しあっけなく負けることが多い。胸を出す立会いは一向に改善されず、今場所も黒海、千代大海、北藤力の突き押しに一方的に屈した。当然本人もわかってはいて何とかしようと努力しているのだろうが、それが結果に現われなければ何にもならない。年齢も28歳、いつまでも”実力者”と言われ続けてはいけない。

 一方幕内、十両には将来有望な力士の台頭が著しく大いに期待が持てる。やはり
土俵の活性化には、かつて貴花田、曙、若花田が競り合って上がってきて盛り上がった様に有望な若手の出現が必要である。黒海は幕内東2枚目で8勝勝ち越しと来場所の新三役昇進が濃厚となった。若の里、栃東を破った一番が印象深い。まだ相撲の取り口には改良の余地がありもっと強くなる要素がある。白鵬は幕内東8枚目で11勝をあげ、来場所は幕内上位の横綱、大関に当たる地位まで上がってくる。雅山と栃東を破った一番は印象深い。十両を2場所で通過した時はまだ幕内は早いのではと思ったが、先場所12勝、今場所11勝と2場所連続の2ケタ勝利とは素晴らしい。相撲っぷりはまだまだ未完成、もっと強くなる可能性を秘めている。それに19歳の若さは魅力充分、今から横綱朝青龍との9月場所の対戦が楽しみ。

 十両では
露鵬萩原、琴欧州、豊ノ島ど有望な人材が揃っている。露鵬
は先場所は惜しいところで頭ハネを喰い東筆頭にとめられたが、今場所10勝をあげ新入幕を確実なものにした。相撲の取り口はまだ甘いところがあり改善の余地が残っている。弟の白露山が来場所新十両のなるのも発奮材料になるだろう。豊ノ島は東4枚目で11勝をあげ新入幕を確実なものにした。身長171cmで第2検査で合格したが、その運動能力は素晴らしいものがある。高校相撲で鍛えただけあって相撲の取り口の完成度は高い。幕内にあがっても技能派力士として更に技に磨きをかけて頑張るだろう。琴欧州は13勝の十両優勝で、僅か2場所で十両を卒業し新入幕が確実。203cmの長身を生かした相撲の取り口は迫力充分、立会いの当たりの甘さが残っておりこれが改善されれば更に強くなることは間違いない。一方萩原は千秋楽の一番に勝ちようやく勝ち越しを決めた。少々足踏みの感があるがあせる必要はない。何と言っても7月にようやく18歳になったばかり、相撲のキャリアも浅く身体、相撲共に大きな成長が見込める。周囲の期待も大きく、おそらく年内の入幕は間違いないだろう。稽古に精進して一刻も早く同期の琴欧州、豊ノ島に追いつき、お互いに切磋琢磨して上位を目指して欲しいそして横綱朝青龍打倒の先鋒、更に大関、横綱を目指して欲しい。

 ところで名古屋場所では不可解な出来事が2つあった。1つ目は
8日目の朝青龍vs琴の若戦の同体取り直しの審判の判定。琴の若の上手投げで朝青龍の体が裏返しになりほとんど土俵に背中がつきそうのなったその瞬間、琴の若の手が土俵についた。軍配は琴の若に上がったが、物言いがつき審判協議の結果同体との裁定となった。取り直しとなればどう考えても横綱有利、朝青龍が切り返しで勝ちを収めた。”同体”はどう考えても納得がいかない。明らかに”突き手”か”庇い手”であり、いずれかを勝ちとしなければおかしいのではないか?”同体”にしたのは”突き手”、”庇い手”の裁定を避けた審判の逃げと言わざるを得ない。北の理事長が三保ケ関審判長の説明を聞き、「行司軍配が、琴ノ若にあげたのは当然。取り直しの相撲じゃない。横綱の体がひっくり返ったとき、琴ノ若の手は(土俵に)ついていない」と述べている。私個人の意見も理事長同様朝青龍は完全な死に体でありあれから逆転できたとは到底思えない。琴の若の手がついたとしても、それは”庇い手”とみなすべきであろう。実に後味の悪い裁定である。

 そう言えば協議の場に貴乃花親方が審判として加わっていた。それを見て貴乃花vs雅山の疑惑の判定を思い出してしまった。雅山の二丁投げで完全に裏返しになっているのに、やはり同体の裁定で取り直しになり結局は貴乃花の勝ちとなった。
この時もまた三保ケ関審判長とは・・・。TVで大相撲中継を見ていると怪しげな裁定がけっこうあると思う。それに「何で物言いがつかないのか?」と思う一番もある。かつて大鵬vs戸田戦、いわゆる”世紀の大誤審”があり、審判の協議の際VTRを参考(あくまでも参考である)にするように改められた。それで大鵬vs戸田戦の様なとんでもない誤審は防げるようにはなった。それでも相変らず”首を捻る”様な裁定はまだまだある。審判長がVTR室からの情報を聞き参考にしているのであり、実際にVTRを見ているわけではない。相撲協会によれば”人間の目が一番確か”とのこと。”土俵の下で間近で見る”のは”VTRで見る”のと違うそうだ。両者を合わせて裁定を下せばより確からしさが増す。おそらく今度大鵬vs戸田戦の様な大誤審でもあれば、さすがに相撲協会も考えると思うのだが・・・。

 2つ目は名古屋場所で多くの力士が優勝争いを演じ本場所を盛り上げたのに、
三賞選考結果は何と殊勲/技能の両賞は該当無しで敢闘賞の豊桜ただ一人。これを聞いて私は何だ、これは!」と愕然とした。翌日の新聞を見て選考理由のあまりのひどさに呆れ返ってしまった。豊桜、雅山、白鵬、栃東など候補者が多く、”三すくみ状態”になり規定の票数に達せず『該当なし』になったとのこと。全くひどい話で土俵上で頑張っている力士が浮かばれない。雅山も「これで何ももらえないとは・・・」と嘆いたそうだ。さすがにこの結果に納得できない選考委員も多く、次場所からは「三賞にふさわしい力士をまず選ぶ」ことに決めたそうだ。当然のことだが何故来場所から?そこまで議論があったならば、何故今場所の選考をもう一度やり直すことができなかったのか?また選考をやり直そうという意見は出なかったのか?一度決めたことだから撤回できないということであれば、あまりにもお役所的、官僚的ではないか?選考の場にはマスコミの記者の他に審判部長、副部長も同席している。選考をやり直すくらいの決断はすぐさまできたのではないか?この件に関して場所後の横綱審議委員会で批判の声が出た。当然のことであろう。この様な馬鹿馬鹿しい理由で馬鹿馬鹿しい選考をした選考委員の責任は重い。せっかく若手の台頭で盛り上がってきているのに水を差す様な行為は許し難い。二度とこの様な馬鹿げた選考があってはならない。

 若手の台頭が著しく土俵が活づいてきている。特に名古屋場所の十両の土俵は面白かった。朝青龍もまだ23歳と若いが、更に若い世代が”打倒!朝青龍”を目指してすぐにでも上がってくる。2005年の今頃の相撲界の勢力分布はどうなっているだろうか?それを考えると今からワクワクする。
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