2005.03.21
東京高裁でのライブドアの『時間外取引』によるニッポン放送株式大量取得への判断に注目している。東京地裁の決定理由では「立法趣旨からみて相当性を欠く」としながらも現行法では違法ではないとしている。ライブドアは明らかにTOBの本来の目的を逸脱していると看做せる。そうであればより踏み込んだ法律判断をしても良かったのではないか?
2月8日の『時間外取引』では30分ほどの短時間で、何と通常の100倍ほどの約970万株もの売買が行なわれている。どう見てもこれは異常な状況と言わざるを得ない。事前に売り手と買い手の間にネゴができていなければ簡単にまとまる取引とは到底思えない。
ニッポン放送の発行済み株式を超える大量の「新株予約権」発行は、今回の場合どう考えても正当性があるとは考えにくい。しかしながらライブドアの法の抜け穴を利用した『時間外取引』は、”法の精神”を踏みにじる脱法(違法)行為と言える。どちらの行為も容認できず勝者にしたいとは思わない。では何か落とし所はないのだろうか・・・?これについては近々コメントしたい。
2005.03.22
ライブドアの株価は一時前日比30円高の398円まで上昇したが、終値は13円高の381円で取引を終えた。出来高は約1億8245万株と連日の大商いで、先週金曜日の取引量を大幅に上回った。フジテレビが「”パックマン・ディフェンス”と呼ばれる逆買収を検討中」との観測が広まったことが、ライブドア株価の連日の続伸に繋がったと見られている。フジテレビが”究極の手段”としてライブドアの逆買収に出ることは充分に考えられる。暫くライブドアの株価の動きと取引規模には目が離せない。
一方先週3日間で94000円(40.9%)上昇したフジテレビ株価は、ひとまず利益を確定しようとする売り注文とフジテレビの第三者割当増資情報により終値は前日比22000円安の302000円で取引を終えた。前述の様にフジテレビの500億円増資計画が明らかになり、明日以降株価がどの様な動きを示すか注目される。
明日にも東京高裁がニッポン放送「新株予約権」差止めの仮処分決定が下されると見られる。両者は最高裁まで争うとしているが、3月24日が「新株予約権」発行予定日の為事実上東京高裁決定が最終的な判断になる。いよいよ両者の一騎打ちの大きなTurning Pointを迎える。
東京地裁は「新株予約権」について「現経営陣の支配権確保が主要目的であり、特段の事情がない限り不公正発行にあたる」としている。特段の事情として、「買収者側が株価をつり上げる目的の場合」、「買収者による支配権取得が回復しがたい損害をもたらすことが明らかだと会社が立証した場合」などを示している。ニッポン放送は今回の「新株予約権」発行が東京地裁が示した”特段の事情”にあたることを示さない限り逆転勝訴はない。客観的に見て説明が難しいと思われるが、さてどうだろうか?
2005.03.23
M&A仲介会社のレコフが4月企業価値研究所を社内に新設し、敵対的買収への防衛策などをを企業に指南するコンサルティング事業に着手する。企業価値などの正確な分析力を有する専門家が必要となる為、元山一証券経済研究所出身者でつくる森山弘和事務所の全株式を取得して子会社化する。今回の一連の騒動で日本企業のM&A対策の遅れが顕在化した。上場企業の多くが今回の出来事を教訓に企業防衛策を打ち出すのは間違いない。M&A対策のコンサルティングは当面需要拡大が見込まれ発展性がある事業になるだろう。
東京高裁は「新株予約権}発行差止め仮処分に対するニッポン放送の保全抗告を棄却した。ニッポン放送は特別抗告や許可抗告はしない方針とのこと。東京高裁の決定理由は「企業価値は裁判所が判断するものではない」とした以外は東京地裁の決定をほとんど追認している。もし最高裁にまで持ち込んだとしても3月24日までに仮処分決定を覆すのは不可能で、これでライブドアの全面勝利となる。6月末の株主総会で大半の取締役を送り込むと見られ、ライブドアがニッポン放送の経営権を掌握するのは確実な情勢になった。
2005.03.24
フジテレビ、ニッポン放送、ソフトバンクグループのソフトバンク・インベストメント(SBI)の3社は、ニッポン放送保有の全てのフジテレビ株式353704万株(発行済み株式の13.88%)をSBIが株券消費貸借により借り受けることで合意した。貸借期間は2005年3月24日から2010年4月1日迄の5年間とし、議決権がSBIに移りSBIがフジテレビの筆頭株主となる。既に残り8.63%は今年2月大和証券SMBCに貸し出しおり、今回と併せてニッポン放送のフジテレビへの議決権が全て消滅する。”焦土作戦”、「ホワイト・ナイト」の効果がある防衛策と言える。法的に見てもライブドアは株券消費貸借を差し止めることが難しく、フジテレビの経営に関与を狙っている堀江氏にとりダメージがあるかもしれない。 だがソフトバンクグループ総帥孫正義氏の存在は何やら不気味な匂いを漂わせている・・・。
読売新聞は「フジテレビとライブドの提携交渉が担当役員レベルで行なわれ、ライブドアから具体案が提示された。」と報じている。ライブドアは1/2超保有するニッポン放送株式をフジテレビに譲渡し、フジテレビ株式を第三者割当てなどで取得する案とのこと。フジテレビ株式を20%程度取得し連結決算対象とし、かつフジテレビに役員2〜3人の派遣を求めている。これに対してフジテレビは慎重な姿勢を示しているらしい。ところで前述のSBI、大和SMBCへのフジテレビ株式貸与によるニッポン放送のフジテレビへの議決権消滅は提携交渉にどの様な影響を与えるのだろうか?
ニッポン放送の番組にレギュラー出演しているタモリと脚本家の倉本聡、市川森一の各氏が、同放送がライブドア傘下になった場合には降板することを表明している。出演交渉を受けている歌手の中島みゆきも、ライブドアが経営権が掌握した場合には出演しないことを伝えている。更に野球解説者の江本孟紀氏も既に降板する意思を示した文書に署名押印して渡している。この動きは拡大して行くのだろうか?ニッポン放送はこの証言を「企業価値」を示す証拠として書面を提出したが、東京高裁では「代わりはいくらでもいる」とあっさり退けられた。但し堀江氏の今後の戦略やニッポン放送のプログラムに影響を与えるかもしれない。
昨日の東京高裁の仮処分決定とライブドアが更に買い増すとの情報を受けてニッポン放送の株価は買い注文が殺到し、終値はストップ高の前日比1000円高の7280円で取引を終えた。もしも1000株持っていれば僅か1日で100万円儲けたことになる。前述のフジテレビに”秘策”を受けて明日は大幅下落も考えられる。当然逆もあり得る訳けで、私は改めて”株は恐ろしい、手が出せない”との想いを強くした。
2005.03.25
昨日のフジテレビの”秘策”を受けてライブドアとニッポン放送の株価は大きく下落した。ライブドアの株価はライブドアとフジテレビの提携の可能性が薄れたとの見方が強く、終値は前日比27円安の342円で取引を終えた。一方ニッポン放送の株価も大きく反落し、終値は前日比780円安の6500円で取引を終えた。ニッポン放送が保有していたフジテレビ株式を手放したことや、タモリなどの著名タレントを中心にライブドアが経営権を取得した場合には降板するとしたことなどが懸念材料になったと見られる。ライブドアが苦しいとの見方が続けば、週明けも両社の株価は続落する可能性がある。
ライブドアは音なしの構えで目立った動きはない。思わぬフジテレビの”秘策”に驚愕した堀江氏以下スタッフは対応策に苦慮しているのかもしれない。堀江氏は「引き続き対話を続けていく」との姿勢を崩してはいないが、現状ではフジテレビが提携交渉に乗って来るとは思えない。とすれば訴訟しかない。しかしながら多くの司法専門家は「新株予約権」発行差止め仮処分の様なわけにはいかないとの見方を示している。堀江氏はどうするのだろうか?
2005.03.26
ライブドアから800億円の「MSCB」を引き受けたリーマン・ブラザーズが、550億円分を普通株式に転換し既に大半を売却していたことが判明した。この他に250億円分の「新株予約権」と普通株式を約824万株、加えて堀江氏からの借株が約5000万株残っているが、リーマン・ブラザーズは僅か2ヶ月余りで最終的に100億円!もの利益があると見られている。外資投資会社の見事な手腕と言うしかない。フジテレビとライブドアがドタバタ劇を繰り広げている混乱に乗じて、鳶(外資投資会社)が油揚げ(巨額の利益)を浚っている様にも思える。リーマン・ブラザーズからすればどちらが勝っても関係なく、要はライブドア株式を巧く売り抜けて利益を得ればよい。もしかしたらライブドアとフジテレビは”釈迦の手のヒラで暴れている孫悟空”かもしれない。
フジテレビは取引先に対してフジテレビ株式を追加保有するよう要請したと報じられている。また大和証券SMBCが保有しているフジテレビ発行の800億円の「新株予約権」の一部を引き受けることも選択肢として示したとも報じている。この「新株予約権」はフジテレビがニッポン放送株式へのTOB用の資金調達の為に2月初めに発行した。もし「新株予約権」が現在の価額で株式に転換されれば、フジテレビの発行済み株式の約10%に相当する。自社に協力的な安定株主の持ち株比率を高める狙いがある。ライブドアの買収攻勢に対する備えと言える。もともとフジテレビは流動的な株式比率が他社と比較して高く危険と指摘されていた。ようやく”重い腰”を上げたというところか・・・。
堀江氏とSBIの北尾氏が3月28日に会うことになるかもしれない。堀江氏からの要請とのことだが、突然参入して来た北尾氏の意図を探る狙いがあると思われる。北尾氏はTVの会見からすると、かなりの自信家と見受けられる。堀江氏に対し「訴えるのは自由だが、私に勝つのは不可能に近い。堀江流に言うと『想定済み』だ。おやりになるならやってください。でも私を完全に敵に回しますよ。僕は相当タフだ。」と絶対的自信を示している。また「大人の解決ができるなら協力する」と仲介役を買って出る姿勢も見せている。しかしながら堀江氏の手法については「他人の家に土足で入ったのだから、もう1度玄関から入り直さないといけない。」と一刀両断に切り捨てている。北尾氏は過去に数多くのM&Aを手掛けた国内屈指のプロ中のプロ、手強い大物の出現に堀江氏か苦戦を強いられるかもしれない。週明けの動きが注目される。
もう一人の気になる存在ソフトバンクグループの総帥孫正義氏は記者会見で、「我々は敵対的買収は一度もやっていない。望み、望まれてやらなければうまくいかない。」と堀江氏の強引な手法を痛烈に批判している。ここからも孫氏の”ライブドアの事業拡大路線の阻止”が窺える。一方ソフトバンク本体とフジテレビの業務提携については「互いにメリットがあり、具体的な機運が高まれば是々非々で考える。」としている。更に「フジテレビとの資本提携は考えていない。」とはしているが、今後の孫氏の動向には目が離せない。
2005.03.27
フジテレビは当面の危機回避策としてソフトバンクグループと手を結びライブドアに対抗している。”前門の狼、後門の虎”との例えがある。これでとりあえずフジテレビは”前門の狼”ライブドアには勝てるかもしれないが、もしかしたら”後門の虎”SBIに足元を掬われるかもしれない。とすれば現時点では後方に控えている”巨人”孫氏が本気で牙を剥き出せばどういうことになるだろうか?孫氏は「資本提携はない」とはしているが、状況が変わればどの様に変身するかは分からない。もしかしたら鳶(ソフトバンクグループ)が油揚げ(フジテレビ、あるいは+ニッポン放送+ライブドア)を浚う凄まじい結果があるかも・・・?
孫氏はかつてテレビ朝日にM&Aをかけて失敗した過去を持つ。当時と同じかどうかは別として、何らかの野望はまだ持っていると思われる。今回の騒動は突然降って湧いた”千載一遇”の好機と捉えているとの見方ができる。当面北尾氏が表舞台で仲介役の役割を果たして行くだろう。その仲介が不調に終わった場合、その先どうなるか予測がつかない。フジテレビは”両刃の剣”ソフトバンクグループを自陣営に招き入れた。これでもはや後戻りはできず、この先どうなろうとソフトバンクグループと共に行動するしか選択の道はなくなったと看做せる。
3月25日北尾氏はM&Aコンサルティングの村上代表と会談したことを明らかにした。村上氏の要請で会ったそうだが、一体何を話し合ったのだろうか?ますます北尾氏がKey Personとして大きくクローズアップされてきた。