2005.11.21

 毎日新聞は『
楽天とTBSが水面下で和解に向けた接触を始めた』と報じている。(1)両者間の複数の業務提携(2)楽天保有のTBS発行済み株式の19.09%の取扱い(3)TBSへの楽天の役員派遣・・・この3点を中心に交渉が進められている。妥協を探る動きはあるものの、経営統合やTBS株式保有について両者の主張には差異が大きい。TBSの経営統合拒否の姿勢は今後も貫かれることは間違いない。またTBSとしては19.09%を保有したままの状態が続くことは常に圧力をかけられることと同じであり、対等の立場での協業とは到底言えず容認出来るはずがない。逆に楽天としては保有比率を下げればTBSにそっぽを向かれる危惧があり、少なくとも現状維持を望んでいると思われる。更にTBSへの楽天からの役員派遣は実質的に経営に関与することと同義であり、当初から楽天が狙っている様にTBSの経営に干渉することが出来る。そんなことを許したら”数の力”を大上段に振りかざし強引に迫って来た三木谷氏が傍若無人に振る舞うことは目に見えている。TBSとしては到底認めることが出来ない。和解に向けての折衝が始まったとは言っても、両者の主張には大きな隔たりがあり今後の展開は予断を許さない。一方ではロイター通信は『TBSが楽天との妥協を否定』と報じている。これは様々な情報が錯綜し状況は混沌としていることを示している

 この報道を受けて『楽天とTBSの全面対決が避けられる可能性あり』との観測が広まった。
楽天の株価は前場一時7万4900円まで上昇し、終値は前日比1700円高の7万4000円で取引を終えている。しかしながら希望的観測(期待)が先行しているに過ぎずこのまま上昇するとは考え難い。やはり両者の交渉の行方が大きな鍵を握っている。一方TBSの株価は先週末に発表された中間決算での業績悪化に嫌気が差され、終値は前日比160円安の3200円で取引を終えている。買い材料が見当たらない現状では株価が上がるとは考え難いが、楽天がTOBを仕掛ける状況にでもなれば大暴れする可能性がある。

 
ライブドアの株価はまたもや同じ様なパターンで推移して下落が続き、終値は前日比7円安の486円で取引を終えている。材料が出る前に上がり始めいざ材料が出ると下方に向かうとの毎度お馴染みの展開なので分かり易いと言えば分かり易い。それにしても2005年9月期の好決算が出たとたんにこれだから、ここはどうしようもない”★”株式としか言い様がない。それともまたもや銀行ネタで”●●”騒ぎ・・・?またライブドア・マーケティングの株価も順調に4営業日連続で下落し、終値は前日比230円安の4470円で取引を終えている。それにしても4営業日で800円は如何にも下げ過ぎであまりにも弱い。ここは誰かにコントロールされているかの如く上げたり下げたり実に忙しい。この上げ下げを利用して儲けている悪い輩が何かと画策しているのかもしれない。何せよここもライブドアに同じくどうしようもない”★”株式としか言い様がない。

 
ドリームテクノロジーの株価は忙しく上げ下げを繰り返し、終値は前日比1100円高の3万6500円で取引を終えている。村上氏の登場や民事再生法適用申請中の平成電電のスポンサーを巡って期待感が高まる一方で不安感もあると見える。同じ上げるにしても以前の様な”お祭り騒ぎ”の如き状況にはなく、どうやら事態の進行を眺める様子見の感が強いと見える。思惑だけで動いている現状では明日以降どの様に推移するのか推察し難い。

 2005.11.22

 村上ファンドが次なる獲物に手を出した。『通信機器メーカーの新日本無線に対するTOBを開始する』と発表した。実際にTOB実施するのは村上ファンドの関連会社「エム・エイ・シー」で新日本無線株式の2.56%保有している。公開買付け価格は過去1ヶ月の終値平均749円に20.1%上乗せした900円に設定し12月15日まで実施する。発行済み株式数の約47%にあたる1856万5000株を総額167億850万円を投じて取得する予定としている。900円の設定について村上氏は『他の半導体関連株と比べても割安な企業である上、半導体サイクルなどを考慮すると投資価値がある水準』としている。また村上氏はTOBが成立すれば『新日本無線の現経営陣と友好的な関係を維持する』として経営陣の入れ替えなどは行わないとして”経営権取得が目的ではない”との考えを示している。つまり村上氏からすれば「友好的なTOB」と言うことになる。村上氏によると昨日午前に日本無線経営陣、続いて今日には新日本無線経営陣と話し合う予定になっている。

 一方繊維大手の
日清紡が自動車部品分野で連携する為に、過半数超を目指して公開買付け価格840円で新日本無線へのTOBを11月9日から29日まで実施している。これに対し新日本無線の取締役会は受入れ決議、即ち賛同する意思を示した。既に日本無線は保有する新日本無線株50%超を全て日清紡に売却することを決めている。そこに村上ファンドが割り込んで来たのだから、村上氏の行為は”敵対的TOB”にしか見えないと思われる。今年夏には既に村上氏は日本無線に新日本無線売却を打診しているが、その時点では日本無線は無視している。強硬な態度で臨んで来ることを日本無線経営陣は予想していたのだろうか?もしかしたら慌てふためいているかもしれない。

 ここでTOBに絡んでいる企業の関係を整理すると次の様になる。日本無線は新日本無線を連結子会社・・・つまり新日本無線の親会社と言うことになる。また日清紡は日本無線株式の19.3%保有する筆頭株主となっている。
村上氏は日本無線、新日本無線、日清紡の関係に着目し、株主として新日本無線のTOBの価格設定など条件に疑問を呈している。『日清紡から日本無線に対して筆頭株主として取締役派遣している状況下では”コーポレートガバナンス(企業統治)の機能しにくい環境”に置かれている。日本無線は筆頭株主の日清紡の意を汲んで、新日本株式の売却先、売却条件などを決定した。日本無線経営陣は最良の選択を行なう義務を果たしていない。』・・・村上氏はこの様に主張する。つまり『なれ合いは許されない』と言っている。(村上氏としては当然の追求だろうが)この主張には一理あり、痛いところを突かれた日本無線、新日本無線、日清紡はどの様に対応するのだろうか?

 さて日本無線は既に日清紡への売却を決めているが、村上氏が日清紡より高い価格を設定した事態を受けて対応に苦慮することも予想される。ニッポン放送乗っ取り騒動の時にはフジテレビのTOBに5950円で応じた東京電力などで株主代表訴訟が起こされた。最終的にフジテレビが買い付けた価格が6300円では不満が起きても可笑しくない。今のままの条件で日本無線が日清紡のTOBに応ずれば、株主から経営陣批判の声が上がり株主代表訴訟に発展する可能性がある。Riskを承知でこのままTOBを進めるのか、あるいは買付け価格を村上ファンドより高く設定するのか・・・何にせよ日本無線の今後の対応が注目される。ところで今回の
村上氏の参入をうけて新日本無線の株価は高騰している。昨日はストップ高(100円高)の939円、そして今日は前日比74円高の1013円で取引を終えている。ここもまた村上氏の出現で一躍注目を浴びることになった。

 
ライブドアの株価が理由不明の”●●”騒ぎを演じ明らかに不審な上昇
を示した。終値は前日比33円高の519円で取引を終えている。ラジオNIKKEIが『UBS証券が今日付けでライブドアの株価目標を600円→700円に引き上げ、投資判断の「買い」は継続』したことを受けて株価上昇に繋がった』と報じている。同証券のレポートでは『今後は選択と集中により「ポータルサイト事業とファイナンス事業」に注力していく戦略。(1)収益率改善、(2)投資資金の早期回収→M&A→高成長等より、UBSは同戦略をポジティブと判断』とされる。証券会社がこの程度のことを書くのはよくあることで、これだけの理由でライブドアの株価が急騰するとは考え難い。また某掲示板では「何かありそう。大引け後に銀行認可の発表?」などと大はしゃぎしている方々がいる。こんな騒ぎもここでは日常茶飯事で急騰の理由とは考え難い。

 異常な上昇を訝しく思っていたら、大引け後の16時にライブドアは『メディアエクスチェンジとの業務資本提携等のお知らせ』を開示した。第三者割当増資として12万3700円/株で3万9486株(48億8441万4200円)を引き受け12月12日に払い込む。また明日から12月13日までTOBを実施し、買付け価格13万4200円で8515株以上買い付ける。既に大株主のパワードコムは保有の全株式2720株についてTOBに応じることで同意している。予定通り第三者割当増資、TOBが完了すれば(TOBで8515株取得したとして)ライブドアの保有比率は50.69%となり、メディアエクスチェンジはライブドア傘下の連結子会社となる。ところでこのネタは大引け後に開示されたものであり今日の株価上昇には結びつかないはずだが・・・そうでなければインサイダー取引???

 さてメディアエクスチェンジとは?
メディアエクスチェンジは企業向けのデータセンター運営やネット接続サービスを主業務としている。2005年3月期の決算では売上高:21億1500万円、経常利益:2億800万円となっている。今までのM&Aとは異なり黒字企業の買収だが、如何にも規模が小さくライブドア・グループへの貢献度は小さいと考えられる。言い換えれば驚嘆するほどの材料には到底見えない。ここに群がる方々は相も変わらずちょっとしたことに過剰反応を示すと呆れ果てる。

 同時に
ライブドア『600万株のストックオプション(SO)を取締役、監査役、従業員など945名に割当てる』と発表した(こちら 参照)。行使期間は2006年12月27日から2008年12月26日までとなっている。また行使価額は「権利を行使する前週各日のマザーズに於ける普通取引での終値の平均値」と定められている。ちなみに従業員910名には1人当たり平均約5万株割当てられる。何せ1年以上も先の話であり、かつ現在の発行済み株式の0.6%弱なので直ちに株価に影響を与えるものではない。但しその頃には株価がどうなっているか予測がつかず論じてもあまり意味がない。ここでは取り敢えず参考情報として記録に留めておく。

 2005.11.23

 
昨日アドテックスから『MSCB15億円全て株式転換終了のお知らせ』が開示された。5万2963株増加して発行済み株式は16万8953株となり、MSCB発行前と比較して45.66%増加している。ライブドア証券が11月21日に関東財務局に提出した大量保有報告書によると、普通株式:1万1020株、新株予約権付社債:7353株、計1万8373株(保有比率:10.87%)となっていた。昨日7353株を普通株式に転換したことになる。大量保有報告書の取引履歴を見ると、ライブドア証券はほぼ毎日アドテックス株式を売却している(こちら 参照)。恐らく堀江氏はここの株式を長期保有してもMerit無しと判断していると見られるので、明日以降も少しづつ売却を繰り返し保有株式の大半を処分すると思われる。

 
MSCBの株式転換が終了したからと言って株価が上昇することなど考えられない。まずはMSCB発行前とアドテックスを巡る状況には何ら変化がなく株式の大量増加で希薄化がより一層進行している。更にライブドア証券保有分の売り圧力が徐々に強まって来ると思われる。加えて49億円の第三者割当増資に失敗して以降、新たな資金調達の話はなく資金繰りの苦しさは変わっていない。とすればまたもや大型増資が行なわれる可能性があり更なる希薄化進行が予想される。こんな状況下でアドテックスの株価がよく3万円前後を保っていると不思議に感じる。ちなみに昨日の終値は550円安の3万300円で取引を終えている。

 今年になって「ニッポン放送乗っ取り騒動」、「TBS乗っ取り騒動」、「阪神電鉄騒動」と相次いで世間を騒がす騒動が巻き起こっている。”金の力”に物言わせて力づくで相手を強引に押さえ込もうとする不逞の輩が大きな顔をして跋扈している。しかしながらに一旦上場すれば誰が株式を取得しても問題はない。上場企業の経営者は常にRiskを意識しながら対処する必要がある。

 ここに来て近年の商法改正で認められる様になった特殊な株式『
黄金株』が注目を集めている。通常は多数決の論理で決定されるが、例えば敵対的M&Aで株式を大量に買い占められたとしても僅か1株で重要事項の議決を拒否できる強力な権限を有する特殊な株式がある。「拒否権付き株式」とも言われる。株主総会の決議があれば特定の相手に発行することが出来る。過去に国際石油開発が旧石油公団に発行したことがあるが普及していない。現在の規定では『黄金株』の譲渡制限がない。仮に友好的株主に対して『黄金株』を発行しても、その後裏切られて敵対的買収者の手中に収まったのでは何の意味もない。それでは発行を躊躇する企業が出現しないことも頷ける。来春施行の改正商法では『黄金株』の譲渡を制限し友好的な株主だけに与えることのできる規定が盛り込まれている。敵対的M&Aへの強力な対抗手段として『黄金株』導入の動きが企業間に広がる可能性がある。

 『黄金株』は経営陣にとり敵対的M&A防衛などへの都合の良い手段になる。しかしながら使い方を誤まると”毒”にもなり得る。『人間の本質は悪であり、理性が悪を制御している』との立場からすれば、悪の本能が剥き出しになった場合には人間は何をするか分かったものではない。やはり
効き目の大きい”劇薬”を投与すれば当然危険な副作用が伴うことが多いので慎重に対処すべきと考える。改正商法の条文を詳しく調べて改めて論評を加えることにする。

 その様に東京証券取引所が考えたかどうかは分からないが、
『黄金株』が一般株主に損害を及ぼし兼ねないとして(公益などの理由によるものを除き)認めない方針を打ち出した。東証は特定の株主だけを優遇する為”投資家平等の原則に反する”と見ている。また企業価値の向上につながる買収まで排除するなど自由な投資を制約する面もあると見ている。東証の勧告に対して6ヶ月〜1年以内に是正しないと上場廃止にするとしている。東証は年内には「制度要綱」を作成して年明けにも関係規則の変更を金融庁に認可申請するとしている。これに対し与謝野金融相は「法律で認められているのに上場基準で制限するのは理屈に合わない」としている。今後年明けにも監督官庁の経済産業省と東証間で意見調整が進められる。立場は経済産業省の方が強いが、さて両者の対立はどの様に決着がつくのだろうか?

 2005.11.24

 総務省は楽天のTBSへの共同持株会社方式による経営統合案について『
外国資本規制がない持株会社の株式を外資が大量取得すれば傘下のTBSの放送免許取り消しに繋がる可能性がある』と両者に伝えたと報じられている。来春に施行される改正電波法・放送法では外資は直接+間接出資で(議決権ベースで)20%未満に規制され、違反すると免許取消の厳しい処分が下される。ところが放送局を傘下に置く持株会社については外資規制の対象とはならず不備があることを露呈した。外資は収益性の高い日本の放送局に目をつけていると言われているので早急な法整備の必要に迫られている。

 ライブドアのニッポン放送乗っ取り騒動を機に外資規制強化の改正放送法・電波法が10月に成立したばかり・・・今回は楽天のTBS乗っ取り騒動で持株会社の問題点が浮き彫りになり、総務省が慌てて再度放送局への外資規制を強化の方針を打ち出したと看做せる。毎度のことながら何故行政は後手後手に回るのだろうか?「もっと頭を使え」と皮肉の一つも言いたくなる。規定が過剰になり過ぎる危険性があり難しい問題と認識しているが、それでも
何か問題が起きないと対応出来ない行政の対応にはまどろっこしさを強く感じる。それはともかくTBSは総務省とのBigな後ろ盾を得た感があり、これで楽天への提案拒否を自信を持って打ち出すと思われる。

 『両者のTOPが今月中に会談予定』と毎日新聞が報じている。
全面対決は避けたいとの意向の表われだが、如何せん両者の主張には隔たりがありそんなに簡単に妥協が成立するとは思えない。しかしながら和解への期待感が先行している様にも見受けられ楽天の株価は急上昇し、終値は前日比4900円高の7万9400円で取引を終えている。尤も騒動が長引けば失望感から逆戻りすることもあり得る。一方TBSの株価は楽天のTOB実施の可能性が低くなっているとの見方が強まり、終値は前日比30円安の3170円で取引を終えている。楽天のTBS乗っ取りの仕掛けが判明する以前には2100〜2200円位を推移していた。現在の株価は今回の騒動による吊り上げで高い水準になっているだけで、業績の悪化の状況を加味すればいずれ騒動収束後には2000円程度まで反落しても何ら不思議はない。

 
ライブドアの株価は”○○○○株式”の面目躍如・・・特筆すべき材料が見当たらなくても賑やかな”一人芝居”を演じてくれた。前場は昨日の勢いを引き継ぎ今年の最高値549円まで上昇したが、後場には一転して下落に転じ終値は5円高の524円で取引を終えている。一昨日のメディアエクスチェンジの連結子会社化だけで(一時的にせよ)これほど上がるはずがなく、ただ単にどこぞの誰かがつけた提灯に群がった”★★”な方々が”●●”騒ぎを引き起こしただけに過ぎない。まともな材料もなく爆上げする様ではまさに”無理が通れば道理が引っ込む”事態としか言い様がない。前場の勢いのまま後場も上がり続けたのではどう考えても可笑しい。後場に下げたのは当然と言える。

 
ドリームテクノロジーの株価は2営業日続けて下落し、終値は前日比2100円安の3万2700円で取引を終えている。強気と弱気、それに様々な思惑などが入り混じり凄まじい心理戦が繰り広げられていると思われる。平成電電の再生に向けてスポンサーか決まればここは爆上げと期待している方もいるが、果たしてそう上手くコトが運ぶのだろうか?それにスンナリ株価が上がったのでは1万5930円/1株で手に入れている村上氏が”濡れ手に粟”のボロ儲けとほくそ笑むことになる。ところで今までに2度この辺りまで来てその度に反発しているが今回はどうなるのだろうか?どうやら底値を試す展開の真っ最中と考えられる。取り敢えず明日どちらに向かうか注目される。

 
新日本無線の株価は前場昨日の終値に同じ1013円で寄り付いたものの、終値は前日比88円安の925円と大幅に反落して取引を終えている。昨日までの2営業日続けての高騰は「買付け価格の引き上げがあるのでは?」との期待が先行したことによる。ところが日清紡が「村上ファンドのTOBに対して拒否」、「自社のTOBの買付け価格引き上げせず」との方針と伝えられている。この情報を受けて一気に買い意欲が萎んだと考えられる。

 異常な値上がりに思わず飛び付き高値掴みで青くなったいる方がいると思われる。昨今村上氏が手を出した所謂『村上銘柄』は、村上氏の名前が出た直後に大暴れしている。まだ決着のついていない阪神電鉄の株式の場合は(安定していた頃の)2倍位の水準を維持している。10月4日にはストップ高で1067円をつけたが、今日の終値は892円と900円を挟む展開が続いている。一方ダイナシティの株価は村上氏の高値売り抜けでもぬけの殻になるととたんに下げ始めた。そこに今日の大引け後に2006年3月期の赤字決算(連結)の発表があり下げ足が加速すると見られる。
村上氏の名前が出た後に『村上銘柄』に手を出すと高値掴みで酷い目に遭う可能性があり”用心することが肝要と言える。

 2005.11.25

 証券取引法では『上場企業の株式を10%以上(議決権ベース)取得した大株主を「主要株主」と言い、主要株主が株式を取得後6ヶ月以内に売却して利益を得た場合には企業や他の株主が売却益を企業に返すよう請求することが出来る』と規定されている。主要株主なればその企業の内部情報を用意に入手出来る立場になる。つまり事前に知り得た情報を基に不当に利得を得ること(インサイダー取引)を禁止している。村上氏が阪神電鉄の39.77%保有している「主要株主」となれば6ヶ月以内の短期売却出来ないことになる。

 この件に関して『
金融庁が証券取引法上の規定が投資ファンドに対して(原則として)適用されないとの見解を示している』と報じられている。投資ファンドの実質的な株主はファンドに出資している複数の投資家であり、議決権はそれぞれの出資割合に応じて保有していると看做される。つまり投資ファンドが企業株式を10%以上取得したとしても、ファンドは単なる「窓口」に過ぎず「主要株主」とは看做さない。とすれば村上ファンドは何時でも自由に売却可能と言うことになる。しかしながら村上ファンドは如何なる場合も(出資者の意思には関係なしに)大株主としての権利を行使している。当然企業の内部情報を知り得る立場にあると考えるのが普通だが・・・?これを「主要株主」と言わずして何と言うのだろうか?

 
一般の「主要株主」の短期売却を制限しながら一方で投資ファンドを野放しにするのは明らかに可笑しい。確かに投資ファンドは複数の投資家から資金を集めて運用して利益を得ている。しかしながら投資家は出資しているだけで実際には運用は投資ファンドに全権委任している。つまり投資ファンドへの「窓口」は複数だが、投資ファンドから企業への「窓口」は唯一と看做すべき・・・そう考えれば投資ファンドは「主要株主」でしかあり得ない。それ故『企業に対してファンドは単なる「窓口」に過ぎない』とするのは論理的に矛盾があると考える。きちんと議論して規制すべきところは明確に規定しなければならない。見解などと曖昧な解釈を示すだけではこの先またもや問題を引き起こすことになる。

 昨日
アドテックスの株価が11月22日に『MSCB全額株式転換終了』の開示が出ただけで、何とストップ高(4000円高)の3万4300円をつけている。他に悪条件が揃っているのに何やら浮かれ過ぎでは?との疑念を持った。やはり案の定昨日の大引け後に『2005年12月期期末業績修正のお知ら』が開示され、大幅な売上高減少、更に大幅な赤字の見込みが明らかになった。発表資料には(連結ベース)売上高:70億円(前回予想:133億円)、経常利益▲9億7000万円(前回予想:6億円)、純利益▲24億円(前回予想:2億5000万円)とある。「当初50億円の売上げをジャパンワイヤレスからの受注を見込んでいたが、ジャパンワイヤレスの大株主が民事再生法適用申請中の平成電電で受注が難しい」として下方修正している。この情報を受けて前場開始早々にストップ安(4000円安)の売り気配となり、結局ストップ安の3万300円で取引を終えている

 昨日の高騰はいったい何だったのだろうか?インチキ臭い香りがプンプン漂う。何ともタイミングの良過ぎる?ストップ高、更に取引終了後の業績下方修正発表からすると、「
昨日のストップ高はこの辺りの事情を知っている悪い輩の売り抜け、つまりインサイダー取引では?」との疑念が浮かぶ。悪材料を隠しておいて先に『MSCB全額株式転換終了』に注目させ株価を吊り上げて売り抜けるとは・・・全く阿漕なやり方としか言い様がない。何にせよ怪しい不自然な動きには吊られない様に用心が肝要・・・。

 日清紡と村上ファンドがTOBで争っている
新日本無線に関して新しい動きが見られた。日清紡は『買付け価格を840円から880円に引き上げ、買付け期間を12月9日まで延長する』と発表した(こちら 参照)。村上ファンドの900円に対抗する為に引き上げたがそれでも20円下回っている。日清紡はこの点について『新日本無線が当社グループ企業となることによって、新日本無線の中長期的・継続的な企業価値・株主共同利益の確保・向上が達成出来ると自負しており、当社の提案内容は総合的視野から見て株式会社MACを上回ると確信している』と説明している。更に『マネーゲームとしない為にこれ以上の買付け価格引き上げはない』としている。価格差が20円に縮小されたが、村上氏はどう出るのだろうか?20円上回っているとしてこのまま強気で臨むのか、あるいは更に引き上げるのか、それとも株価が高い時点で保有株式2.56%を売却して撤退するのだろうか?全ては村上氏がどこまで本気でTOBに臨んでいるかにかかっている。さて村上氏の”次の一手”が注目される。

 2005.11.26

 昨日フジテレビの村上社長は『
業務提携委員会で検討が進められていたライブドアとの業務提携交渉がまとまった』ことを明らかにした。業務提携委員会は両者の”妥協の産物”として設置され、当初の予定通り11月末までに解散する。ライブドアの無線LANを番組制作で利用するなど4項目が盛り込まれたが、ライブドアが強く求めていたテレビ番組のネット配信など「ネットと放送の融合」に繋がる項目は盛り込まれていない。フジテレビはほんの少々申し訳け程度に業務提携範囲を絞ったと思われる。予想された決着でライブドアとしてはほとんど実を得ないに等しい。堀江氏が盛んにぶち上げた「ネットと放送の融合」実現を結局無視されたのでは実質的にはライブドアの敗北と看做せる。見方を変えれば巨額の資金獲得と引き換えに「ネットと放送の融合」実現を放棄したとも言える。

 また昨日ライブドアは『
フジテレビの山田常務取締役(編成制作、映画事業、広報、美術、制作、デジタルコンテンツ担当)が12月25日付けで非常勤の社外取締役に就任する』ことを発表した。12月の定時株主総会の承認を経て正式に決定される。今年4月の和解時にフジテレビは第三者割当増資を受けて、ライブドア株式12.25%保有する第2位の大株主になっている。当時から年末にはフジテレビがライブドアに取締役を送り込むと見られていた。今回の人事はライブドアからすれば業務提携内容を深める意図もあると見られる。しかしながらフジテレビが本気でライブドアとの業務提携取り組むとは考え難い。山田常務はライブドアの監視役(目付け役)としてフジテレビから送り込まれると思われる。果たして今後両者の関係はどの様になって行くのだろうか?

 ライブドアは
「2005年9月期に配当2円」との株主提案があったことを発表した。マザーズに上場した2000年以降無配を続けている。もし提案通り実施すれば約21億円の配当に加えて、20万人を超える株主への振込み(あるいは送付)の手数料も結構な負担になる。ところで6ヶ月以上継続保有し議決権ベースで1/100以上、または300個(300株)保有する株主は提案する権利を有する。今回の提案者は300個の議決権を持つ個人株主と思われる。この方は提案が通ったところで540円の配当が得られるだけ・・・問題提起の為に株主提案することが目的と考えられる。さて12月25日の定時株主総会に議案が提出される。筆頭株主の堀江氏は17.25%、第2位のフジテレビ12.25%保有しているが、残りの大半は個人株主が占め安定株主はいない。フジテレビや(株主総会に出席する)個人株主がどう考えているか分からないが、既にライブドアは提案否決に向けて多数派工作を進めていると考えられる。1ヶ月先の株主総会での議論/採決の行方に興味がある。果たして如何に・・・?

 昨日
ライブドアは取締役会を開催し『(1)単独経常損益が13億8800万円の赤字 (2)M&A継続の為の手元資金確保の必要性あり』 との理由で反対することを決定した。更に『時価総額世界一を目指す』為には内部留保の充実は必要不可欠としている。確かにライブドア本体のみでは赤字決算であり理屈から言えば無配が当然・・・しかしながら連結決算ではしっかりと大幅な黒字を計上している。小さな本体の周りにある附属品が利益を確保・・・言い換えれば利益を分散させていることになる。「本体がダメだから無配」では説得力に欠ける。株主はライブドア本体よりもグループ全体への成長期待で投資していることを忘れてはならない。(2)は「内部留保資金を活用して積極的にM&Aを展開し自らの企業価値を高め”時価総額世界一”を狙う」と主張している。然るに堀江氏は常々「インカムゲインよりもキャピタルゲイン」と主張しているが、現時点の株価は必ずしも株主の期待に応えているとは言い難い。無配継続、内部留保重視で行くのであれば、”実のある”M&Aで収益性を高め株価を上げる義務がある。さもないと堀江氏の主張とは矛盾が生じることになる。

 11月24日付けで
ドリームテクノロジーは『代表取締役の異動に関するお知らせ』を開示した。山本社長は代表権のない取締役に降格となり、池田取締役が代表取締役社長に昇格する。池田氏は昨年6月平成電電入社後直ちにドリームテクノロジー出向し、今年3月には取締役に昇任している。何故今この時期に社長交代、しかも民事再生法適用の為のスポンサー選定真っ最中の平成電電から送り込まれた池田氏が社長に就任したのだろうか?異動の理由として『平成電電が民事再生法に基づく再生開始手続きの申立てを行なったことに加え、MACが組成するファンドに対する第三者割当増資による資金調達を受けて、新体制の下で業績向上を目指す』とある。平成電電のスポンサー選定に何か関係があるのだろうか?今回の人事には何やら裏がある様に思われる。水面下で怪しげに蠢いている”何か”が突如水面に浮上して来るかもしれない。

 2005.11.27

 西京銀行の大橋頭取が11月25日の記者会見で『
西京ライブドア銀行の開業が当初目指していた年内から来年にずれ込む可能性が高い』ことを明らかにしたと朝日新聞が報じている。延期の理由は「今年春のライブドアvsフジテレビの1件で2ヶ月間交渉出来なかった」としている。確かに堀江氏が騒動の渦中にあって話し合いが全く出来なかったが、果たしてそれだけの理由で延び延びになっているのだろうか?堀江氏のニッポン放送乗っ取り騒動での強引なやり方、それに西京銀行との業務提携に関する失言(やじ馬見聞録5月28日 参照)などから西京銀行は警戒感を強め交渉が難航?と考えられる。

 ライブドアと西京銀行がネット専業銀行設立を発表した時期は今年1月・・・この頃は堀江氏が(ニッポン放送乗っ取りを仕掛ける前で)昨年のプロ野球の近鉄球団買収失敗の件などで世間から広く好感を持たれていた。今年2月を境にライブドアを巡る状況は大きく変化している。
西京銀行が堀江氏を”心から信用に値するできるパートナー”として迎え入れることが出来るのだろうか?一方堀江氏は自らのブログ(11月8日記載)に『銀行の免許申請などは粛々と金融庁の人たちと面談を担当者が行っています。PTSも認可待ちです。全て準備完了してるんですが、何故か待たされています。』と書いている。ここで言う銀行とは西京ライブドア銀行のことと考えられる。堀江氏は『交渉は全て順調に進み残るは認可のみ』と強調しているが、果たして・・・?いずれにせよ来年4月頃までには状況が明らかになると思われる。

 
グローバリーの上場廃止から1ヶ月近くになる。社長逮捕、社員数激減などのNewsが続いたが(実情はどうか分からないが)細々と継続しているらしい。女子マラソンの野口選手の移籍先も決まったが移籍先は公表されていない。(もしかしたら紙屑になる可能性がある)株券の証券会社から株主への送付が始まっている。また某掲示板では『株主優待の金貨が到着』との書き込みがある。企業存続が危うい状態にも関わらず、株主への約束を取り敢えず果たしている。現在も株主となっている方々はどの様な気持ちでいるのだろうか?売上高の90%占めていた先物商品取引業務が廃止になっては流石に再建は厳しいと思われるが、再建→再上場を夢見て耐えているのだろうか?それとも諦めているのだろうか?

 11月25日に発表されたグローバリーの2006年3月期中間決算短信によると
悲惨な状況にあることが分かる。中間時点での売上高:5億5200万円(前年同期:77億7600万円)、経常利益:▲35億1200万円(前年同期:23億5400万円)、純利益:▲78億8400万円(前年同期:15億円)とは何とも見るも無残な恐ろしい数値ばかり・・・。年間業績予想も売上高:6億6600万円(前年同期:124億4800万円)、経常利益:▲41億1500万円(前年同期:22億3700万円)、純利益:▲83億1700万円(前年同期:15億4600万円)と回復の見込みは全く無い。キャッシュフローを見ても非常に厳しい状況にあることがよく分かる。経営陣はこの先どの様にして企業存続を図って行こうとしているのだろうか?社会的信用を失っている現状では新しい業務分野への展開しても展望は開けない。また現行業務の継続にしても売上げが伸びる状況は考え難い。八方塞がりの状況では近々窮地に追い込まれると推察している。

 
姉歯一級設計士の耐震偽装問題で建築業界が大きく揺れている。関係者間で責任の擦り合いが行なわれている如き状況で実態が見えて来ない。現時点では最終的に誰がどこまで悪行に絡んでいるかは今後の調査(場合によっては捜査)を待たなければ真実は分からない。システム、仕組みがしっかり出来上がっていても介在する人間がデタラメだと何ら正常に機能しない典型的なパターンと言える。

 どこかの自治体の建築確認担当者が「「計算書は国の認定プログラムで作られ、審査で確認する必要がないコンピューター内の計算過程で改竄されていたので見抜けなかった」と釈明している。コンピュータープログラムが正しくてもそこに使われるパラメーター(データ)がいい加減であれば当然結果はデタラメになる。コンピューターを過信するとこの様なミスを犯す。(プログラムが正しいとの前提で)
たとえコンピューターが正しくても、使う人間がミスをすればコンピュターは”正しく”間違えることを忘れてはならない。よく何か問題が起きると『コンピュターのミス』との言い訳けが聞こえて来る。コンピューターがミスをするのではなく、全て人間のミスが原因でコンピューターがミスを引き起こす。コンピュターは万能ではない。コノピュターを作ったのは人間であり、人間の考えたLogicで動作する。従ってコンピューターが人間を超えることなどあり得ない

 ところで当然の如く上場している企業で
販売主として名前が出て来たシノケンの株価も大きな影響を受けている。ここが耐震偽装に直接絡んでいるのかどうかは分からないが、シノケンの”姉歯物件”は最悪買い戻しなどの多額の費用負担が発生する。それに今回の問題で名前が出てことで信用に傷がつき、今後の営業活動に大きな影響を受けることが予想される。11月16日に2006年3月期の業績予想で上方修正したばかりだが、これでは近々下方修正せざるを得ないと考えられる。

 業績好調を受けて11月17日には
シノケンの株価は51万5000円をつけていたが、耐震偽装発覚後は連日ストップ安の売り気配で取引が成立しない状況が続いた。JASDAQの規定によると『3営業日連続して最終値段がストップ高又はストップ安(共に特別気配を含む)となった銘柄について翌営業日の取引から制限値幅を2倍に拡大』とある。11月25日に値幅制限が±10万円に拡大され、ようやく28万3000円で寄り付き終値は26万6000円で取引を終えている。何と1週間ほどで株価は約半分になってしまった。シノケンの責任問題の如何によっては株価が今後どの様な展開を示すか予想し難い。ここの株式を保有している方々にはまさに”青天の霹靂”・・・当面不安の日々が続く。

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