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第68段    * 堀江氏の野望 その3 − 驚愕のフジテレビ対抗策 商法違反? − *

 
2005年2月23日の夕方に飛び込んできたNewsには驚かされた。ニッポ放送の亀淵社長とフジテレビの日枝会長が共同記者会見を行いライブドアへの新たな対抗策を発表した。3月24日ニッポン放送の「新株予約権」をフジテレビを引受先として最大4720万株!分発行するとのこと。現在のニッポン放送の発行済み株式は3280万株・・・、それをはるかに上回る新株式の発行でこれが実現すればフジテレビはニッポン放送を連結子会社化できる。ライブドアの保有比率は15%程度に、フジテレビはTOBの結果に関わらず60%以上になる。

 「新株予約権」は3月25日から株式への転換が可能で、転換価格はフジテレビのニッポン放送株のTOB価格(1株5950円)と同じ。
フジテレビが最大でニッポン放送に2808億円を支払うことになる。これほどの巨額の資金調達の為に金融機関などに話がついている。ライブドアの借金よりも巨額で約3.5倍とは驚かされる。”世の中は金!?”とふうっ〜と溜息が出てしまう

 こんな
多額の借金をして大丈夫なのかと疑問に思う。フジテレビもライブドアも財務体力(耐力?)の低下の危険性が増すのではないか?調達した資金は”支配権維持”の為の投資?かもしれない。  しかしながら明確な資金活用計画がない現状では、直接的に新たな”生産”により利益を産み出すものではなくただ消費するだけに過ぎない。株式数が増加し調達資金が収益に結びつかないと、株価は下落、企業活動縮小のスパイラルダウンに陥る。1980年代同様の仕組みのワラント債(新株引受権付き社債)を大量発行し資金を集めた企業が、その後長期間に亘り財務体質の改善に苦しみ続けている。バブルがはじけその後日本経済が低迷したことから過剰な投資が大きな負担として圧し掛かってきた。今回の場合も企業の実力を超えた過剰な資金調達かもしれない。そうなれば両者とも後々財務の問題で苦しむかもしれない。そうなった場合フジテレビはフジサンケイグループの傘下にあるが、ライブドアは後ろ盾がないのでより苦しくなるのではないか?

 朝日新聞によると亀渕社長は記者会見で「ライブドア傘下になると、フジサンケイグループから離脱せざるを得なくなり、企業の価値が損なわれる。」と株主の理解を求めている。更に「ライブドアがニッポン放送の株式を大量取得した経緯は不透明で、違法の疑いもある手段をちゅうちょなく用いるライブドアが支配株主となることは、マスコミとしての高い公共性と両立しないと判断した」としている。

 しかしながら商法の規定(第280条の10)では、”企業の支配権維持、争奪”目的での増資で不利益を被る株主は増資差し止めを請求することができる。今回のニッポン放送の「転換社債」の発行はこの規定に抵触する可能性もある。一方ライブドアがこのまま黙って引き下がるはずがない。間違いなく
ライブドアは”発行差し止めを求める仮処分申請”に踏み切る。そして更に本訴訟に持ち込まれる可能性が極めて高い。フジテレビの日枝会長は記者会見で「訴訟を起こされるのであれば受けて立つ」としている。フジテレビは”
極めて危険な切り札”を使用したとも言える。果たしてフジテレビの思惑通り行くかどうか?どの様な決着になるかは全く予断を許さない。

 仮処分申請時は印紙代のみだが、もし
仮処分で差し止め命令が出る場合には合わせて保証金の供託を求められることが多い。本訴訟で逆転し差し止めが認められなかった場合、損害賠償の担保が必要となる。保証金は通常損害額の20〜30%程度・・・ライブドアの仮処分申請が認められた場合、ニッポン放送の損害額を幾らに算定してどの程度の保証金をライブドアに求めるのだろうか?フジテレビの最大支払額2808億円をニッポン放送の損害額として、ライブドアの納める保証金が約560億〜840億円?まさかそんなことはないだろうが、ライブドア勝訴時の裁判所の判断も注目を集める。

 翌24日午後8時大方の予想通り、ライブドアは”発行差し止めの仮処分”を求めて東京地裁に提訴した。ニッポン放送を巡るフジテレビvsライブドアの対決はいよいよ司法の場に舞台を移す。堀江氏は「多額の転換社債の発行は既存株主の持ち株の価値を低下させ大きな損害を与える」と批判している。

 
新株式発行には資金調達の合理的な理由が必要となる。”フジテレビの対抗策が商法に抵触する恐れがある敵対的買収を避ける目的かどうか?”、”フジテレビ以外の株主に不利益を与えないか?”、”ニッポン放送にとりフジテレビと親密な関係にある方が何故ライブドアと提携するよりも企業価値が上がるのか?”などが争点になる。早ければ来週中にも東京地裁の判断が下される。どの様な判断が下ろうがそこでは終わらない。裁判の長期化は必至・・・両者の対決にどの様な影響を与えるのだろうか?

 少し見方を変えてみよう。ニッポン放送の発行済み株式の1.45倍もの大量の新株式発行(転換社債)は極めて不自然に思える。株式数が増えて企業の収益が変わらなければ当然1株当たりの収益率は下落する。と言うことは1株あたりの対価(=株価)は下がる。これが既存株主に大きな損失を与えることになるのではないか?また新株式の大量発行を実現すれば一挙に50%以上することになりフジテレビの支配権を獲得できるが、商法に定める”企業の支配権維持、争奪”にはあたらないのか?ライブドアの行為を”敵対的買収”と看做して、今回のフジテレビの対抗策が正当な防衛策と言えるのかどうか?
フジテレビが司法の場で立証すべき事項も多い。恐らくフジテレビは今回の対抗策を発表するに際しこの様な争点があるのは承知しているはず・・・発表前に既に弁護士、監査法人などと対策は練っているとは思うが・・・。しかしながらどうしても違法性の疑念を拭い去ることはできない

 一方ライブドアがニッポン放送株式買収に際し、2004年度の売上高250億円(見通し)の3倍以上の800億円もの借金をして他社の株式の買占めを行なっていることが正当な商行為と言えるだろうか?極めてリスクの大きい行為がライブドアの株主の不利益に繋がる恐れもある。また資金調達に際しこちらも発行済み株式の最大0.79倍もの大量の新株式発行(転換社債)で対応している。やはり1株あたりの対価(=株価)は下がる。これもまた既存株主に大きな損失を与えることになるのではないか?また『時間外取引』を使った実質TOB行為は法の規制がないとは言っても、”支配権獲得”を目指している今回の行為は本当に問題にならない(違法性はない)のだろうか?
ライブドアに対しても疑問点は多くある

 ところで一つの大きな疑問が湧いてきた。フジテレビはニッポン放送株式取得の為に「転換社債」で800億円、更に銀行から1000億円の計1800億円調達している。ライブドアも「転換社債」で800億円調達している。商法では第三者に有利な条件で新株式を発行する場合、株主総会で特別決議を可決(2/3以上の賛成)しなければならないとしている。つまり株主に”リスクを負っての多額の資金調達”に対する是非判断の機会を与えている。

 ところが
フジテレビ、ライブドア共に取締役会の決議だけで「転換社債」発行を決めている。フジテレビもライブドアも特定の第三者に「転換社債」を全額割り当てている。確かに商法の規定によると定款で決められた上限内の「転換社債」の発行は取締役会の決議事項ではあるが、今回の場合は明らかに”第三者に有利な条件”に該当する。”第三者に有利な条件”とは何を指すのだろう。どう考えても株主総会の特別決議なしでは不可と考えられるがどうだろうか?商法違反ではないのか?

 また「新株予約権」は株式数を大幅に増加させる仕組みであり、株価の下落で既存株主には割損となる。つまり
既存株主に大きな犠牲を強いることにもなる。これほど株主に不利益になる重要な決定事項を、株主総会抜きに決めるのは株主への背信行為にはならないのだろうか?株主総会を飛ばすなんて株主の権利を侵害していると思うのだが・・・。株主を軽視している様で何か釈然としない。

 取締役会だけで重要な決定ができるのであれば、株主総会はお飾りで実質的に無意味な存在になってしまう。株主による経営陣への牽制、統治が効かなくなってしまうのではないか?経営者による暴走、私物化、不正などに対する歯止めが効かなくなる。

 ある資料によると「
株主総会は会社の基本的な事項について意思決定する
」、「業務執行についての意思決定は取締役会の権限」とある。言い換えれば取締役会は「株主(総会)から委託を受けて会社の業務を遅滞なく執行する機関」と言える。確かに一々株主総会を招集して審議していたのではタイムリーな意思決定はできない。だからと言って取締役会の決議だけで多くのことができるのは問題で何らかの歯止めがあると思うが・・・?私の頭の中では取締役会と株主総会の関係がまだ理解できていない。まだまだ研究が必要。

 今回のフジテレビvsライブドアの対決・・・一般株主を置き去りしたはるか彼方の出来事の様に見える。株主の利益とは口では言ってはいるが、今回の騒動の関係者が心底そう思っているか甚だ疑問に思えて来た。両者による”支配権争奪闘争”は既に泥沼化の様相を呈している。ますます一般株主は舞台の隅に追いやられるだけではなく遂には場外に放り出されてしまうのではないか?

 
ライブドアは「フジテレビのTOBを有利に運ぶ為のニッポン放送株価下落を狙った株価操作の疑いが強い」として証券取引等監視委員会(SEC)と東京証券取引所に対し調査申し入れる方針を表明した。フジテレビが否定しても誰もがそう思うだろう。フジテレビのTOBの最中に突然(巨額の)増資計画とは常識では考えられない。”露骨な株価操作”ととられても仕方がない。どう考えても不公正、不公平な取引にしか思えない。フジテレビには弱みがある。それでも司法の場に出る覚悟で敢えてニッポン放送増資計画を打ち出したのは何故か?自分達にも弱みがあるのは承知の上で、ライブドアにも弱みがあり司法の場で判断を仰ごうとする狙いがあると思われる。

 一方ライブドアが『時間外取引』で約32%取得と言う”奇策”を用いたのは如何なものか?1/3以上の取得を目指す場合には他の株主の不利益にならない様にTOBが義務づけられている。
今回のライブドアの行為は明らかに支配権獲得の狙いで1/3以上の取得したが、正面攻撃を避け裏口から奇襲をかけて騙まし討ちをした様にも感じられる。今回の手法は法の不備を突いたずる賢いやり方であり、明確に違法とされなければ何をやってもよいと言うことなのか?これもまた不公正、不公平な取引にしか思えない。ライブドアにも弱みがあり、司法がどの様に考慮するか注目される。

 今回のライブドアの手法が認められるならばTOBの規定が無意味になってしまう。つまり
合法的な不正”がまかり通ることになる。一刻も早く法の整備を行ない、こんな不正な”手法が2度と使われない様に歯止めを掛ける必要がある。

 2月25日ニッポン放送の大株主
M&Aコンサルティング(村上ファンド)はフジテレビの「転換社債」発行に関して「日本の株式市場にとって重大な悪影響を与えかねない」と批判的見解を示している。詳細はM&Aコンサルティングのサイトに載っているがまさに正論と言える。ここではフジテレビのみを批判しているが、村上氏はライブドアの「MSCB」発行、『時間外取引』に関してはどの様な見解を持っているのだろうか?

 ところでまたまた初めて聞く経済用語が登場した。2月21日堀江氏は持ち株保有比率が40%を超えたので、役員派遣や『みなし子会社(=会計上の連結子会社)』化を検討していることを示唆している。 いったい『みなし子会社』とは何だろうか?

 商法の規定により持ち株保有比率50%を超えれば自動的に連結対象子会社となる。50%未満でもライブドアがニッポン放送と”緊密な関係”にあり”実質的に支配”していれば連結対象子会社とすることができる。”緊密な関係”、”実質的に支配”とは何とも曖昧な表現・・・監査法人はどんな基準で判断するのだろうか?ある会計事務所のサイトには以下の様に記載されている。

 1)企業の議決権の過半数を実質的に所有している場合。つまり保有比率が50%を超えている場合。
 2)保有比率が50%未満の場合でも高い比率の議決権を有しており、株主総会において議決権の
   過半数を継続的に維持できると認められる場合。
 3)重要な財務、及び営業方針を支配する契約が存在する場合。

 『みなし子会社』は2)、3)の場合と考えられるが、今回の場合は3)はまずあり得ない。すると2)だがこれでもどんな基準で判断するのかまだ分からないが・・・?どんな基準にせよ公正な監査法人がいとも簡単に”緊密な関係”、”実質的支配”を認めるとは考えられない。

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