第13段 * 『フェルマーの最終定理』が解決 ‐数学界の未解決問題‐ *
 
 数学の世界で350年もの長い間未解決の問題が、ついに1994年10月イギリス人でプリンストン大学のアンドリュー・ワイルズ教授により証明された。『フェルマーの最終定理』と言われ、数学界の謎の一つで史上最大の難問とされてきた。未解決の問題はいくつかあるがこれが最も有名で、1908年にドイツ科学アカデミーが懸賞金10万マルクを賭けていた。その賞金が有効で支払われたかどうかは私は知らない。多くの数学者が己の英知をかけて挑戦し解決した論文を提出してきたが、都度証明のどこかに欠陥が見つかり敢無くその努力は露と消えていた。アンドリュー・ワイルズ教授の場合も最初1993年6月に論文が提出されたが一部に誤りが見つかり、翌年10月に充分な検証により修正された論文が再提出されその信憑性が認められた。

 
『フェルマーの最終定理』とは何か?フランスの法律家で数学者のピエール・ド・フェルマーは1630年代に古代ギリシャの数学者ディオファントスの「算術」という数論の本を愛読していた。そして読み進める内に気づいたことを余白に書き込んでいた。ところでこのフェルマーが数学者としてはアマチュアということを今回初めて知った。

 
Xn+Yn=Zn(n≧3、但しnは自然数)を満たす自然数X、Y、Zは存在しない。

 
非常にシンプルな定理である。フェルマーはこの定理を彼の蔵書「算術」の余白に記述してこうも付け加えた。「私は証明することができたが、この余白には狭すぎて書けない」と・・・。実際にフェルマーが証明したかどうかは定かではない。フェルマーはこの他にもいくつかの定理を書き残しているがその証明はほんのメモ程度、後日数学者がきちんと証明した。しかし唯一これだけが誰も証明できず、350年にも亘り謎になっていた。最後まで証明できずに残ったので「最終定理」と呼ばれた。数学の世界では証明できていない命題は”定理”とは言わずに”予想”と言う。しかしこの場合はフェルマーが「私は証明した」と言っているので、当初から”定理”と呼ばれている。

 
n=2の場合、X2+Y2=Z2・・・皆さんもよくご存知の式で「ピタゴラスの定理」、「三平方の定理」として知られている。”直角三角形において直角を挟む2辺の各々の辺の2乗和と残る1辺の2乗は等しい。” 代表的な数の組み合わせとしては、(3,4,5)、(5,12,13)がある。ところがこれがn≧3、例えばn=3の場合、
X3+Y3=Z3なるとこれを満たす自然数が存在しない。以下同様にn=4,5,6・・・と永遠に続くと言うのだから実に不思議。自然数は無限に続くのでまさかn=3から始まって自然数1個1個について証明するわけにはいかない。アンドリュー・ワイルズ教授がどの様な証明をしたのかは知らない。やさしく解説した本が出ているということなので、その内購入して読んでみようと思う。

 フェルマーが残した定理に、『
n+1で表される数はすべて素数(nは自然数)』がある。これはオイラーにより 25+1=2324294967297 が641を約数に持つ、即ち1と自ら以外に約数を持つこと(素数ではない)が示されこの定理は否定された。

 一方、オイラー自身も『
オイラーの予想』を出している。『フェルマーの最終定理』と感じがよく似ている。

 X4+Y4+Z4=W4を満たす自然数X、Y、Z、Wは存在しない。

 この予想も200年間証明されなかったが、また反証もなく否定されなかった。これもまた多くの数学者が200年間に亘り何とか証明しようと挑戦し続けていた。ところが1988年にハーバード大学の研究者が反証を見つけて一件落着となった。

 
26824404+153656394+187967604=206156734

 何だこれは? しかしどうやってこの解を求めたのだろうか? これで
『オイラーの予想』は一瞬にして否定された。それにしても200年間に亘り多くの数学者が費やしたエネルギーは、たった一つの反証で水泡に帰した。まさに「ああ無情」というところか?

 数学の世界での
代表的な未解決ま問題としては以下の様なものがある。

 ・2より大きな偶数はすべて2つの素数の和で表わされる。 (例) 10=5+5、12=5+7、32=19+13・・・
 ・1+n2(nは自然数)で表される素数は無限に存在する。  (例) 17=42+1、37=62+1・・・
 ・差が2である2つの素数の組は無限に存在する。  (例) 3と5、5と7、1997と1999、2087と2089・・・

 『フェルマーの最終定理』が解けたからと言っても上記の未解決問題にせよ解けないからと言っても、世の中にとって何の得、何の害があるわけではない。だからと言って
数学が「実用的ではあるが役に立たない学問」と決めつけてしまうのはいかがなものか?様々な未解決問題を追及している過去から現在、そして未来の数学者に壮大なロマンを感じる。傍から見ると世の中の人は「あの連中は何をやっているんだ。全く無駄だ。」と思えるかもしれない。寅さんふうに言えば、「それを言っちゃおしめえよ」。現実ばかりでなく夢を追うのもこれも一興ではないか

 たしかに最低限四則演算さえできれば何とかこの世で生きていける。また数学は直接的に貢献している部分が少なく、その為かノーベル賞には含まれていない。数学はモノ造りに直結した生産的な学問ではないかもしれない。しかしながら 
数学は他の学問を後方で支える地道な縁の下の力持ちの様な存在 でもある。例えば微積分は工学、物理学、はたまた近代経済学などの世界で充分に活躍し人間世界の発展に寄与している。

 何でこんなに私が数学を擁護するのか?それは謎・・・(笑)。

ペンペン草

トップ アイコン
前の段ヘ

トップ アイコン
ペンペン草
トップヘ

トップ アイコン
次の段ヘ