2005.04.18
昨日のフジテレビ、ライブドアの和解情報を受けて、予想通りライブドの株価は上昇し終値は前日比21円高の350円となっている。ニッポン放送株価は70円安の5880円、フジテレビ放送株価は8000円安の22万2000円となっている。報道内容からするとそんなにライブドア有利とも思えないが、ライブドア一人勝ちの如き株価の動きは何故だろうか?いずれもダメージがありどこが勝ちとは言えないが・・・。
今日夕方5時半から共同記者会見が行なわれ、フジテレビ、ライブドアが資本・業務提携を基本合意と発表した。合意内容は既に伝えられている内容にほぼ近い。ライブドアはニッポン放送株式を全て手放し、フジテレビは第三者割当でライブドア株式を取得する。これでライブドアへは今回注ぎ込んだ以上の巨額の資金が転がり込む。一方フジテレビは初期の目的”ニッポン放送子会社化”を達成できる。フジテレビがライブドアに資本参加するが、堀江氏の狙いは逆にフジテレビに資本参加してその上で業務提携ではなかったのか?確かに形式的には両者の資本提携には違いないが、この方向の違いの持つ意味は大きいと思われる。ライブドアがフジテレビに資本参加していないので、フジテレビに対する影響力をどれほど持つことができるのか疑問がある。
業務提携についてはフジテレビ、ライブドア、ニッポン放送で「業務提携推進委員会」を設置し具体策を今後検討するとしている。フジテレビはライブドアに出資するからにはその見返りを得なければならない。でないと株主に説明がつかない。しかしながら過去の経緯からして、どこまで真剣にフジテレビがライブドアとの業務提携を考えているか疑問がある。何故なら今回の合意内容ではライブドアの顔を立てる為に”業務提携”を入れたと思われる。金銭面での決着だけでは堀江氏は単なるグリーンメーラーに終わってしまう。それでは堀江氏が合意を受け入れるはずがない。そこでフジテレビが申し訳け程度に”業務提携”を入れたとするのは穿った見方だろうか?記者会見で日枝氏は「日枝会長は「マスコミの公共性を保つのにリスクがなく、今後の業務提携でフジテレビが主導的立場を取れることで合意に達した」と説明しているのだが・・・?
2005.04.19
昨日は和解内容の実態がよく分からない状況で情報に踊らされ、ライブドアの株価が一人歩きして高値をつけた。和解内容の実態が明らかになり必ずしもライブドア有利とは言えないと見たのか、今日の株価は3営業日ぶりに反落し終値は8円安の342円で取引を終えた。強気の買い材料が見当たらず、更に前日までに和解を見越した買いが入っていたのが利益確定売りに回った為と見られる。当面5月23日実施のフジテレビ向けの第三者割当増資、業務提携交渉の行方を睨みながら、TOB割当価格329円を下支えとして一進一退を繰り返すのではないか?
ニッポン放送は上場廃止が決定的となり市場取引できる期間も限られている。5月下旬実施予定のニッポン放送のTOB価格6300円が株価の目安となっている。その流れを反映して今日の終値は前日比400円高の6280円で取引を終えた。恐らく今後も6300円前後で上場廃止まで推移するのではないか?またフジテレビはニッポン放送の完全子会社化が好材料となり4営業日ぶりに反発し、終値は前日比3000円高の22万5000円で取引を終えた。但しニッポン放送完全子会社化の為の巨額の出費が足枷となり、大きく株価が反発するのは考えにくいが・・・。
約1470億円もライブドアに支払うフジテレビが、ライブドアへ取締役を1人送り込むを検討していると報じられている。堀江氏に次ぐ第2位の大株主となり、ライブドアへの影響力を強めると見られる。またライブドアが再度フジテレビ買収を行なわない様に牽制する狙いもあると思われる。巨額の資金が再び今回の様な敵対的買収に使用される懸念も指摘されているので、その様な動きがあれば事前に封じ込むと言うことであろう。12.75%を握ったフジテレビは今後様々な形で、ライブドアの経営に口を出すことが予想される。尤も堀江氏にとっては”想定の範囲内”かもしれないが・・・?
ところでリーマン・ブラザーズ、村上ファンドはどれほどの利益を得ているのだろうか?他者に喧嘩させておいて横から美味しいところをさらっていくとはお見事としか言い様がない。さしずめお釈迦様の手のヒラで踊らされている孫悟空がフジテレビとライブドアと言ったところか・・・?まさか”闇の仕掛人”がリーマン・ブラザーズであり村上ファンドでは・・・?とすれば素晴らしい脚本を用意したことになるが・・・???
2005.04.20
昨日まで連日の様にTVのワイドショウで今回の騒動が取り上げられていたが、4月18日の和解合意を受けてピタッと終息した。TVははっきりしたものでNews valueが低下し視聴率が稼げないと判断すると”ハイ、サヨナラ”となる。ライブドア、フジテレビ、ニッポン放送が毎日TVに登場し、あたかもTV局が無償で各社の宣伝を長時間放映した様に思える。いろいろな意味で宣伝効果があったのではないか?いずれまた騒動かどうかは分からないが事態が動き出した段階で、成り行きによっては連日取り上げられることもあるだろう。それまでは暫時休憩・・・と言うところか。堀江氏は陰で何か”秘策”を考えているのだろうか?
フジテレビへのライブドア株式の第三者割当価格が329円に設定されているがこれは確定ではない。通常第三者割当増資で価格設定する場合には、先にデューディリジェンス(特別監査)を実施してその企業の経営実態を精査した上で決定する。ところが今回は合意を優先した為に特別監査は後回しになったとのこと。監査結果しだいでは設定価格が変更され、329円が保証されている訳けではない。更に状況次第では設定価格の変更のみならず、第三者割当増資そのものが中止になる可能性もある。必ずしも329円がライブドア株価の下支えになるとは限らない。
ライブドアの株価は今日も値を下げ、終値は前日比12円安の330円で取引を終えた。市場関係者によると「買収問題で騒がれるうちが華で、手掛かりが無くなった分投機対象としても急速に魅力が薄れた。(堀江氏が)新たなアクションでも起こさない限り、(株式の)希薄化を嫌気した売りに押される可能性もある。」とのこと。下支えと見られた329円が必ずしも安寧でなく、目新しい買い材料が出てこなければこの先株価がどう転ぶか分からない。
2005.04.21
イトーヨーカ堂は昨日持ち株会社「セブン&アイ・ホールディングス」を9月1日に設立すると発表した。イトーヨーカ堂、セブン・イレブン・ジャパン、デニーズジャパンの三社が新会社の完全子会社となる。当然この3社は上場廃止となるが、持ち株会社「セブン&アイ・ホールディングス」の9月1日の上場を目指している。イトーヨーカ堂は株時価総額で大幅に上回るセブン・イレブンの株式を50.6%所有している。これはニッポン放送とフジテレビの資本関係同様のねじれ現象であり、国内外の企業による敵対的買収のリスクを避ける対応策導入となる。今回の一連の騒動を教訓にしたものだが、今後更にこの様な動きが増えると思われる。
フジサンケイグループ主催の女子プロゴルフ「フジサンケイ・レディース」の取材をライブドアが申請したが、フジテレビにあっさりと拒否された。大会の運営マニュアルに「ネット上のメディアの取材は受けない」との規定が断ったとのこと。フジテレビとライブドアは先週資本・業務提携で基本合意したばかりで、両者が本当に友好的に合意したのであれば何らかの配慮するのではと思われるが・・・?この様なNewsが報じられると、基本合意は両社が”渋々妥協した産物”と考えざるを得ない。
ライブドアは昨日ニッポン放送に対して、6月の株主総会への「新任取締役候補の株主提案」を提出している。取締役候補は堀江氏など12名で、ニッポン放送取締役会の定足数(20名)の6割にあたる。但しライブドアはフジテレビから株式の譲渡金などの入金され次第、提案を取り下げるとしている。資本・業務和解で合意したのに何故か?基本合意とは言っても何時破局があってもおかしくない危うい”砂上の楼閣”にも見える。そこでライブドアとしては保険をかけたと思われる。それだけお互いにお互いを信用していないことを如実に示している。あれだけいがみあっていたのだから、そんな簡単にわだかまりが氷解するはずがない。
ニッポン放送はSBIなどに貸出しているフジテレビ株式(発行済み株式の22.5%)が返却された後に全て売却する方針を表明した。ニッポン放送はフジテレビの完全子会社が予定されている。商法の規定によると子会社が親会社の株式保有することを制限しているので、この規定に抵触するのを回避しなければならない。22.5%のフジテレビ株式をどこに売却するのか?敵対的買収攻勢に晒されない様に早急かつ慎重に検討する必要がある。
ライブドアの株価は3営業日続けて下落し、終値は前日比11円安の319円で取引を終えた。フジテレビの第三者割当増資の予定取得価格をあっさり下回り、フジテレビとライブドアの基本合意が市場では素直に信用されていないことを証明している。第三者割当増資の設定価格329円が絶対ではないどころか、場合によっては440億円の増資がなくなる可能性すらあるのだからとてつもなく危うい。市場は「ライブドアは今回の騒動で社会的信用を大きく失墜した」との評価を下していると看做せる。フジテレビの株価の連日の下落も同様で、フジテレビの”社会的信用の失墜”の評価を下していると看做せる。終値は前日比2000円安の21万9000円で取引を終えた。両社の株価はこの先どうなるんだろうか?
合意の詳細は こちら を参照されたい。
2005.04.22
特に買い材料が見当たらないにも関わらず、前場の寄り付きからライブドアの株価は反騰し一時13円高の332円まで上昇した。結局終値は前日比7円高の326円で取引を終えた。後場は326円を挟んで少々前後する程度でほとんど動きがない。誰が買いを入れているかは分からないが、某証券会社が必死に買支えているのだろうか?最低ラインの『329円』を何としても死守したいとも見えるが・・・。一方フジテレビの株価の終値は前日比5000円高の22万4000円で取引を終えた。北尾氏がフジテレビ株式を5月下旬を目処にニッポン放送に返却する方針を明らかにしたことが好材料になったのだろうか?いずれにせよ週明け両社の株価は様々な思惑が入り乱れてトリッキーな動きを見せるかもしれない。
2005.04.23
堀江氏はニッポン放送の「新株予約権」発行に異議を唱え訴訟を起こし見事に勝利した。あの時は誰がどう考えてもフジテレビの論理には無理があり許されざる行為で、堀江氏の勝利は順当な結果と言える。「新株予約権」発行には何ら正当な理由がない。フジテレビのあまりにも自己保身の、そして既存株主を無視した”奇策”は世間の批判を浴びた。
それでは振り返って堀江氏がやってきたことはどうか?リーマン・ブラザーズへの800億円もの「MSCB」の発行は本当に正当な理由があったのだろうか?自社の売上高をはるかに超える額の「MSCB」発行なんてどう考えてもまともではない。正常な経済活動とは言えないのではないか?”ニッポン放送の経営権奪取”の自己の目的を達成する為に、リーマン・ブラザーズに極端に有利な条件設定したとしか思えない。事実リーマン・ブラザーズは堀江氏からの借株を巧みに利用して巨額の利益を得ている。その一方でライブドア株式の希薄化、株価下落により既存株主に損失を与えているのではないか?それに無配を継続している。既存株主にとってどんな利益があるのだろうか?
更に今回の基本合意でライブドアはフジテレビを引受先とする440億円の第三者割当増資を実施する予定になっている。ライブドアは基本合意の中で「現在進行中の具体的プロジェクトを含む資金需要に対応することが可能となり、これらプロジェクトの迅速な遂行による業績成長・企業価値増大を通じて、フジテレビが保有するライブドア株式の価値も増大される」と記載している。しかしながらこれだけでは本当に440億円もの巨額の増資が必要なのか疑念がある。本当にこの増資に必然性があるのだろうか?投資対効果を出せなければ説明がつかない。フジテレビから金を引き出す為の口実ではないだろうか?ともかくこの第三者割当増資が実施されれば一層ライブドア株式の希薄化が進む。
前述のリーマン・ブラザーズへの「MSCB」発行もフジテレビへの第三者割当増資など一連の堀江氏の行動を見ると、本当に”株主の利益”を考えているのか疑念がある。フジテレビ同様既存株主を無視した行動をとっているようにしか見えない。堀江氏は「利益を新たな投資に回して更に利益を産み出して株価を上げて株主に還元する」としている。残念ながら現時点ではその様になっていない。世間の堀江氏への不信感が株価下落に繋がっていると看做せる。堀江氏は小手先だけのその場凌ぎの対応に終始するのではなく、将来に向けてのビジネスのVisionを明確に示し具体的施策を実行して不信感を払拭する必要がある。
2005.04.24
大阪証券取引所(大証)は6月の株主総会に提出する取締役選任議案から、投資顧問会社MACアセットマネジメント(村上ファンド)代表の村上氏を外す方針を固めた。大証の10%の株式を取得して筆頭株主に躍り出た村上氏は社外取締役就任に強い意欲を見せていた。一方大証の全役員が村上氏の社外取締役就任に反対したと言う。村上氏は”モノ言う株主”として各企業に対して様々な要求を突きつけている反面、ファンド会社として利益を出す職責を担っている。今回も結局はニッポン放送株式を高値で売却して巨額の利益をを上げている。何と言ってもファンドは”利益追求集団”であり、「敵対的ではなく友好的に経営に参加」と急に接近されても大証が懐疑的になるのは当然と思われる。村上氏は株主として経営者に対して”モノ言う”のは積極的に行なうべき・・・しかしながらファンド代表との立場で経営参画を目指すのは如何がなものか?
堀江氏は当然今後もM&Aを続けて行くが、今回の敵対的買収騒動を教訓にして各企業が身構えてくるのでやりにくい。今更堀江氏が「敵対的ではなく友好的に経営に参加したいのでM&Aに応じて欲しい」とのラブコールを送っても・・・相手がどう思うだろうか?白々しく感じるだけにすぎない。フジサンケイグループを相手にあれだけの騒動を起こしたのだから、素直に堀江氏の言を信じる企業は少ないだろう。とするとやはり”敵対的”とならざるを得ないのでは・・・?
堀江氏は巨額の軍資金を手にすることになるが、果たして巧く運用できるのだろうか?ライブドアは過去にM&Aを繰り返し大きくなってきている。この様な企業はとにかく走り続けて次々とより大きなM&Aを繰り返して行かないといずれ立ち行かなくなる。但し無限の成長は考えられない。今後の堀江氏の対応次第では、前途は必ずしも明るいとは言えない。