2006.1.23
ライブドアが企業買収交渉を進める際に自社の新株式を買取る投資事業組合を実質支配していたが、交渉相手には「事業組合は自社とは無関係」として株式交換による買収を持ちかけている。どうやらこの悪質な手口は疑惑の渦中の宮内氏が考え出し、かつ主導的な役割を果たしていたと見られる。果たして宮内氏は違法性を認識していたのだろうか?
宮内氏は「オン・ザ・エッヂ(ライブドアの前身)」で金融仲介サービス会社「ウェッブキャッシング・ドットコム」を買収を直接担当している。2003年12月25日「ウェッブ社を株式交換で完全子会社化、及び自社株式約48万株とウェッブキャッシング・ドットコム株式6000株を交換」と発表した。当初両社は現金取引で合意していたが、契約直前に宮内氏から『株式交換で発行された自社新株式を「M&Aチャレンジャー1号投資事業組合」が現金で買取る』との提案があった。この際宮内氏は自社が投資組合を実質支配しているのにも関わらず「事業組合と自社は無関係」と説明したとされる。結局同年12月17日宮内氏の意向に沿った契約が締結され、「M&Aチャレンジャー1号投資事業組合」は「ウェッブキャッシング・ドットコム」の親会社から8億5000万円でオン・ザ・エッヂ株式を購入している。その後株価が上昇した頃合いを見計らって多額の売却益を得てオン・ザ・エッヂに還流させている。
またライブドア・マーケティングがマネーライフを買収すると公表し新株式2億8000万円分とマネーライフ株式を等価交換している。ところがこれ以前にマネーライフはライブドアが支配する「VLMA2号投資組合」に買収されている。マネーライフは約3000万円の債務超過状態だったが、「VLMA2号投資事業組合」は4200万円で現金買収して見掛け上債務超過を解消した。4ヶ月後にライブドア・マーケティングは買収の虚偽公表を行ない、新株式1600株を発行してマネーライフ株式と交換した。この時点でマネーライフ株式はほぼ無価値に等しく、どう見ても(等価交換は)異常な取引にしか思えない。別にマネーライフでなくてもどこでも良かった訳で、「事業内容は考慮せず、すぐに買収できそうな赤字企業を選んだ」とのライブドア関係者の証言がある。新株式はその後の1:100分割により高騰し、「VLMA2号投資組合」は海外ファンドに約8億円で売却している。更に海外の銀行や投資ファンドなど複雑な経路を経て、約6億6000万円がライブドアに還流したことが分かっている。
いずれの場合も投資事業組合を事実上ダミー会社として(悪質に)活用して利益を貪っていたことがよく分かる。随分と手の込んだ手法だが、宮内氏が立案し堀江氏に指示の下で実行されている。『時価総額世界一』を目指しあまりにも急速な拡大路線を歩んだ為、堀江氏、及び宮内氏を中心とする幹部が頭を捻って強引な手法を考え出したと見られる。ライブドアには実業としての実態がほとんどなく、株式分割、M&Aなどを組み合わせて株価を吊り上げて時価総額をバブルの様に膨らませる方法しかなかったと思われる。結局中身のない見せ掛けだけの成長に過ぎなかったと言わざるを得ない。
ライブドア騒動に目を奪われている間にも他にも興味ある動きが出ている。まずは資金繰り悪化で無茶苦茶なMSCBを発行するアドテックスの株価は6営業日連続のストップ高で盛り返していたが、ここ4営業日の下落で株価はまたもや1万円割れ目前(終値:1万800円)に迫っている。転換価額6730円で74億5000万円のMSCB発行とあっては猛烈な希薄化は免れず、そもそも株価が上昇するのは可笑しい。倒産回避と浮かれていたところにモロに”ライブドア・ショック”が冷や水を浴びせかけられた格好になっている。このまま下落が続き6730円を下回る可能性もあるが、果たして引受け先はどうするのだろうか?転換価額は下方にのみ修正されるので引受け先には損は無いが、それでもあまり株価が下落するとRiskが大きく旨味が少ない。まずは1月27日に14億5000万円の払込みが予定されているが、それまでに株価はどうなっているのだろうか?状況によっては払込みが中止されることも考えられ予断を許さない。
ライブドア証券に40億円のMSCB、及び20万株の新株予約権を発行しているドリーム・テクノロジーの株価も”ライブドア・ショック”の影響をまともに受けて下落を続けている。今日の終値はストップ安(2000円安)の1万5810円で取引を終えている。ところで村上ファンドに97億円のCBを割り当てているが、行使価格は1万5930円と今日の終値を遂に下回った。この先株価がどの様に推移するのか予測し難いが、もし更に下落が続いたら村上氏はどうするのだろうか?これもまた旨味がなくなればCBを株式転換せずに繰上償還請求もあり得る。ライブドア証券の40億円もどうなるか分からない。もし資金引き上げとなれば平成電電の再生スポンサーを全う出来るかどうか疑わしい。それでなくてもライブドアが絡んでいるだけでイメージが悪いが・・・。こちらもまた予断を許さない状況にある。
ライブドアの株価はいったいどうなるのだろうか?今日もまたストップ安(80円安)となり、終値は256円と株式分割後の最安値まで落ち込んだ。出来高は比例配分の僅か14万8308株に過ぎず、相変らず売り注文残は約2億5000万株もある。これではまたライブドア・マーケティングの株価も5営業日連続の下げが続いている。出来高が僅か135株ではライブドア株式同様売るに売れない悲惨な状況にある。こんな具合では両社共に全く底が見えず、いったいどこで値がつくのか予測がつかない。
東京地検特捜部は16時過ぎに堀江氏に対する任意の事情聴取を開始した。遂に今回の疑惑の本丸へ手がついた。宮内氏は堀江氏の関与を否定しているが、かばったところでCEO(最高経営責任者)が何も知らなかったで通用するはずがない。20時少し前に堀江氏、宮内氏、岡本氏、中村氏の4名が証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)容疑で逮捕された。この逮捕を受けて東証はライブドア、ライブドア・マーケティングを明日から監理ポストに割り当てる。さて明日市場がどの様な反応を示すのか注目される。
2006.1.24
『金融庁が投資事業組合について新たな規制を導入する方針』と伝えられている。ライブドアは投資事業組合を資金還流の隠れ蓑に悪用した。ここでも堀江氏は本来の目的から逸脱する脱法(違法)行為を平気で行なっている。宮内氏などの幹部が法の抜け穴を探し出し堀江氏にアイデアを提供して”悪の限りを尽した”とも言える。これだけ投資事業組合が悪用されたのでは、流石に金融庁としても放置出来ない。投資事業組合について『運営者の氏名、所在地など基本事項の届出義務』などを盛り込んだ「金融商品取引法(投資サービス法)案」を今通常国会に提出を予定している。ところで巷には投資事業組合が多く存在するが、それらには問題はないのだろうか?どうしても疑惑の目を向けてしまうが・・・。
堀江氏は他人の持ち物を横から手を出し金の力で我が物にしていたのが、一転して他人からの買収攻勢に晒される可能性が出て来ている。怖いもの知らずでそれこそ”我が意に適わぬものなし”の堀江氏だが、”身から出た錆”とは言えここに来ての大きな躓きにより多くのものを失う可能性が高い。
ライブドアはニッポン放送乗っ取り騒動の和解により1470億円の資金を得たことから連結ベースで948億円(2005年9月末時点)の現預金を保有している。一方では有利子負債は約86億円に過ぎない。財務状況だけ見れば極めて健全で魅力的な企業・・・。ライブドア本体、ライブドア・マーケティングは損害賠償請求、株主代表訴訟などのRiskが予想され、好き好んで”火中の栗”を拾う奇特なところが出て来るかどうかは分からない。一方事業基盤が硬く競争力のあるセシール、ライブドアオートなどを買収のTargetにするところが出て来ても可笑しくない。今のところライブドアが財務状況からすれば直ちに苦しくなることはないが、信用度がゼロに等しいライブドアはいずれ事業展開が儘ならず立ち行かなくなることもある。実際フジテレビ、西京銀行などから業務提携解消の動きが出ている。そうなれば保有資産の切り売りをせざるを得ない状況に追い込まれることになるが・・・?
堀江氏、宮内氏などの逮捕を受けライブアは早急に経営体制を立て直す必要に迫られている。今日ライブドアから新体制が発表された。今日付けで堀江氏の社長退任、宮内氏の取締役辞任となる。まさか創業者で筆頭株主の堀江氏を追放する訳には行かないが、同じ逮捕組の岡本氏が取締役留任とは奇異な感じがする。代表取締役には熊谷氏が就任し、堀江氏は代表権のない取締役に留まる。それで熊谷氏が社長かと言うとそうではなく、完全子会社『弥生』社長の平松氏が執行役員社長に就任する。社長と言うと代表取締役社長を連想するが、今回は社長が取締役には就かない変則的な形をとる。更に業務の執行と監督を明確に区分するため経営委員会を新設し、委員長には平松氏が就き各事業部の担当者と共に業務を執行する。
恐らく苦肉の人事と思われる。本音は熊谷氏を社長にしたいところだが、旧体制で堀江氏の側近としてニッポン放送乗っ取り騒動などで表舞台で派手に動いている。(今のところ逮捕されていないが)もしかしたら今後の捜査で網にかかることも考えられる。加えて現段階でライブドアの中枢に長くいる人物が社長に就任したのでは如何にもダーティなイメージが付き纏う。そこでライブドア色が薄く60歳と年長の平松氏に白羽の矢を立てた。ところでどの程度経営委員会に権限が与えられるのか、また取締役会と経営委員会の関係がどうなっているのか分からない。平松氏が社長に就任したところで取締役会が実効支配したのでは意味がない。また筆頭株主で取締役の堀江氏の影響力が薄められるとは考え難い。新体制がどの様に機能するのかWatchして行く必要がある。
グループ経営の中枢にあるNo.1、No.2が辞任する事態になり、新体制で経営に関する重要な意思決定などが出来るかどうか疑問がある。堀江氏が長期間拘束されることことになれば、グループ運営が麻痺状態になることも考えられる。危機的状況を切り抜ける為に暫定的な経営体制を決めた。しかしながら逮捕後に残された人は”小者”ばかりで、今までグループを牛耳っていたTOPの代わりを務められるとは思えない。何よりもライブドアの信用失墜が手痛い。”針のむしろ”に座っている如き状況下では誰がやろうが上手く行くはずがない。
東証はライブドア株式の大量発注により市場が混乱する恐れがあるとして、明日からライブドア株式の取引時間短縮を決めた。13時30分から15時の1時間30分のみに限定とはまさに異例の措置と言える。ライブドアの株価が今日現在176円まで下げ、大量の売り注文を残しているものの出来高は107万2561株と増加している。今週中に寄り付く可能性もあり、そうなった場合あっと言う間に東証のシステム処理能力を超える。異常事態への事前防衛策とも言えるが自力で何も出来ないのでは、いざ寄り付いた時にこの程度の方策で大丈夫なのだろうか?本質的な解決策ではなく何とも心許ない。
2006.1.25
昨日フジテレビは『堀江氏が社長を退任し代表権を失った為、保有するライブドア株式の譲渡制限が失効』と発表した。フジテレビは『契約上堀江氏の代表権及び社長の地位異動は失効の条件』としている。これでフジテレビは業務提携、資本提携共にライブドアとの関係を一切断ち切ることが可能になる。所謂”厄介払い”で目の上のたんこぶが除去出来る状況となり、フジテレビはすっきりした気分と思われる。何せ強力な切り札を手にしたフジテレビには優位な立場で「ライブドアに要求を突きつける」環境が整ったと言える。
ライブドアとの和解によりライブドア株式を1億3373万株取得しているが、これでフジテレビは全て売却出来ることになる。しかしながら現状では到底市場で捌けるはずがない。いったいどうするのだろうか?日枝会長は「当面新体制の経営方針を見極める」としている。更に「安定保有、あるいは買収も一つの選択枝」とはしているが・・・?最終的には契約無効として保有全株式の取得時の買値(329円)での買取り請求、あるいは虚偽の決算資料を基に出資させられた可能性があるとして損害賠償請求訴訟(440億円+α)を起こすことなどが考えられる。もし訴訟になればライブドア敗訴の公算が大きい。落ち目のライブドアには手痛い打撃になる可能性がある。
昨日の記者会見でライブドア代表取締役に就任した熊谷氏は「(4名の有罪が確定した場合)迎え入れる予定はない」として堀江氏などの経営復帰はあり得ないと断言した。堀江氏は現時点では取締役辞任届を出していない。宮内氏の辞任で取締役が6名となった為、堀江氏、岡本氏が欠席しても取締役会が開催出来る。もし有罪が確定しても堀江氏が取締役辞任しない場合、3名の取締役のみで堀江氏解任の決議が可能となる。果たして新経営陣がどうするのだろうか?ところで当初何故宮内氏のみが辞任?と訝しく思っていたが、取締役会開催を可能として意思決定機能の麻痺を回避する為の”姑息な”手段を講じたに過ぎない。
平松新社長は記者会見で「経営監視と業務執行を一手に握っていた体制に結果的に問題があった」と堀江氏のワンマン経営を批判している。こんな状況だから口では堀江批判を強調しているが、外向けの単なるポーズに過ぎないと見ている。本当に”堀江氏切捨て(影響力排除)”が出来るのかどうか疑わしい。新体制では一応業務の執行と監督を(形の上では)区分しているが、取締役会と経営委員会のメンバーが全て身内ではまともに機能するかどうか疑わしい。どうせ拘置中の堀江氏、宮内氏と連絡を密にとりその意向を受けて意思決定すると思われるから、新体制になったところで今までと同じプロセスで業務を遂行するのは間違いない。結局は堀江氏が”塀の中から院政”を敷くことになるだけであり、新経営陣による「再生ライブドア」などと言われてもそんな絵空事は全く信用出来ない。
昨日ライブドアは昨年5月19日に公表した中間決算短信(連結)を今頃になって修正した(こちら 参照)。監査上の指摘を受けて訂正したと説明している。営業活動によるキャッシュフローが112億8700万円→11億4800万円と約100億円減少した。この様なことが今頃出て来るなんて・・・他の数値は大丈夫なのだろうか?今後まだまだ何か出て来るのでは?との疑念を持つ。ライブドア本体にも粉飾決算の疑いが出ているのではもはや救い様がない状況に陥っている。
ライブドアの株価は7営業日ぶりに155円で寄り付いたものの、その後は売り注文に押され終値は前日比39円安の137円で取引を終えている。この日を待っていた方が非常に多く、出来高は4億2155万6096株と発行済み株式の約40%の凄まじさとなった。ライブドア株式が寄り付いた時に約定・注文件数の激増で東証のシステム処理能力を超える懸念があったが、東証は臨時のシステム増強、後場の短縮、ライブドア株式の取引時間の制限などで何とか凌いだ。
(今日の東証に置ける総注文件数:約580万件、総約定件数:約290万件)。
ライブドアが今日寄り付いたことを受け、東証は同社株式の取引開始時間を更に30分遅らせ14時からとする。同社株式の取引時間は僅か1時間に限られる。更に(1)買付け顧客からの代金の即日徴収、(2)自己売買部門の売買禁止、(3)信用取引による新規の売買禁止の制限措置が導入される。現在の様な状況では厳しい制限が科されて当然・・・。さて久しぶりに値がついたことで明日はどうなるのだろうか?お祭騒ぎになるのか、あるいは奈落の底に沈んで行くのか?興味津々で明日を迎える。
一方ライブドア・マーケティングの株価は7営業日連続のストップ安を続けている。今日の終値は1850円の比例配分で取引を終えている。出来高は僅か5785株に過ぎず、暫くは(3桁になるまでは)寄り付かないと見ている。ここは今回の疑惑の中心にあり、かつライブドア本体より注目度ははるかに低い。将来的に生き残れる可能性が低いと見ている。
ペイントハウスの動向は1月13日の特定調停不成立の開示以降何にも伝わって来ない。その後三菱東京UFJ銀行及び八十二銀行との”借金棒引き交渉”はどうなっているのだろうか?株価は”ライブドア・ショック”も重なり647円(今日の終値)まで大きく下落している。これはかなり厳しい状況に追い込まれていると言ってもよい。両行への債務総額は77億4377万円、対して時価総額は13億3500万円・・・資金調達して借金返済に充てるのは容易ではない。これでは監理ポスト抜けなど”夢のまた夢”・・・果たして復活の日は来るのだろうか?
サンライズ・テクノロジーはロータス投資事業組合に第三者割当による新株予約権を2000万株発行している。大量保有報告書によると1月16日に300万株、翌17日に700万株の計1000万株を普通株式に転換している。1月16日の終値は123円、翌17日は116円だったが、”ライブドア・ショック”の影響を引きずっているのか92円(今日の終値)と行使価格107円を大きく下回っている。これは見込み違いなのだろうか?さて(悪名高き)ロータス投資事業組合のことだから何か手を打って来るかもしれない。今後の株価がどの様に推移するのか注目される。
2006.1.26
堀江氏、岡本氏は昨日ライブドア取締役を辞任し、合わせてライブドアの子会社及び関連会社の取締役も全て辞任した。企業の不祥事に関わった人物が経営陣に残っていたのでは如何にも具合が悪い。新経営陣としては企業イメージ回復の為にも何としても”堀江色”を払拭したい。しかしながら堀江氏はライブドアの筆頭株主であり、今回の取締役辞任でいきなり影響力が皆無になるとは考えられない。新経営陣は”堀江色”を薄め様(無くそう)と躍起になっているが、表面上は格好をつけたところでそんなものは直ぐにばれる。それではどの様にすべきなのだろうか?
本気で”堀江色”を無くそうとするのであれば新経営陣は堀江氏保有のライブドア株式を全て買取り消却する必要がある。(堀江氏が手離すとは考え難いが)仮に堀江氏から全て買取ったとしても、堀江氏は訴訟の嵐の襲われ手元に資金がほとんど残らないと考えられる。まずは堀江氏との資本関係を断ち切り影響力を排除しなければ、『再生ライブドア』の船出などと戯言を言ったところで誰からも全く信用されない。 その上で新経営陣は『再生ライブドア』の経営方針/事業戦略などを明示しなければならない。企業としての方向性が変わらなければ何も変わらない。今まで通り節操もなく手当たり次第にM&Aを繰り返すのでは話にならない。尤も社会的信用を全て失ったライブドアのままでは身動きがとれないが・・・。それに(真に再生を誓う意味でも)傷ついたブランド名「ライブドア」をかなぐり捨て名称を変更した方が良い。いつまでも「ライブドア」に固執していたのでは容易に変わることが出来ないと思われる。この際きっぱり過去のしがらみを全て葬り、”ゼロからの出発”の覚悟で難局に対処しなければライブドアの復活の道はあり得ない。
昨日ライブドアから『株式譲渡契約の合意解消に関するお知らせ』が開示された。ライブドアフィナンシャル・ホールディングスは(株)ゼウスと(株)ゼロの両社と昨年12月22日付けで総額110億円の株式譲渡契約を締結していた。ここに来てのライブドアの一連の不祥事を受けて両社は契約解消を申し入れた。両社の関係者はほんの僅かの違いで災難を免れほっと胸を撫で下ろしていると思われる。もしかしたら(グループ他社が苦労している様に)今頃ライブドア・グループの一員として世の中から白い目で見られていたかもしれない。
1月23日ライブドア・マーケティングは代表取締役社長(当時)の岡本氏逮捕を受け、臨時取締役会を開催し穂谷野取締役に代表権を与えると共に社長に選任した。この時点で取締役は6名だが、3名が逮捕された為残る3名で臨時取締役会を開催している。商法の規定では取締役会は過半数の出席が必要であり、この場合は最低でも4名出席しなければ開催は成立しない。3名の出席では定足数に達していないのでは?との疑問が生じる。ライブドア・マーケティングの開示によると「法的に問題ないことを弁護士に確認」とある。「取締役死亡の場合は自動的に除外されるので逮捕の場合も準ずる」と解釈したとされる。果たしてそうなのだろうか?もしそうでなければ1月23日時点の取締役会は成立せず代表取締役選任の決議は無効となるが・・・?この辺りを詳しく調べることにする。
ライブドアの株価は14時の取引開始直後に135円で寄り付いたが、結局終値は前日比24円安の113円と大きく下げて取引を終えている。(明日以降はどうなるか分からないが)今のところマネーゲームの対象にはなっていない。普通に考えれば明日も下げて株価が2桁に突入することも充分あり得る。一方ライブドア・マーケティングの株価は出来高4010株、終値は比例配分ストップ安(300円安)の1550円と全く冴えない。明日もまた比例配分ストップ安の公算が大きい。週明けのどこかで寄り付くとは思うが、果たして幾らで寄り付くのか今から注目している。
2006.1.27
ライブドアは2004年2月20日に大阪にある消費者金融の子会社「ABS」買収を基本合意と公表した。「ABS」は社員0の実態の無い所謂”休眠会社”・・・実質価値の無い会社を何故わざわざ買収したのだろうか?今回の疑惑の一つのライブドア・マーケティングによるマネーライフの買収では手の込んだ不正を働いた。マネーライフの企業価値の過大評価により交換に充当する自社株式を(実勢よりも)多く発行し、複雑な経路を経てライブドアに巨額の売却益を還流させている。「ABS」買収についてもライブドア本体が同様のやり口で不正を働いたとの疑惑が浮上している。
「ABS」は基本合意公表の翌日(2月21日)に資本金を1000万円→10億円(発行株式数:200株→2万株)の大幅な増資を行なっている。その後2月26日ライブドアは自社株式70万株(時価ベースで約40億円)と「ABS」株式2万株の株式交換による買収契約締結を発表した。何故無価値に等しい休眠会社に必要性のない増資を行なったのだろうか?「ABS」の不自然な大型増資の狙いは『ライブドア株式の発行数を増やし(結果として)巨額の売却益を生み出す』ことは明らか。その様にして得られた『巨額の売却益がマネーライフの時と同様に(複雑な経路を経て)ライブドアに還流』された疑いが濃厚・・・。ところでどこの会社かの時かは記憶に定かではないが、以前ライブドアの開示を見た時に「何故社員0の会社を買うのか?」と奇異に感じたことがある。今にして思えば「なるほど、そう言うことか!」と状況がよく分かる。 今後「ABS」以外にもにも休眠会社を利用した疑惑が出て来ると思われる。
ライブドアの株価はマネーゲームの様相を呈している。今日もまだ14時から1時間のみ取引だったが、出来高は1億645万89060株をこなした。104円で寄り付きそのまま上昇を続け、終値は前日比26円高の139円で取引を終えている。フジテレビの日枝会長が「支援も一つの選択枝」としていることも材料視されているが、それよりもむしろ個人の投機資金が使って利鞘稼ぎの動きが出て来ていると考えられる。上場廃止などの危機的状況の恐れがあると、逆にそこを利用して一儲けを企む。まあ皆が得する訳もなく誰かが得をしてだれかが損する危うい状況には違いない。週明けは捜査の進展などと複雑に絡み合い、株価は激しく乱高下する可能性があり目を離せない
アドテックスの開示によると『エスポアール投資事業組合”から第2回MSCB分14億5000万円』が払込まれた。内13億3000万円はスイスフラン建MSCB繰上償還の1部に充当される。残り1億2000万円は回転資金に充てられる。某掲示板では大多数の方が諸手を上げ大歓迎であり、「これで連続ストップ高更新」と天にも昇る心地にある。エスポアール投資事業組合の行使価格は6730円であり、全て株式転換されれば21万5453株増加する。今日時点の時点の発行済み株式は16万5953株・・・新株式はそれをはるかに上回る。次には4月16日払込みの第3回MSCB50億円、及び第1回新株予約権20万株が控えている。もしこれら全てが権利行使されれば何と94万2942株の新株式が発行される。まさに猛烈な希薄化進行は必至であり、それでも株価が上がり続けてはどう考えても理屈に合わない。
エスポアール投資事業組合の投資事業組合の性格からして保有し続けることはあり得ない。何せ今日の終値はストップ高(2000円高)の1万7650円・・・株価が上昇したところで転換価額は上方修正はない。極めて有利な条件でありエスポアール投資事業組合は笑いが止まらない。売却により一般投資家などから資金を吸い上げることなる。ところが今はそんなRiskよりも倒産の危機を脱したことに多くの方の目が行っていると思われる。この先株価がどうなるのか追跡して行く。
2006.1.28
昨日ライブドアとフジテレビのTOP会談が行なわれた。ライブドア新社長の平松氏の呼びかけにフジテレビの日枝氏が応じる形で実現した。昨年のニッポン放送乗っ取り騒動の時とは立場が全く逆になり、ライブドアがフジテレビの「助けて!」と袖にすがる事態に陥っている。しかしながらフジテレビも支援要請に対して迂闊には「YES」とも言えない事情がある。散々フジテレビを弄んだライブドアで身勝手な言い分としか思えない。本来であれば冷たく門前払いにしたいところだが、フジテレビにも事情があり簡単に蹴っ飛ばすことが出来ない。そこで堀江氏が取締役を辞任し一切経営から身を引いたので、フジテレビとしてもまずは平松氏、熊谷氏と会って話を聞くことになった。その場でライブドアに対して正確な財務状況の開示を求めたと報じられている。
今後の捜査の進展や事態の推移を見ながら幾つかの選択枝から決めることなる。フジテレビは堀江氏の代表取締役社長退任により保有するライブドア株式12.75%を何時でも売却出来る。とは言ってもライブドア株価の大暴落によるフジテレビの含み損は既に約250億円を超えている。ここでフジテレビがライブドア株式を売却すれば更なる暴落を招くことは必至・・・容易に売却できる状況にはない。損害賠償請求も考えられるが、もしライブドアに支払い能力がなく取り損なったら一大事・・・。どちらの場合ももし大きな損失を出せばフジテレビ経営陣に対する株主代表訴訟が起こされる可能性がある。一方ライブドア支援により再建となれば株価上昇で含み損解消、更には含み益が期待出来る。しかしながらライブドアの疑惑が拡大するのか見当がつかない状況では支援決断も難しい。何せよライブドアを生かすも殺すもフジテレビの考え方次第だが、とにもかくにもフジテレビには難しい選択を迫られる場面が近々出現する。
”時代の寵児”と持て囃された堀江氏も流石にこの様な事態になっては見る影もない。フジサンケイ・グループの扶桑社から1月31日発行予定の著書「嫌われ者」の出版中止・・・。それに堀江氏がVocalを担当するバンド「ソテーガイ」のCD発売中止・・・。『ホリエモン』人気にあやかって一儲けを狙っていたが、”ライブドア・ショック”の煽りをまともに受けて頓挫した。回りの方が調子に乗って堀江氏を持ち上げていた側面があり同情の余地はないが、それでも損失を受けた方々には「ご愁傷様」としか言い様がない。
堀江氏の持ち馬『ホリエモン』にも影響が出ている。当初今日の出走を予定していたが、共同馬主から「取り止める」との連絡があった。弱者人気の『ハルウララ』とは異なり、高知競馬移籍後3勝を上げているだけに高知競馬関係者も”看板馬”の期待をかけていると思われる。今の状況では共同馬主としても流石に今日出走させる気にはなれないのだろうが、馬の『ホリエモン』には何の罪もない。それでも『ホリエモン』との名称から受ける悪印象が付き纏うのは果たしてどうだろうか?この際馬名変更した方が良い。
2006.1.29
UBS証券と日興コーディアルグループは「昨年12月のみずほ証券の誤発注で得た利益を返還」することを発表した。今回の騒動を受けて日本証券業協会が利益返還の受け皿として創設した『証券市場基盤整備基金』に拠出する。拠出額はUBS証券が約120億円、日興コーディアルグループが1億600万円から税金を差し引いた金額になる。他の証券会社も追随すると見られ、最終的に200〜300億円を超える額が拠出される見通しがある。
”火事場泥棒”との批判を受けて利益を得た証券会社が”自主的に”返上するが、みずほ証券へは戻らず結局は巨額の損失が残される。無論みずほ証券の責任は重大だが、東証のシステムにも欠陥があることも分かっている。となるとみずほ証券としては(コトを引き起こした当事者として大きな顔は出来ないが)損失の一部を東証に負担してもらわなければ気が済まない。みずほフィナンシャル・グループの前田社長は「損失の一部について東証に賠償を求める」可能性を示唆している。みずほ証券、東証、更にはシステム担当の富士通の責任の割合を巡って一騒動起きることもあり得る。当事者間の過失責任の割合をどの様にして判断するのだろうか?最終的には司法の場での決着になるかもしれない。
ライブドアは昨年8月25日の大引け後にジヤック・ホールディングス(現ライブドアオート)の子会社化を発表した。発表直前にジヤック・ホールディングス株式取引量が異常に膨らみ株価が高騰した。取引量(8月24日:179万9300株→8月25日:2426万1800株)、終値(8月24日:135円→8月25日:156円)とは明らかに不自然な香りが漂う。東証は「取引の経緯が不自然」として証券取引等監視委員会(SEC)に通報した。それを受けて
SECはインサイダー取引の疑いが濃厚として取引の実態解明を進めている。ライブドア、ライブドアオートの当時の役員からの事情聴取を予定されている。
また『ライブドアが実質支配している「EFC投資事業組合」に対してライブドアオート株式700万株貸出、及び700万株の新株予約権を譲渡』していたことが1月20日に提出した大量保有報告書により判明した。12月27日に貸株が行なわれ、強制捜査翌日の1月17日に返還されている。12月27日貸株が1月20日に報告とは・・・。5日以内に報告書を提出する義務があるが、明らかな証券取引法に違反に思える。これだけでも充分に摘発出来ると思われる。
通常貸株の理由は市場で売却して安値で買い戻して貸株分を返却し差分を利益とする狙いがある。ところが今回の譲渡された新株予約権と貸株数が一致している。これは何を意味するのだろうか?当初からEFC投資事業組合は貸株の700万株を市場で売却する一方で、新株予約権の行使により得られる700万株をライブドアに返却する予定だったと考えられる。つまりEFC投資事業組合は当初から己の利益を確保するつもりはなく、この投資事業組合をダミーとして最終的にはライブドアに利益を還流する狙いが読み取れる。ライブドアオートに関しても突けば更に埃が出て来る可能性がある。
さてライブドアオートの社長は羽田氏・・・ここへ捜査の手が及ぶ可能性がある。また現代表取締役の熊谷氏もライブドア意思決定の中枢にいただけに「この人が無傷?」と疑念がある。仮に捜査対象が拡大しどちらかライブドア取締役会辞任の状況となると、ライブドア取締役は2名しかいないことになる。商法の規定では3名以上の取締役が必要であり、2名との事態になれば取締役会は成立しない。新取締役の選任には株主総会の招集→承認が必要だが、こんな状況では招集も儘ならない。また新たな辞任が無ければライブドアの取締役3名で要件を満たしているが、両者逮捕との事態にでもなれば取締役の半数以上の出席とはならず取締役会を開催出来ない。そんなことにでもなれば企業としての重要な意思決定が不可能になる。今後の捜査で対象がどこまでになるのか大いに注目される。