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第51段 * 第49回有馬記念観戦記 ‐2004年の総決算‐ *

 
12月26日中山競馬場、晴れ良馬場、午後3時25分2004年JRAの総決算、GT第49回有馬記念(芝2500m)のゲートが開いた。1番人気はサンデーサイレンス産駒のゼンノロブロイ、2番人気は北海道のコスモバルクと続く。大方の予想通り9番枠の佐藤哲三騎手の7歳馬タップダンスシチーが先手をとる。昨年のジャパンカップでは2着のシンボリクリスエスに9馬身差の圧勝で世間をあっと言わせた。それでだけではない。昨年の有馬記念ではシンボリクリスエスの2着、また今年の宝塚記念では見事な逃げ切りと一介の逃げ馬ではない。凱旋門賞では飛行機トラブルに見舞われ直前のフランス輸送と異常な状態で出走し17着と惨敗したのは可哀そうだった。この強力な逃げ馬に誰が首に鈴をつけに行くのかに注目が集まった。

 毎年のことながらさすが”Grand Prix”だけあり有馬記念には豪華なメンバーが一同に介する。春の3歳クラシックには無縁ながらギリギリで間に合い菊花賞を制した
デルタブルース、外厩制度適用第1号で3歳クラシック戦線を賑わせ前走ジャパンカップで2着と好走した北海道の雄コスモバルク、遅咲きで4歳の8月から翌年の2月にかけて5連勝、GU日経新春杯と京都記念を連覇、春の天皇賞で3着と好走した5歳馬シルクフェイマス、3歳秋からダート戦線で交流重賞GTJBCクラシック連覇など4勝している6歳馬アドマイヤドン、今年の安田記念を制し初のGT制覇の念願を果たした6歳馬ツルマルボーイ、昨年春の天皇賞、宝塚記念のGTを連覇した5歳馬ヒシミラクル、今年のダービー2着のハーツクライ、ダービー3着のハイアーゲーム、昨年の阪神大賞典、今年12月の初めのステイヤーズSなど長距離レースで実績のあるダイタクバートラムなどなど・・・。やはり真打ちはなんと言ってもゼンノロブロイ、今年秋の天皇賞、ジャパンカップを制し有馬記念を勝てば更に2億円の特別ボーナスが待っている。これだけ多種多彩なメンバーが揃えばレースへの期待も当然高まる。今年のダービーをレコードタイムで鮮やかに制したキングカメハメハが神戸新聞杯を勝った後に屈腱炎で引退したのは残念。今年の3歳馬の中では古馬に対抗できる最右翼に位置していただけに尚更惜しまれる。

 最内枠のゼンノロブロイが逃げるタップダンスシチーの2番手につけ、コスモバルクが中団やや後方につけると言う今までとは一味違う展開になった。コスモバルク陣営は「ゼンノロブロイの背中が見える位置につけたい」と語っていておそらく作戦通りなのだろう。タップダンスシチーの逃げは前半1000m60秒くらいのよどみのない流れを作っている。決して無理な逃げではない。過去にも引き付けては離す自在かつ絶妙な逃げでGTを制している。1番人気のゼンノロブロイのオリビエ・ペリエ騎手としては前と後に神経を使わなければならない。コスモバルクは中団につけうまく折り合いがついている様に見えた。ところが勝負どころの第3コーナーでは既に五十嵐騎手の手が動いている。反応が悪いのか前との差が詰められない。第4コーナー手前では五十嵐騎手の手が激しく動きこの時点で既にコスモバルクは終わっていた。

 一方タップダンスシチーの逃げは快調で昨年のジャパンカップの再来も感じさせるほどの手応えがある。オリビエ・ペリエ騎手は敵は前にありと見たか第4コーナーを回るとすぐにタップダンスシチーを掴まえに行った。これは正しい判断で、タップダンスシチーは1/2馬身差の2着に粘りきった。ゼンノロブロイは直線坂上でタップダンスシチーをとらえ、何と昨年のシンボリクエスエスのレコードタイムを1秒上回る
2分29秒5の日本レコードで強さを見せつけた。ゼンノロブロイの快勝はまさに横綱相撲、今年秋の充実ぶりを如実に示した。テイエムオペラオー以来の天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念の3冠を達成、これで1着本賞金1億8000万円に加えてボーナス2億円を獲得した。

 結局タップダンスシチーの首に鈴をつけたのはゼンノロブロイ、2番手の最も危険な位置取りにもかかわらず大名マークから差し切った。その実力は今やNO.1、2004年度の代表馬に相応しい。藤沢調教師によると来年は世界への挑戦、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSへの挑戦を考えている。ゼンノロブロイも世界に挑戦し、世界のGTを狙って欲しい。ホームでのジャパンカップでは1998年以降日本馬が6頭勝っている。日本の馬も着実に強くなっていることを証明している。更に
アウェイのGTのビッグタイトルを獲得する事により、世界に日本馬ありを示して欲しい

 藤沢調教師はこれで有馬記念を3連覇、藤沢厩舎の勢いは来年も続くのだろうか。ところでさすがの藤沢調教師もゼンノロブロイが今回は最後にバテないか心配したと言う。オリビエ・ペリエ騎手は最内枠で出遅れて馬群に包まれるのを嫌って先行策をとった。馬の力を信頼していないとできない。オリビエ・ペリエ騎手はかつてから凱旋門賞3連覇(1996〜1998)の偉業を達成している。さすが名騎手、どこでも馬の能力を最大に発揮する術を心得ている。
ロンシャン競馬場を熟知しているオリビエ・ペリエ騎手とゼンノロブロイのコンビで凱旋門賞に挑戦することになればもしかしたら勝機が見出せると思う。

 それにしても
タップダンシシチーも並みの馬ではない。凱旋門賞のケチをつけられた様なトラブルに巻き込まれ17着に敗れて一時は引退が報道された。その後引退を撤回し有馬記念に出場することになった。この様な場合大概は芳しくない結果に終わることが多いが、7、8分の出来にもかかわらず見事な逃げを打ちそして僅か1/2馬身差の2着に粘りきったのはさすが実力馬。逃げ一手の馬で手の内は全て明らかになっている。それでいてマークがきついにもかかわらずきちんと結果を残す。今日のレースっぷりを見ると引退はもったいない。春は宝塚記念(阪神:2200m)を目指す。8歳になるがまだまだ頑張れる。頑張ってもう1度凱旋門賞にベストコンディションで再挑戦して欲しい。

 3着にシルクフェイマス、4着ダイタクバートラム、5着デルタブルースとそれぞれ力を発揮したと思う。特にダンスインザダーク産駒デルタブルースはジャパンカップ3着に続き有馬記念5着と健闘し菊花賞制覇がまぐれでないことを証明した。今年の4月に6戦目でようやく未勝利を脱した晩成タイプで、菊花賞の3週前に3勝目を挙げてギリギリ出走できた。たまにこの様な晩生タイプがこの様な大仕事をやってくれる。距離が長い方が合っているので、来年春の天皇賞(京都:3200m)が面白いのではないか。

 余談になるが
晩成タイプと言えば私はチャイナロック産駒の1969年菊花賞馬アカネテンリュウを思い出す。未勝利を脱したのは皐月賞の少し前の3月22日、春のクラシック戦線には無縁であった。5月から7月にかけて3連勝し本格化、7番人気ながらセントライト記念を快勝し一躍菊花賞候補に名乗りを挙げる。この時今は亡き”競馬の神様”大川慶次郎氏がただ一人▲をつけて世間をアッと言わせた事を覚えている。菊花賞では1番人気で見事1着でゴールを突き抜けた。その年の有馬記念ではスピードシンボリとハナ差2着の死闘を演じ、その強さが本物である事を示した。古馬になりAJC杯、日本経済賞など重賞4勝したものの、有馬記念、天皇賞などのビッグタイトルには恵まれなかった。”野武士”タイプでその豪快な差し足により競馬ファンには人気を集めていた。私もアカネテンリュウに何とかビッグタイトルをと応援していただけに、いつも残念な想いをしていた。

 さて
コスモバルクは作戦通り抑えてゼンノロブロイより後方に位置することができた。しかしながら全く見せ場を作ることなく中団のまま11着に沈んだ。ゼンノロブロイが昨年の勝ちタイムを1秒も上まわったのだから仕方がない。(単純に比較はできないが)コスモバルクは11着とは言え昨年のシンボリクリスエスと同タイムで走っている。今回1、2着した馬が強すぎたと言うべきであろう。この敗戦で格付けが済んだと決めつけるのは早すぎる。

 道中馬が落ち着いていて五十嵐騎手とコスモバルクは折り合いがついて良い感じに見えた。レース後五十嵐騎手は「いつもよりおとなしすぎた」とコメントしている。いつもより気合が足りなかったということなのだろうか?気性が激しく闘志を表に出すタイプで少々焦れ込み気味の方が好走するのかもしれない。コスモバルクの脚質はカミソリの様な鋭い切れ味と言うより馬力で押し切るタイプと見た。今日の様な展開で1,2着した馬を差し切るには爆発的な末脚を発揮しないと勝ち目はない。同じ結果になったかもしれないが、今までの様にコスモバルクが先行していたらどうなっていただろうか?それはさておいてコスモバルクは既にJRAでGU2勝、GV1勝しているほどで並の馬ではない。
おそらく潜在能力はもっと高いと思う。おそらく田部調教師も五十嵐騎手もまだ試行錯誤を繰り返している段階ではないのだろうか?来年も引き続き努力してJRAに挑戦しGTの栄冠を勝ち取って欲しい

 今年も昨年同様展開による紛れもなく、
強い馬がすっきりとかつ豪快に勝ち極めて心地よい。現時点での力量が結果にそのまま反映されたと考えてよい。ただいつまでも同じ力関係が続くわけではない。ゼンノロブロイの様に今年の秋になってその能力が飛躍的に開花する馬もいる。コスモバルク、デルタブルースなども3歳馬も来年は更に成長した姿をファンに見せてくれるだろう。来年の暮には勢力分布はどうなっているのだろうか?もう既に来年の有馬記念へ夢を馳せている。

(2005.05.28追記)

 今日中京競馬場で第41回金鯱賞(2000m:GU)が行なわれ、1番人気タップダンスシチーが1分58秒9で快勝した。10頭立ての大外枠からあっさりとお決まりの逃げを打ち、59Kgの斤量も関係なく2着に2馬身1/2の差をつけてその実力を如何なく示した。次の目標は宝塚記念、更に秋のGT路線での活躍が今から楽しみ・・・。

 一方昨年人気を集めたコスモバルクは3月26日の日経賞(中山芝2500m:GU)で6着と惨敗で春の天皇賞の出走権が得られなかった。引き続き5月14日香港GTチャンピオンズマイル(芝1600m)に出走したが大差の10着に敗れている。レースっぷりを見るとどうも成長が見られない。このまま終わるとは思いたくないが・・・秋のGTに向けて暗雲が漂っている。
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