第3段 * ハルウララ *
2003年12月14日現在100連敗中の競走馬「ハルウララ」が話題になっている。出走100戦目を記念して「ネバーギブアップ・ハルウララ百戦記念特別」がありハルウララも出走、むろん単勝1.8倍、ダントツの一番人気。好位につけて3コーナーすぎの勝負どころで追い出したが、最後の直線で伸び足がなく失速し10頭中9着と馬群に沈んだ。日曜日のこの日高知競馬場には5074人の入場者、普通は1700人位とのこと、何と3倍もの客を集めた。NHKや民放TV局など取材は30社を超えたそうだ。当日NHKのNewsで「ハルウララ」のレースをしっかりと見た。子供が「ハルウララ、がんばれ!」と声援をおくっていた。レース後には橋本大二郎高知県知事から「ハルウララ」に感謝状とニンジンの首飾りが贈呈された。年明けの1月2日に出走予定、またNewsでとりあげられることだろう。(1月2日は入場者数8000人を超え超満員。)経営難で存続が危ぶまれている高知競馬にとってはまさにファン獲得の救世主、スターの存在。馬券の売り上げも増えたとのこと。「ハルウララ」になんとか1勝させたいということで、JRAの人気騎手の武豊、福永祐一などへの騎乗依頼しているそうだ。果たしてどうなるだろうか?(3月22日に武豊が騎乗することが決まった。当日交流重賞「黒船賞」でノボトゥルーに騎乗する。他のレースでハルウララに乗る予定で1番人気は必至。平日だがすごい人が集まることだろう。結果が楽しみ。)
競馬の世界では当たり前のことだがハイセイコー、トウショウボーイ、テンポイント、シボリルドルフなどの実績のある馬が人気になるのが常、しかしこの「ハルウララ」の場合は全く逆、あまりにも弱いが故に脚光を浴びている。今年7月23日にたまたま某TV局のある番組で、キャスターの小倉智昭氏が取り上げたのがきっかけ。それからマスコミの注目を集め、負け続けるたびに人気が上昇、何とも不思議な現象だ。
負けても負けても走り続ける姿に皆の共感をよんだということ。1着になったことがないので1着を当てる単勝馬券、これは絶対に当たらない、つまりこの馬券は”交通安全”のお守りに、また成績不振なのにクビにならない、世相を反映して”リストラ防止”のお守りとして人気があるそうだ。走るのが宿命のサラブレッドではあるが、単にギャンブルの対象としてだけではなくこのような見方があると思うとホッとする。馬券の世界、ギャンブルの世界から遠ざかり20年位すぎた。今でも競馬中継はよく見るが、ギャンブルの世界に戻ろうとは全く思わない。馬の走る姿は美しい。今では純粋にサラブレッドが走る姿に魅せられている。
「ハルウララ」は1996年2月27日生まれ、父ニッポーテイオー、母ヒロインの9歳牝馬(2005年1月現在)で、113戦して未勝利、2着5回、3着7回、今までの獲得賞金112万9千円(2004.08.03現在)。競走馬を厩舎預けると、預託料として1ヶ月地方競馬で20〜40万、中央競馬では60万以上かかる。競走馬は大変な金喰い虫なので、良い成績を残してもらわないと馬主は大赤字となってしまう。従ってたいして走らない競走馬には見切りをつけて処分することになる。この「ハルウララ」の馬主はよくここまで我慢していると思う。これだけ有名になると今更処分なんてできるわけがないが・・・。
一部報道では来年3月に「ハルウララ」引退とあるが時期は定かではないらしい。何と言っても高知競馬のスター、ドル箱だけに競馬場側としてはまだしばらく現役でいて欲しいのが本音だろう。「ハルウララ」グッズの売れ行きも相当なもの。引退後の引き取り先はもう既に決まっている。成績不振の競走馬は見切りをつけられると処分される運命にある。そのような馬たちを少しでも救おうと設立された「おうちへ帰ろうCLUB」が「ハルウララ」を引き取ることになっている。このクラブは会員(約500人)の出資で1頭でも多くの引退馬に新天地を与えるべく活動している。馬を預けるだけでなく、受け入れ先へのツアーも行っているとのこと。「ハルウララ」で5頭目、「ハルウララ」によりこのような活動があることを初めて知った。毎年多くの競走馬がデビューし、多くの馬がターフを去っていく。競走馬の行く末は以前から気になるところ。種馬、母馬になれるのはごく一部、乗馬クラブに行くのははるかに良い方、多くは行方知れずになってしまう。どこかでいつの間にか消されてしまう、そのような悲惨な運命を多くの馬がたどる。そのような馬が1頭でも多く救われるよう、この活動に期待したい。
Internetで検索していたら『ハルウララ応援ツアー』を見つけた。羽田空港から高知往復、2日間高知競馬場観戦で35000円。最小催行人数が1名なので一人でも希望者がいれば実施される。東京から高知まで「ハルウララ」を見に行く人ががどの位いるか興味がある。30社を超えるマスコミの取材、それにこのようなツアー、そんなことからも一時的にせよ「ハルウララ」は高知県振興のために大いに貢献していると言える。高知県知事がわざわざ表彰したのもうなづける。(2004年1月14日のNHKのNewsで、「ハルウララ」を高知市観光功労者(馬?)として認定と報じていた。これだけ貢献しているのでとても良いこと、素直に嬉しい。)
今後「ハルウララ」がいつまで走り続けるのかはわからない。せっかくこれだけ有名になったからにはもうしばらく走って欲しい、そしてできれば「ハルウララ」に1度で良いから先頭でゴール、勝利の美酒を味わせたい。これからも暖かく見守っていこう。
(2004.03.22追記)
武豊騎手は交流重賞「黒船賞」にノボトゥルーに騎乗する為に高知へ来る。また最終レースに「ハルウララ」への騎乗依頼があり、これが更に人気を呼んでいる。私は98戦目以降の全レースを高知競馬の動画で見ている。「ハルウララ」の走りっぷりを今まで8戦見たが、正直言って最初にレースを見た時から”これは誰が乗っても勝つのは相当難しい”との感想を持っている。一般的に競馬の世界では”馬7、人3”と言われる。さすがの天才武豊騎手が乗っても「ハルウララ」の勝利は難しいと思っていた。
当日入場者数13,000人の超満員札止め、前夜からの徹夜組もいる。天候は雨で馬場状態は不良、ダートコースには水が浮いている。「黒船賞」でノボトゥルーは2着となり、いよいよ最終レースを迎えると観衆の熱狂は頂点に達した。「ハルウララ」はスタートで後手を踏み後方から進む。武豊騎手が懸命に追うも全く伸びず、結局終始後方のまま良いところなしで11頭立ての10着に終わった。これで106連敗と連敗記録を更新中。
いささか過熱と思える位の「ハルウララ」大Fever、全国の新聞、TVでも取り上げられ人気上昇中である。更にCD、本、記念切手、記念入場券、グッズなどの発売など次々といろいろある。ついにはCM、映画、漫画まで・・・。
だがちょっと待てよ、これで良いのだろうか?高知競馬の振興の為にはある程度のプロパガンダになるかもしれない。現在の「ハルウララ」ブームに水を差すつもりは毛頭ないが、ここまで商業主義が蔓延ってくると少々疑問を感じる。今はブームの真っ最中、しかしながらいつまでも長続きするものではない。かつてハイセイコーは競馬に関心のない人にまで幅広く知れ渡り国民的な人気を集めた。競馬場に足を運んだことがない人まで競馬場へ行き馬券を買った。しかしながらハイセイコー引退した後は洪水の水が引くが如く競馬人気は去った。今回の様な一気の盛り上がりは一過性に終わってしまうことが危惧される。「ハルウララ」引退後の高知競馬の反動が怖い。現在の「ハルウララ」ブームに踊らされ高知競馬の関係者が恒久策の検討を忘れている様なことはないとは思うのだが・・・。競馬の基本はやはり”強い馬”と言うことを忘れてはいけない。高知競馬に限らず全ての地方競馬に通じる問題と言える。