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第2段 * 水戸黄門 ーこれぞ時代劇ー *

 
今日12月15日TVの水戸黄門が1000回を迎えた。放映開始から34年、とてつもない長寿番組、まさに怪物と言えよう。娯楽時代劇の王様と言っても過言ではない。その人気の秘密は何だろうか。

 私は時代劇が好きだが、とりわけ水戸黄門は気楽に楽しめる。何せ
ストーリー展開がシンプル、おおよそ先が読める。黄門様が行く先々必ず悪が蔓延っている。一歩足を踏み入れるとそこには必ず悪の手先、ごろつきがあらわれて町や村の人達に乱暴狼藉を働く。そこに黄門様ご一行が通りかかり、助さん、格さんが割って入って人々を助ける。理由を聞き悪をこらしめるために黄門様が一肌脱ぐ。悪は代官、奉行、家老(それも何故か次席家老が多い)などに、悪徳商人がくっつき賂を渡して利権を欲しいままにしようとする。そこで必ず悪は証拠をきちんと残す。賂の約定、利権を与えるとの念書など。それを由美かおる扮する『かげろうお吟』(32部では『疾風のお絹』)が色気たっぷりに悪を誘惑して証拠を奪う。由美かおるの歳を感じさせない入浴シーンも必見(笑)。最後には悪の巣に乗り込み数々の悪行を糾弾する。悪の抵抗に対してめちゃめちゃ強い助さん、格さんが大立ち回りを演じる。途中からお吟(32部ではお絹)、野村将希扮する『柘植の飛猿』(32部では照英扮する『風の鬼若』)、27部までは中谷一朗扮する『風車の弥七』)が助っ人にあらわれて大活劇。頃もほど良いタイミングに、黄門様が「もういいでしょう!」と一喝、すると助さんが「静まれ!静まれ!」、格さんが「この印籠が目に入らぬか!」、次いで助さんが「この方をどなたと心得る。恐れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!」。一同平伏して地べたにひれ伏す。黄門様の追及に対して悪はシラを切るが、証拠の品を突きつけられて恐れ入る。

 とまあだいたいこんな感じで毎回話が進む。シンプルだからと言っておもしろくないということではない。サスペンスではないのだから、別に見ている者に深く考えさせる必要はない。
水戸黄門が高い視聴率をいつも保っているのは、肩が凝らずにお手軽に楽しめる、登場人物がめちゃくちゃ強い、そして勧善懲悪で必ず悪が滅び善が報われる、このようなことが考えられる。諸国を巡り各地の特産物、名産品、名所などを紹介してくれるので、見ている方でも新たな発見をすることがある。北は津軽藩、南は薩摩藩まで全国各地を訪れている。その場でのあっという間の即決、黄門様の裁定で有罪が確定してしまう。胸がスカッとする、そういう想いで見ている人も多いだろう。オウム事件の松本被告の裁判に見られるように明らかに有罪とわかっている様な場合でも、長々と審理していてまだ第一審の判決すら出ていない。 いらいらする人も多いのではないだろうか。即戦即決、竹をスパッと割ったような胸のすく決着、ここにも大いなる魅力を感じる

 水戸光圀公が生きた時代は江戸幕府の安定期で、戦国時代の動乱から徐々に遠ざかり人心も安定していたと考えられる。一方政治をつかさどる幕府や諸藩の官僚の気の緩みも見られ腐敗が横行していた。いつの日から今に伝えられるような黄門様の諸国漫遊の話ができあがったのか私にはわからない。一般庶民にはどうにもならない別世界の出来事に対し、権力側に水戸光圀公という一服の清涼剤を見出しその姿を借りて悪者退治の幻影を見たのだろう。一般庶民のやりきれない想いを感じる。

 実際に水戸光圀公が諸国を漫遊したとは考えられない。行く先々であのように派手に活躍したら、いくら情報伝達の遅い江戸時代であってもその話があっと間に各地に広まってしまう。それに当時幕府や諸藩の間者が情報収集に盛んに活動していたはず。あれだけ目立てばお忍びで誰にもひっそりと気付かれず・・・というわけにはいかない。なんてこんな夢のないことを言っては見も蓋もない。現実はどうでも良い、もともと虚構の中に清涼剤を求めているのだから・・・。

 現在の3部から17部まで助さんを演じた
里見浩太郎が5代目の黄門様。今までに東野英治郎、西村晃、佐野浅夫、石坂浩二が演じている。それぞれに個性があり見てておもしろい。以前京都の大覚寺の大沢の池で水戸黄門の撮影現場に出会ったことがある。その時の黄門様は西村晃、しばらく撮影風景を眺めていた。次の現場への移動直前にお願いして黄門様の写真撮影させてもらった。その時少々お話をしたが、丁寧に応対してくれたのでとても嬉しかったことを記憶している。その場にはあおい輝彦、高橋元太郎などがいて、思わずミーハーになってしまった。

 いろいろな人が助さん、格さんを演じている。その中でも
あおい輝彦の『助さん』伊吹吾郎の『格さん』、この二人の印象が特に残っている。どちらの俳優も風格があり堂々として黄門様のボディガードにピッタリ。女性にモテモテ、どこへ行っても引く手あまたの助さん、あおい輝彦の実像?にオーバーラップ、また硬派の格さん、伊吹吾郎のイメージ?にピッタリに感じる。でも伊吹吾郎は話を聞くとおもしろい人で、もしかして実像は軟派かも・・・。

 最も新しい32部では
助さんを原田龍二、格さんを合田雅吏が演じている。以前の助さん、格さんに比べてまだ少々ひ弱な感じがする。かと言って別に彼らを否定してはいるわけではない。いつまでもそんなことを言ってはいけない。彼らもこれから更にキャリアを積んでいくといつの間にか風格がでてくるものだ。事実最初の堅さがとれて見栄えするようになってきている。あの若々しさ、初々しさも彼らの魅力となっている。あんまり昔は、昔は・・・なんてばかり言っていると嫌われる(笑)。

 風車の弥七が27部まで、
高橋元太郎の『うっかり八兵衛』が28部まで、この二人がスクリーンから消えて久しい。赤い風車がどこからともなく飛んできてピンチを救う。中谷一朗の切れ味鋭い動きも魅力的だった。先日特番で本人が出て話をしていたが、さすがに寄る年波は隠せなかった。食いしん坊のうっかり八兵衛、高橋元太郎のユーモラスな演技もまわりを引き立てていた。その後のシリーズではこのような存在がいなくて少々寂しい。復活の日を望む。そう言えば大沢の池で見た時のこと、あおい輝彦はTaxiで、高橋元太郎はマイクロバスで移動した。ひと昔前同じアイドルとして活躍していた二人だが差がつけられていた。芸能界ってはっきりしているなあとその時感じた。

 16部から
由美かおるが登場している。この人の入浴シーンはこの番組の定番と言える。それにしても年齢を感じさせない肌は美しい。悪との戦闘シーンでは素早く忍者服に着替えて激しく動きまわる。立ち回りも激しいが足の蹴りも見事、実によく足が上がる。常時体を鍛えているのだろう。

 17部から28部まで
野村将希が柘植の飛猿として登場している。いかにも体育会系の素晴らしい肉体、それこそ年齢を感じさせない鋭い動きをしている。それもそのはず、某TV局のマッスルランキング(筋肉番付)で大活躍している。今日の3時間スペシャルにも登場した。とても51歳とは思えなかった。

 現在のメンバーでの新シリーズはおそらく来年の4月から再開されると思う。更にパワーアップしてスクリーンに戻ってくることを期待している。

2004.04.02 追記

 
『風車の弥七』役の中谷一郎が、4月1日咽頭癌のため73歳で亡くなった。体調不良を理由に第28話で降板しあの華麗なる身のこなしが見られず寂しく思っていた。夕方の再放送を時々見るが、『風車の弥七』が出てくるとドラマがぐっと締まる。黄門様危機一髪の場面で、何処からともなく”赤い風車”が飛んできて颯爽と『風車の弥七』が現われる。何度見ても格好良い最近の”水戸黄門”を見ていて何か物足りなさを感じるのは私だけだろうか?

 1000回記念の時に『風車の弥七』は以前の影像を使用していたので何かおかしいとは思っていた。 まさかこんなに体調が悪かったとは・・・それでは出演できるはずがない。ご冥福を祈る。
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