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第69段    * 西武グループの不祥事その2 − 堤前会長の逮捕 −

 3月3日ついに堤前会長に司法の手が及んだ。東京地検特捜部は堤前会長を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー取引)容疑で逮捕した。取調べに対し「全て私の責任でやったこと」と認めていると言う。それはそうだろう。”西武王国”の「専制君主」で中央集権の独裁体制を40年に亘って築いてきたので、今更「部下が勝手に・・・」、「私は何も知らない」などの言い逃れは通用しない。容疑が極めて悪質なことから、おそらく実刑は免れないと思われる。

 ”独裁者”堤前会長の支配下で”Yes man”のグループ幹部が約20年間に亘り虚偽記載の事実を放置していたことが今回の事件に繋がったのではないか?
1982年堤前会長は総会屋対策の商法が改正された時点で、コクドによる名義偽装の保有実態について報告を受けていたことが分かっている。当時堤前会長は西武鉄道の社長の立場にあり、既に西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載を知っていた可能性が極めて高い。

 
2004年8月から9月にかけて西武鉄道株式を大量売却した時に、堤前会長主導で不正工作が行なわれたことが分かっている。どの様な手口なのか?売却したコクド名義の西武鉄道株式の数だけ、”名義借り”した個人名義の株式をコクド名義に書き換えていた。この操作を繰り返すことで、狙い通りコクド名義の保有比率を変えず虚偽記載も知られずに予定株数の売却を完了している。この事実が”インサイダー取引”を裏付けるものとされている。

 
堤前会長はグループ内でも西武鉄道株式の名義偽装株式を利用して、2000年3月以降債務超過に陥る可能性があったプリンスホテルを救済している。この時はコクドが保有する西武鉄道株式をプリンスホテルに譲渡しているが、ほとんどが名義偽装株式だった。名義偽装株式を使用すればコクドからプリンスホテルへの譲渡の事実が表面に出て来ない。プリンスホテルは西武鉄道株式を資産として債務超過の危機を脱し、一方コクドは株式売却で赤字の補填としていた。よくもまあ”あこぎな手段”を考えるものだ。まるで”詐欺”ではないか?

 2004年3月に発覚した総会屋への利益供与事件を受けて同年6月に西武鉄道社長に就任した小柳氏(故人)がコンプライアンス(法令順守)の方針を打ち出した。小柳氏の下業務点検を行い名義偽装株式問題が発覚、更に同年6月に就任した監査役がこの問題で調査を開始した。同年8月の西武鉄道取締役会で監査役が名義偽装株式問題を指摘し、コクドに事実関係の調査と回答を求めている。ところがこれに対してコクド幹部が西武鉄道に対して「この問題は公表できない。監査役や取締役は全員辞任せよ。」と迫ったと言う。名
義偽装問題が明るみになることを恐れたコクドが、西武鉄道の改革を進めている小柳氏へ親会社の立場を悪用して圧力をかけたと思う。これもまた呆れた”恐喝”行為と言える。

 堤前会長が逮捕された途端に実弟康弘氏、猶二氏、グループの元幹部、社員などが、今までの鬱憤をはらすが如く一斉にマスコミへあれこれと喋り始めた。
堤前会長が実質身を引いているとは言っても”塀の向こう”に行かない段階ではまだ怖くて話せなかったのだろう。つっかえ棒が外れたら手のヒラを返すが如く批判、非難を始める。「自分は無関係、全てあの人が独断専横で行なったこと」と自らの身の潔白を主張している様にしか聞えない。今更コトが全て発覚してからグタグタ言っても見苦しく感じるだけ。

  東京地検特捜部の捜査はかなり慎重に進められてきた様に思える。ただもう少し速くできなかったのだろうか?
堤前会長の逮捕が遅れたことが西武鉄道の小柳前社長の自殺の様な悲劇を生んだとは言えないだろうか?小柳前社長は昨年6月社長に就任したばかりで、今回の不祥事で何も関与していなかったのではないか?責任をとって自殺する様なことはしてなかったと思うが・・・?堤前会長に義理立てすることなどなかったはず。家族に「一切西武の世話になるな。」と遺書を残したとのこと。恨み辛みは相当なもの・・・。警察の事情聴取を何度も受けていたが、その場で知っていることを洗いざらい話すことはできなかったのだろうか?堤前会長が”塀の向こう”に行かない時点では小柳氏は身の危険を感じていたのだろうか?疑問は尽きない。今回の様な事件ではしばしば犠牲者が出て、その度に嫌な想いをするのにはウンザリする。

 2月25日
堤前会長はコクド大野社長を通して改革委のグループ再編案を承認する意向を示した。既に2月20日改革委との交渉に当たっていた弁護士を「グループ再編計画に支障あり」として解任し、グループ再編案を認める意向を示していた。ここに至っては堤前会長もそうせざるを得ないところまで追い込まれている。大野社長が記者会見で発表したが、そこで「何で堤前会長自身が出てきて説明しないのか?」との厳しい追求もあったと聞く。しかしながら堤前会長は自身が置かれている状況では表舞台へはとても出ては来れなかった。

 改革委の再編案はコクドを分割し西武鉄道と合併、堤前会長の株式所有比率を大幅に縮小するなどの内容となっている。主な再編案の骨子は以下の通り。

 ・コクドを堤前会長の個人資産管理会社(旧コクド)と事業会社(新コクド)に分割
 ・新コクド、西武鉄道、プリンスホテルを合併して新西武鉄道を発足
 ・新西武鉄道の最大2000億円増資

 再編後は旧コクドによる新西武鉄道への持ち株比率を10%未満とし、堤一族によるグループ支配の排除を狙っている。堤前会長が再編案を承認したことでグループ改革は大きく前進した。堤康次郎氏が1920年箱根土地株式会社設立を設立してから85年後、ついに堤一族による同族経営は終焉の時を迎えることになる。自業自得で当然の成り行きと断じる。泥にまみれた”華麗なる一族”の終焉・・・こう言っては大袈裟だろうか?

 大野社長は堤前会長の実弟が所有権を主張するコクド株式について、現在独自の調査を行なっていることも明らかにした。この問題に関してはまずはコクド側がきちんと調査し真相を明らかにする必要がある。そして納得行く説明と対応を世間に対して行なわなければならない。つまり
過去の脱税行為、不法行為に対する納得の行く決着はグループ再生への証の一つに成り得る

 実弟猶二氏は「相続税を支払い、過去の過ちを償いたい」としていると報じられているが、昨今の堤一族の言動を見ると俄かには信用できない。
猶二氏は2月に”名義貸し”株式の名義人のコクド大野社長、プリンスホテル山口社長など27人を相手に、自らの株式の持ち分を確認する訴訟を起こしている。 このことだけでも”堤一族の恥”を世間に対し恥も外聞もなく晒し”厚顔無恥”と思っていたのだが・・・。加えて
3月3日異母兄清二氏(作家辻井喬氏)と親族二人が同様の訴訟を起こしている。結局清二氏も猶二氏と”同じ穴のむじな”と言うことか?清二氏もただの人、”やはり堤一族か”と失望させられた。彼らの言い分が認められたとしても、彼らが「株式をどう処するか、またどう責任をとるか」を明確に示さなければ誰も納得しない。

 ついに猶二氏は本性を暴露したと思われる。朝日新聞によると
猶二氏はコクド大野社長とプリンスホテル山口社長の2人を横領容疑で東京地検に告訴した。訴えによると「コクド株式は父康次郎氏(故人)が”名義借り”で保有し、死後堤前会長が管理している堤家の財産。大野、山口両社長はこれらの株を不法に所有し、他の名義人らにも『株は自分たちの所有だと主張しよう』と要請した。」としている。  3月8日付けで告訴状を郵送したので、東京地検が告訴を受理したかどうかはまだ分からない。

 「ここまでやるか」と呆れてしまう。
堤一族がやってきたことを棚に上げて現経営陣を誹謗中傷するとは言語道断、許されざる悪行と言うべきか。猶二氏には全く反省の様子が感じられない。自分達の財産として必死に守ろうとする”金の亡者”に成り下がったのか?今や世の中は堤一族の過去から現在に至る所業に対して冷ややかな視線を送っている。猶二氏は何を考えているのか?謙虚に反省すべきところなのにこの横柄とも言える態度は”最低の人種”と断じてもよい。

 ここに至っては既に堤一族は全てを放出しグループ経営から一切身を引くべきところまで追い込まれている。しかしながら猶二氏、清二氏など一族の行動を見ていると自分達の置かれている状況が分かっていない。傍から見ると本当に見苦しさばかり目立つ。堤一族には潔い身の処し方が求められる


(2005.10.30追記

 10月27日東京地裁は西武鉄道の堤前会長に対し、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー取引)の罪で懲役2年6ヶ月執行猶予4年、罰金500万円(求刑懲役3年、罰金500万円)の判決を言い渡した。同時に虚偽記載の罪に問われた西武鉄道には罰金2億円、インサイダー取引の罪に問われたコクドには罰金1億5000万円を言い渡した。(当然のことながら)堤氏は控訴しない方針を明らかにしている。

 犯した罪状から考えると堤氏への執行猶予付き、それに罰金500万円は安過ぎる様にも思える。堤氏は「既に西武鉄道及びコクドの役員を既に退任しており、各社の今後の経営につきましては現執行部の皆様を信頼しておりますのでこれ以上申し上げる立場にありません。」としている。当然と言えば当然で今まで好き勝手にやって来て重大な不祥事を引き起こしたのだから、今更表舞台にしゃしゃり出ることなんぞ出来るはずがない。

 ところで
相変らず猶二氏、清二氏など一族には反省の色が感じられない。やはり金が絡むとどんなに”良い子ぶって”いてもいざとなると見苦しい本性が剥き出しになる。10月16日猶二氏、清二氏など親族4人は「株式は堤家の財産で、義明氏の持ち株の約55%は法定相続分自分たちのもの」として、堤前会長を相手に持ち分の確認を求める東京地裁に提訴した。その他名義偽装された株式の所有権確認訴訟、更には『名義上の株主を対象に株主総会を開くのは違法で、堤家など実際の株主が損害を受ける可能性がある』として株主総会開催差し止め訴訟を起こしている。

 
「権利を主張するのであれば義務を果たせ!」と強く彼らに言いたい。亡くなった彼らの父親の脱法行為だが、相続権を主張するのであれば過去に遡って(脱税した)相続税を払う義務がある。既に時効になっているとは思うが、過去の過ちを悔い改めて相続税納付を申し出るくらいの謝罪の気持ちがなければ人間として道を外れている。”金の亡者”に成り下がっている輩には”馬の耳に念仏”かもしれないが・・・。まあ期待するだけ無駄・・・???
ペンペン草