第14段 * 大相撲初場所を終えて (2004年1月25日) *
横綱朝青龍は初場所”強い、速い、うまい”の3拍子揃った圧倒的な強さで全勝優勝を果たした。直近の全勝優勝は1996年9月場所の貴乃花。久しく全勝優勝がなく寂しい想いがあったが、朝青龍の今回の全勝優勝は気分爽快。千秋楽の結びの一番大関栃東との対戦も23本の懸賞がかかったが、あっという間に一方的にケリがついた。今日の一番を見てもその強さはダントツ、他の力士を大きく引き離している。15日間全て完勝、全く危なげなかった。まさに『朝青龍時代』の到来、『黄金時代』の到来を予感させる。このまま朝青龍の独走を許してしまうのだろうか?
かつてライバルと言われた若の里、琴光喜の2人に対して、朝青龍は桁違いの強さを見せて圧勝。琴光喜には豪快な”つり落とし”、若の里には一方的な”押し出し”。つい最近まで競り合っていたのにこの差はどうしたことか?何が違うのだろうか?素質が違うと言えばそれまで。琴光喜、若の里共に実力者で力量は備えていると思うが、「勝負への執念」が今一つ不足しているのでは・・・。琴光喜は13勝2敗で敢闘賞受賞と復活のきざしがあるが、若の里は初日に栃東を下したものの9勝6敗と期待外れに終わった。二人共決してもう若手ではない。おそらく来場所の番付では二人共に関脇になるだろう。「打倒朝青龍」の一念に燃えていっそうの奮起を期待したい。先ほど鳴戸部屋のサイトを見てびっくり、若の里が京都の方と婚約発表したとのこと。またとない発奮材料、何が何でも大関を目指して欲しい。
4人いる大関は情けないの一言につきる。武双山は怪我で早々にリタイア、また栃東は早々と優勝争いから脱落し横綱昇進の夢は露と消えた。他の大関も論外、誰一人として優勝争いに残れないとは・・・!大関がこんな有様ではなかなか次の横綱が見えてこない。武双山と魁皇は既に30歳を越え、栃東と千代大海は今年中に28歳になる。琴桜や隆の里の様に遅咲きの横綱もいるが、4人共に年齢面から見ても横綱昇進が厳しくなっている。現在の大関から横綱が出る可能性はどの位あるのだろうか?
一方新しい力も出現しつつある。幕内では垣添、黒海、十両では露鵬、白鵬、幕下では萩原、琴欧州など・・・。よく見ると将来有望な力士には外国出身者が多い。黒海:グルジア、露鵬:ロシア、白鵬:モンゴル、琴欧州:ブルガリア。外国人力士をとやかく言う人が一部に見受けられるが、相撲は実力の世界、悔しかったら日本人力士がもっと奮起すれば良い。どこの出身なんかは関係ない。お互い切磋琢磨して実力をつけていけば大相撲の世界が盛り上がる。そうすれば現在低迷している大相撲の人気回復に繋がっていく。
垣添は幕内東5枚目で11勝し技能賞を獲得、三役も見えてきている。177cm、137Kgと小柄だが、立ち合いの速さと気の強そうな面構えに魅力がある。ただ垣添にはまだ未知数な部分が多くあり、上位対戦が続く春場所が試金石となる。黒海は幕内西10枚目で8勝7敗に終わったが、千秋楽の霜鳥との一番の様に惜しい相撲や出島、雅山などの元大関との対戦があり良く健闘したと思う。キャリアがまだ浅くまだ甘い所がある。パワーは充分、相撲を更に覚えてくればもっと強くなる可能性を秘めている。露鵬は新十両のこの場所十両西9枚目、11勝4敗で和歌乃山、千代天山との優勝決定巴戦に臨んだが惜しくもあと一歩でも優勝を逃した。この力士も黒海同様キャリアが浅くまだまだ成長の余地がある。引き技が時々見られるのが気になるが近い内に修正されるだろう。白鵬も新十両のこの場所十両東12枚目で9勝6敗と勝ち越した。モンゴル出身力士にある強靭な足腰の強さは魅力、それに何と言っても18歳の若さが魅力。189cm、134Kgと体格も良く、今後更なる成長が見込める。
幕下では鳴戸部屋の期待の新鋭17歳萩原が7戦全勝で優勝した。幕下東18枚目なので来場所の十両昇進はないが、これで一気に幕下上位の十両を狙える地位にまであがる。初の幕下上位でどのような相撲をとるか今からワクワクする。幕下上位の壁を一気に突き抜けることができるだろうか?今までに17歳までに関取に昇進したのは、大横綱の貴乃花と北の湖の二人しかいない。周りの期待はとてつもなく大きい。TVで解説者がことごとく絶賛していた。鳴戸部屋では関取の若の里、隆乃若と申し合いをしているそうだ。強くなる為の環境は整っている。部屋頭の若の里は「十両の力は充分にある」と言っている。萩原は体格がよく、かつ正攻法の相撲で素晴らしい。優勝インタビューを聞いていても、いかにも鳴戸部屋の力士と言った感じ、真面目で素直な雰囲気がよく出ている。萩原は相撲界にとって明るい材料の一つと言える。稽古に精進して一刻も早く関取へ昇進、更にもっと上位を目指して欲しい。
3月14日から大阪場所が始まる。果たして朝青龍が独走し順当な結果になるかどうか。”荒れる大阪場所”と言われるが、大関陣、琴光喜、若の里、垣添などが「打倒朝青龍」を目指して頑張って欲しい。朝青龍のライバルと言われる逸材の出現も待たれる。強い横綱の存在はライバルの出現でいっそう輝いてくる。貴乃花親方が近々勝負審判として登場することになっている。相撲人気の回復の一助にはなると思うが、やはり何と言っても土俵上の活性化が急務で最大のポイントである。
(2004.03.29追記)
3月場所は千秋楽の結びの一番迄優勝決定がもつれ込んだ。14日目を終えて朝青龍が全勝、千代大海、朝赤龍が1敗で続く展開となった。朝青龍の独走を許さず大いに盛り上がった。千秋楽では朝赤龍が若の里に敗れ脱落、結びの一番で朝青龍が千代大海を下し2場所連続の全勝優勝を飾った。最終結果を見れば順当と言えるが、千秋楽最後の一番に優勝を賭ける展開は理想に近い。欲を言えば朝青龍と千代大海の全勝対決であれば最高であったのだが・・・。朝赤龍の13連勝は立派、殊勲賞、技能賞のダブル受賞は順当であろう。中でも大関魁皇を鋭い当たりで勝った一番が印象深い。相当力をつけており、22歳の若さが魅力である。来場所は上位に戻るが活躍が期待できる。
場所前好調と言われた両関脇は不甲斐なく全くの期待外れに終わった。若の里は千秋楽にようやく勝ち越し、琴光喜に至っては7勝8敗と負け越してしまった。このままでは次を担う世代に追い越されるのも時間の問題か・・・?いっそうの奮起を期待したい。
若手の台頭が著しく土俵が活づいてきている。十両では白鵬が12勝3敗で優勝、幕下では琴欧州が優勝、萩原が5勝2敗と大活躍した。琴欧州、萩原は来場所新十両となる。特に萩原は17歳9ヶ月の十両昇進、貴乃花の17歳2ヶ月に続く史上2位の早さである。2人共に幕下上位の壁なんて何のその、一気に突き抜けた。”第2の曙、貴乃花”との声がかかるほどの逸材ともっぱらの評判・・・既にお互いにはっきりとライバルを意識している。切磋琢磨して実力を磨き、少しでも早く幕内に昇進し場所を盛り上げて欲しい。”相撲人気回復の切り札”にも成り得る存在である。