2006.12.11

 昨今「金庫株」の取得を信託銀行が請け負う「金庫株信託」が注目を集めている。金庫株制度は保有目的を限定せずに自社株式を買える為に『買収防衛策の切り札』と期待されている。しかしながら金庫株取得は手続きは煩雑、かつ一歩間違えばインサイダー取引の疑義が生じる危険な代物・・・。そこでRisk回避策として登場したのが金庫株信託・・・企業と信託契約を結んだ信託銀行が金庫株の取得から管理/運用迄全ての作業をを代行する。企業は買付け株数数や金額の上限を信託銀行に指示するだけ・・・痛くもない腹を探られることはない。

 2006.12.12

 都合により休載。

 2006.12.13

 投資ファンドアドバンテッジパートナーズ(AP)の焼肉チェーン「牛角」を展開するレックス・ホールディングスに対するTOBが成立した(こちら 参照)。既にレックスはTOBへの賛同の意を表明していた。TOB成立後はTOBに応募しなかった残りの全ての株式を買取り非上場化を目指す。レックス経営陣はMBO実施により「抜本的な改革を断行する」と決意を示している。MBOには株主/株価への配慮無しに存分に経営に専念出来る利点がある。しかしながら企業の成長を見込み投資した株主には株価上昇により得られる筈の利益を奪い去られることもあり得る。その他にも一長一短あり難しい問題を孕んでいる。

 レックス経営陣はTOB成立後の株主総会にて「全部取得条項」の決議(承認)を予定している。これにより株主の同意無しに残り全ての株式が取得可能になる。特別決議事項で2/3超の賛成が必要だが、TOB成立によりAPは75.43%保有で何の障害も無い。一方
特別決議に反対した株主に対しては利益保護の為に株式買取請求権が付与されている。一部の個人株主は「事実上株式売却の強要」と猛反発・・・TOB成立後はレックスに対しAPのTOB価格(23万円)より高値での買取りを求めるとされる。村上ファンドが松坂屋株式移転に反対した時には両者の話合いが不調に終わり、結局は司法の場に持ち込まれ名古屋地裁の裁定により最終決着となった。恐らく今回も同じ路を歩むと思われる。

 日清食品によるTOB締切を明日に控えて
明星食品の株価は昨日のストップ安(100円安)に引き続き今日も下げている。前日比49円安の718円で寄り付き730円前後で揉み合っていたが、大引けにかけて値を戻し終値は前日比17円安の750円で取引を終えている。ここに来ての急激な下げは何なのだろうか?TOB価格870円を大きく下回る安値で売るのは何故・・・?単純に考えれば安く仕入れて870円で売れば差益を出せるが・・・?どこぞの誰かが仕掛けているのかもしれない。それはともかく700円を下回って推移していた明星食品の株価をSPJが700円に吊り上げ、それから「ホワイトナイト」日清食品が870円と強引に吊り上げた経緯がある。TOB成立した後に700円以下に下落しても何ら不思議は無い。今後の株価推移が注目される。

 2006.12.14

 昨日資金難に喘ぐYozanは20億円のMSCB(当初行使価額:2579円)と20億2000万円分の新株予約権(当初行使価額:2579円)を発行を開示した(こちら 参照)。当座は20億円の資金調達となるが・・・。巨額の累積赤字を抱えてはこの程度の資金調達ではどう考えて”焼け石に水”・・・何やら苦し紛れの策にも見える。それにしてもよくもまあ「Yozanは次から次と新たなFinanceを行ない発行済み株式数を増やし続けている」と呆れ果てる。これでは希薄化進行は免れない。何ら業績向上に貢献していないとあれば経営陣の無能ぶりを見事に露呈している。

 今日の終値は
前日比315円安の2550円と大きく下げて取引を終えている。まずは当初行使価額が一つの目安となって展開すると推察するが、無茶苦茶なFinanceの連続による信用度の低下となれば更に株価が下がる状況が予想される。苦し紛れのFinanceの連続、株価大幅下落と来れば次に控えているのは”●●・・・?アドテックスは同じ様な末路を辿り市場から消え去った。Yozanの背後にも危険な香りが漂う。”風前の灯火”と言ったところか・・・。

 明日セントレックスに
ギガプライズが新規上場する。セントレックス上場の直近IPOは如何に?フラクタリスト:31万円(公開価格:40万円)、メンバーズ:13万7000円(同:29万円)、KFE JAPAN:9万7500円(同:19万円)とは目を覆うばかりの惨状を呈している。それではギガプライズは連敗を止めることが出来るのだろうか?業績ハイライト2007年3月期業績予想を見る限りでは順調に伸びている。セントレックスへの信用度の低さがギガプライズの株価にどの程度の影響度をもたらすか注目している。

 2006.12.15

 今日
日清食品は『公開買付けの結果、及び子会社の異動に関するお知らせ』を開示した。予想通り明星食品に対する友好的TOBは買付予定数の2.58倍に相当する大量の応募により成立した。全て買付けるとしているので取得費用は当初予定を約196億円上回る319億8500円に膨れ上がる。これにより日清食品の保有比率は86.32%(議決権ベースで89.05%)となり明星食品は連結子会社となる。このままでは2007年9月末時点での少数特定者持ち株比率が90%を超えて東証の上場廃止基準に抵触する可能性が高い。この件について日清食品は「今後の対応について決定した場合には速やかに知らせる」としている。

 
日清食品が実勢を大きく上回るTOB価格870円を提示した時から大量の応募があることは充分に予想出来た。先にTOBを仕掛けたSPJもしめしめとばかりに応募、そして多額の利益を得ることになる。他の株主も”渡りに舟”と喜んで応募したのに違いない。何せ今後明星食品の株価の870円付近の高水準は到底期待出来な。それに「上場廃止の可能性あり」となれば多くの株主が積極的に手離すのは目に見えている。誰が考えてもここで売却した方が得策・・・。

 ところで日清食品が上場廃止回避の為に一部売却を目論んだとしても恐らく870円をかなり下回る価格でなければ売却出来ない。となればわざわざ売却損まで出しての処分では自らの株主への説明がつかない。結局保有したままで明星食品は上場廃止になると見ている。今後の展開として経営統合、完全子会社化、あるいは吸収合併などが考えられる。さてどうなるのだろうか?ちなみに明星食品の終値は前日比13円安の767円で取引を終えている。
日清食品は(今日時点の終値で換算すると)36億8679万円の含み損を抱えている。TOB価格設定について経営陣は株主にどの様に説明するのだろうか?

 今日セントレックスに新規上場した
ギガプライズは公開価格18万円を上回る36万円の買い気配のまま終了した。今のところセントレックスのIPO連敗はストップする可能性が高い。近頃の日本市場の好調さが反映されているのだろうか?もしかして初値天井、そして急降下・・・?週明けの初値形成、その後の株価推移が注目される。

 昨日関東財務局に提出された大量保有報告書により「糸山氏がテレビ東京株式を9.35%→10.41%に買い増した」ことが判明した。糸山氏のサイトを見るとテレビ東京との対立が増していることが分かる。テレビ東京の菅谷社長への非難は益々エスカレートしている。糸山氏はテレビ東京株式に関して「割安と判断出来ればひたすら買って行く」と宣言している。テレビ東京は大株主としての糸山氏の主張をどこまで無視し続けるつもりなのだろうか?今後の展開がどうなるのか読み難い。さて・・・?

 2006.12.16

 8月31日ドリテクはDTコミュニケーションズの子会社化に関連して「不適当な合併等」の(上場廃止)猶予期間入り銘柄の指定を受けていた。昨日大証ヘラクレスはドリーム・テクノロジーの猶予期間銘柄指定を解除した(こちら 参照)。これを受けて某掲示板では一部の”●●”が喜びのあまり大騒ぎしている。こんな話が材料になるとは到底思えないが・・・。猶予期間入り銘柄の指定翌日の終値は7070円と昨日の終値(1万50円)より30%程度低い。それ故猶予期間入り銘柄解除は株価上昇の理由にはなり得ない。しかしながらドリテクには多くの”●●”が群がっているので時折起こる”●●”騒ぎの再現もあり得る。さて週明けは如何に・・・?

 クオンツ、及び子会社のクオンツ・キャピタルが札幌地裁に申立てたオープンループに対する新株予約権
発行差止仮処分が認められたこちら 参照)。この決定を受け12月14日オープンループは新株予約権発行中止を決定した。必要に迫られて(不利な条件での)20億円相当のFinanceを目論んだが・・・今回の札幌地裁の決定により一旦頓挫することとなった。今後新たなFinanceにより資金調達をしなければならないが・・・いったいどうするのだろうか?ところでオープンループの株価は需給悪化懸念の後退から買いが入り、昨日の終値はストップ高(3000円高)比例配分の3万2250円で取引を終えている。一方資金不足の懸念は依然として残っているが・・・まずは需給悪化懸念の後退が歓迎された。さて・・・?

 発行決議時点での発行済み株式に対する潜在株式比率は85.9%、最下限行使価額の場合の潜在株式比率は307.1%とある。新株予約権の第三者割当先は何かと評判の悪いリーマン・ブラザーズ・・・空売りで株価を下げて出来るだけ多くの株式取得を目論むことは間違いない。どう考えても
新株予約権の権利が行使されれば希薄化は必至・・・既存株主への影響は極めて大きい。中でも20.56%保有の大株主クオンツとしては多大な不利益を蒙るとして認める訳にはいかない。客観的に見てもこの新株予約権発行に正当な理由を見出すことは出来ない札幌地裁の決定は当然と言える。

 2006.12.17

 今年度限りで廃止予定のばんえい競馬はソフトバンクグループの支援を受け2007年度以降の存続が決定した(こちら 参照)。旭川、帯広、北見、岩見沢の4市による北海道市営競馬組合が運営して来たが、40億円の累積赤字に苦しみ帯広以外の3市が今年度限りで撤退を表明した。帯広市が単独開催を模索しているところにソフトバンク・プレイヤーズが名乗りを上げ、12月14日両者の合意に至りばんえい競馬は廃止の危機を脱した。しかしながらこれにて順風満帆の再スタートとは言えない。長期的な存続に向けては課題山積み・・・少なくとも黒字化実現は必須と言える。ソフトバンクは民間企業、何時までも赤字垂れ流しと言う訳にはいかない。それはさておき関係者の努力が報われることを切に願う。

 ミサワホームホールディングスの連結子会社
ミサワホーム九州の5年に亘る粉飾決算の疑いが浮上している。未完成の住宅を顧客に引き渡したことにして売上げを前倒し計上したとされる。(当たり前のことだが)通常顧客に住宅を引き渡した時点で売上げ計上する。赤字に苦しむミサワホーム九州は黒字化の為に不正に手を染めた。既に完成した別の住宅の表札を差し替えるなどの偽装工作により監査法人によるチェックをすり抜けていたとは・・・極めて悪質な行為としか言い様がない。

 連結子会社の粉飾決算となれば親会社のミサワホームHD自体の決算も粉飾されていたことになる。ミサワホームHDは近々5年分の決算訂正を行なうとしている。有価証券報告書の虚偽記載となればコトは重大・・・上場廃止基準に抵触する可能性がある。福岡証券取引所に上場しているミサワホーム九州のみならず東証、大証、名証に上場しているミサワホームHDへの責任追及もあり得る。背信行為により上場廃止との事態に至れば経営陣の責任は当然追求されなければならない。今年3月産業再生機構の支援が終了したばかり・・・今回の事態でまたもやミサワホームグループには暗雲が忍び寄って来た。

 ところで今回の
正が発覚したきっかけは監査法人が10月に抜き打ち監査を実施したことによる。従来は監査法人は社員の言うがままに見て回り不正を見抜くことが出来なかった。予め監査予定が決まっていれば幾らでもインチキが出来る。抜き打ち監査となれば不正を隠すことが出来ずに全てが明るみになった。さて今回不正を暴いたのはみすず監査法人(旧・中央青山監査法人)・・・公認会計士がカネボウの粉飾決算に関わりすっかり信用を落としていたが、毅然とした態度で企業に対峙して不正を暴き信用回復の第一歩を踏み出したと言える。カネボウの一件が明るみに出て以来(当然のことだが)監査法人は企業に対して強い態度で取り組む様になった。”喉元過ぎれば熱さ忘れる”とはならぬ様に引き続き頑張らなければならない。

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