第8段 * 大相撲初場所を迎えて *

 
1月11日に大相撲初場所が初日を迎える栃東の綱取りが初場所の目玉になる。連続優勝が綱取りの条件になるが、一人横綱の朝青龍が横綱の意地を見せてこれを阻むかどうかが興味の焦点。4人の大関がいるが、現状では横綱を狙えそうな力士は栃東だけ。昨年初め大看板の貴乃花が引退し、相撲人気の低迷に拍車をかけた。日本人だ、外国人だと言うつもりはない。だが相撲人気を少しでも回復させる為には日本人横綱の誕生、そして外国人横綱との優勝争い、そうすれば自然と相撲界も盛り上がってくるのではないだろうか?

 さて朝青龍はいろいろとお騒がせが続きひんしゅくをかっている。土俵内外での旭鷲山とのトラブル、前高砂親方葬儀の欠席、年明けの初稽古、綱打ちの無断欠席など・・・。ハラハラさせられたがさすがに横綱審議委員会の総見はパスしなかった。横綱審議委員からは手厳しい言葉が浴びせられている。横綱は相撲協会を背負って立つ大看板、いつまでも若いなどとは言ってられない。特に横綱は心・技・体の充実が必須。現状の朝青龍は心にまだ未熟な点が見受けられる。朝青龍の相撲っぷりには速さ、技の切れなど多彩な魅力があり、強い横綱に成長する可能性を秘めている。本人の更なる自覚、高砂親方の厳しい指導などにより、朝青龍の精神面での成長、そして大横綱への道を歩んでもらいたい

 昨年11月、貴乃花と一時代を築いた曙が角界を去った。NHKの解説者としての言動やTVで放映された指導の様子などから、指導者として適任で優れた人材を育てられる器と見ていただけに残念でならない。結婚時のタニマチとの確執が伝えられた時から心配していたことが現実になってしまった。東関親方が「曙に裏切られた」と言ったとの報道があったが、とすれば東関親方には失望の念を感じざるをえない。東関親方は曙の親方株の取得問題などにどれほど親身になって考えたのかわからないことが多い。一部報道には曙親方は現状の低迷打開策として海外での本場所開催を北の湖理事長らに提言したが、退けられ失望したことが相撲協会を去るきっかけになったとある。いささか突飛なアイデアではあるが相撲界の将来を真剣に考えていたのだろう。恐らく相撲を愛する曙親方は相当悩んだに違いない。もしかしたら周りに相談できる人があまりいなかったのではないか?
相撲界にとって貴重な人材を失ってしまった。将来貴乃花親方と相撲界を背負って立つ両輪になったかもしれないのに・・・!

 
私の相撲の記憶は昭和30年代前半の栃錦、若乃花にまで遡る。これがいわゆる『栃若時代』。当時NHKのラジオの実況を聴きながら状況を推測していた。栃錦が自分よりはるかに背の高い大内山を鮮やかに首投げで勝った一番、栃錦、初代若乃花両横綱の千秋楽全勝決戦などを映像として見たのはずっと後のこと。この時代には寺尾、逆鉾の父、鶴ヶ峰(前の井筒親方)やNHK解説者の北の洋(故緒方さん)もいる。子供心にワクワクして相撲に興味を持ち、小学校で友達と話をしたり相撲をとって遊んだことを記憶している。

 昭和35年頃には大鵬、柏戸が頭角を現してきた。いわゆる『鵬時代』を築いたこの二人、柔の大鵬、剛の柏戸、ライバルとして長期間渡りあった。全く好対照な二人の相撲は絶大な人気を集めた。直線的な攻めの柏戸、対して丸い土俵を目いっぱい使う自在な大鵬。怪我に悩まされた柏度は昭和44年7月場所に引退。最多優勝32回の最高記録を持つ大鵬は、ロシア人の血をひき甘いマスクでファンも多かった。子供が好きなものと言えば「巨人、大鵬、卵焼き」、これが流行したのもこの頃。V9時代の巨人、大横綱大鵬、全盛期はとにもかくにも強かったの一言。昭和44年3月場所の戸田(元小結羽黒岩)との一戦、いわゆる「
世紀の大誤審」で連勝記録が45でStopしたのはあまりにも有名。翌日の新聞で誤審の証拠がはっきりと示された時の衝撃をついこの前のことのように覚えている。この後Videoを参考とする様になったが、審判の目が判定の基本であることには変わりはない。今でも時として極めて怪しげな判定が下されることもある。昭和46年5月場所大鵬は貴ノ花(双子山親方)に敗れ引退。

 さすがの大鵬にも蔭りが見えてきた頃に、北の富士(前の九重親方)、玉の海が台頭してきた。これがいわゆる『北玉時代』。昭和46年秋場所後に玉の海が急死、北玉時代』が突然終焉を迎えた時は驚いた。この二人が競り合えば黄金時代を長く続いたと思う。玉の海の死に落胆した北の富士の力士寿命は縮まったと言われている。

 北の富士と入れ替わる様に北の湖(現理事長)と輪島(前の花篭親方)台頭してきた。これがいわゆる『
輪湖時代』。輪島は「黄金の左」、左を差すと無類の強さを発揮した。この輪島は引退後、親方株を担保にするという不祥事を起こして角界を去ることになったのはもったいなかった。一方北の湖はあまりの強さにまさに敵役と言うに相応しい。その活躍はまだ記憶に新しい。

 その後
北の湖→千代の富士(現九重親方)→貴乃花、曙と相撲人気を継承してきた。千代の富士は優勝31回と大鵬に次ぐ回数で無類の強さを誇ったが、隆の里(現鳴戸親方)、旭富士(現安治川親方)、朝潮(現高砂親方)などが入れ代わり立ち代わり挑戦した。その千代の富士が平成3年5月場所初日貴乃花に敗れて引退を決意したのをつい最近の出来事の様に記憶している。

 隆の里が率いる鳴戸部屋には若の里、隆の若ら逸材が揃っている若の里は初場所で13場所連続の三役、このままでは近々魁皇の記録を更新する。以前から期待しているが、先場所大関取りに失敗したように見ていていかにも歯がゆい。相撲も本格的な正攻法、力強さを見せる反面もろさも同居している。圧倒的な強さを見せるかと思えばあっけなく負けることもある。大関の力は充分にあるとは思うが、肝心な時にもう一歩力が出せない。どうも精神面に弱さがあるようだ。もう若手ではない。精神面を鍛えて何とか早く大関に上がって欲しい。一方新たなスター候補、17歳の若手萩原が幕下東18枚目まで上がってきた。体も相撲っぷりも良く関係者の注目を集めている一人。幕下上位は「鬼の棲家」と言われる激戦地帯、十両に上がるのはそう簡単ではないが稽古の精進して本場所で結果を出して欲しい。若の里、隆の若もぐずぐずしていると若手に追いつき追い越されてしまう。気合を入れて頑張らないと・・・。

 
大相撲の隆盛には強い横綱とライバルの存在が貢献している。ただ一人強いだけではつまらない。その憎まれるくらい強い横綱を誰が倒すのだろうという興味が沸かないと見る方も力が入らない。若くて新しい力も出てきて欲しい。今まさに横綱朝青龍に立ち向かい大相撲を背負って立つ人材が求められている。初場所で栃東は存在感を示すことができるのだろうか?期待して推移を見守りたい。
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