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第52段 * スマトラ島西方沖巨大地震 ‐ 大津波の悲劇 ‐ *

 
激動の2004年を象徴する様な大災害が東南アジアで勃発した。12月26日午前スマトラ島西方沖深さ10Kmを震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生、1900年以降発生した地震では4番目の大きさとのこと。ちなみに最大の地震は1960年に発生したチリ地震でマグニチュード9.5・・・年輩の方なら覚えていると思うがこの時チリの反対側にある日本にも1昼夜かけて津波が襲来し三陸海岸で多くの犠牲者が出ている。記憶にも新しい阪神・淡路大震災はマグニチュード7.3、この場合は直下型地震の為建物の倒壊と火災で多くの犠牲者を出した。今回のスマトラ沖地震のエネルギーはなんと阪神・淡路大震災の360倍と言われている。別の計算では1000倍以上らしいがそれはともかくとして、阪神・淡路大震災での凄まじい惨状を思い出して頂きたい。それよりも数段大きい桁違いのエネルギーを持った悪魔が暴れたと考えると身の毛もよだつ想いがする。

 被害はインドネシア、インド、スリランカ、ミャンマー、タイ、マレーシア、モルディブ、バングラディシュ、更に遠く6000Km離れたアフリカ東海岸のケニア、タンザニアなどにも広く及んでいる。ちょうど
クリスマス休暇の時期にもあたり世界各国から観光客がスリランカ、モルディブ、タイなどインド洋周辺の観光地を訪れていた。不運なことにこのことが被害拡大の大きな要因になってしまった。私の知り合いでも潜りが好きで何度もモルディブに行っている人がいる。報道によるとスゥエーデン1500人以上、ドイツ1000人以上・・・など多くの外国人犠牲者・行方不明者が出ている。この時期日本人も大勢この地を訪れており、現時点(12/30)で犠牲者15人、行方不明者多数出ている。最終的には恐らく犠牲者が15万を超えるとも言われる方々の人生を一瞬にして吹き飛ばしまった。何ともむごい事でお気の毒の一言に尽きる。慎んで犠牲者のご冥福を祈る。

 地震発生後の
大津波がインド洋周辺の国を襲っている。場所によっては高さ10mを超える津波が押し寄せたそうだ。今回の津波は秒速200m位の猛烈な速さで海岸を襲った。秒速200mと聞いてもピンとはこないが、時速に換算すると720Km!新幹線の何倍もの驚くべきスピードなのだ。そんな物凄いエネルギーを持つ怪物に襲われたらひとたまりもない。それに加えて津波情報が海岸近くにいた人達に伝わらず全く無警戒であった。遠く2000Kmほど離れたスリランカ、インド東海岸では地震の揺れも感じず、いきなり何の前触れもなく高波が襲ってきて何だかわからないまま亡くなった方も多いと思う。

 
今回何故これほど被害が拡大したのだろうか?
日本ではほとんどの人が「地震」と聞くと「津波」を連想するほど意識が高い。日本は環太平洋地震帯の真っ只中に位置している。過去に1960年のチリ地震、1993年の北海道南西沖地震、1983年の秋田沖地震などで津波の被害が発生している。これらの過去の教訓が生かされて太平洋周辺には世界的な大規模な監視体制が出来上がっている。日本は1960年の三陸海岸の津波で痛い目に会い、ようやく津波の監視体制構築に政府が腰を上げて現在に至っている。現在は地震が起きると必ず合わせて津波情報が流される。この摺込み効果のある情報伝達により我々は意識づけられていると言ってもよい。

 
環太平洋地震帯とは・・・南米チリから中南米、北米の太平洋岸、カナダ、アリューシャン列島、千島列島、日本列島、台湾、フィリピン諸島からニューギニア、ソロモン諸島を通りニュージーランドに至る太平洋を巡る巨大な大地震帯。まさに”地震の巣”で、世界の地震の80%以上がこの地震帯で発生している。

 ところが
今回被害に遭った地域では津波による被害経験がなく、監視体制もなく全く無防備な状態に置かれていた。確かにバングラディシュ、インド、パキスタンなどでの水害の被害は何度も耳にしているが津波の話は聞いたことがない。それに加えて国家財政が貧しく、貧困対策に追われて災害防止対策に回す余裕もないと聞く。恐らく今回の被災で国際的な援助のもとに何らかの手が打たれることになるだろうが、その為に払った犠牲は余りにも大きすぎる。

 
この様な地域の災害防止対策にこそ日本はODAで積極的に援助すべきであろう。津波の到達時間はタイのプーケット島で2時間、2000Km離れたスリランカで3時間・・・決して長い時間ではない。しかしながらそれでも津波の監視体制が整っていて避難指示が出ていれば、多くの人命を救うことが出来たと思われる。そこが残念でならない。モルディブは佐渡ヶ島の約1/3の面積で高いところでも海抜1mほどの小さく平坦な島、地球温暖化が進めば真っ先に水没すると言われている。この国に日本は1988年から16年かけて約6600万ドルを費やしで消波ブロックを作っている。これがなければもしかしたら全島を津波が席捲したかもしれない。被害を最小限に留めたことでこの国から感謝されている。これぞ生きた国際貢献の見本と言ってもよい。

 世界保健機関(WHO)は「被災地域では衛生状態が悪化しており、このまま事態を放置すれば伝染病など疾病による犠牲者が今回の地震と津波による犠牲者と同じ規模に達する恐れがある」と警告している。今回の被災地域は赤道に近い南国で気温が高い。飲料水が確保できないことや排水、ゴミ処理の遅れから衛生状態の悪化が加速し、被災地域でのコレラ、マラリアなどの疫病が流行する可能性が高まっている。

 今国際的な医療支援、インフラ整備支援が必要とされている。国連・国際赤十字社、各国政府などが既に動き出している。
日本政府もタイ、モルディブ、スリランカ各政府の要請により、国際緊急援助隊派遣法に基づき国際緊急援助隊を派遣している。タイへの派遣隊はインド洋から日本へ帰還途中の海上自衛隊の艦船3隻、医師や看護師ら医療チーム20人名、海上保安庁、警察庁、消防庁の職員による捜索救助チーム50名で構成されている。この様な国際貢献は積極的に進めてもらいたい。他人の不幸はいつ我が身に降りかかるかわからない逆に日本が助けられる立場になることもあり得るのだから・・・。

 そう言えば
津波は国際的に”Tsunami”で通用する。別に今に始まった自然現象でもないのに他の国の言葉にないというのが不思議に思われる。英語やドイツ語の辞書などにも載っていない。おそらく学会の専門用語なのかもしれない。ちなみに中国では海嘯 (何と読む?)と書く。 皮肉な事に今回の津波による大惨事で”Tsunami”が一躍世界的な言葉になった。そしてこれを機に今回の様な悲劇が起きる可能性のある地域を含めた世界規模の地震・津波への危険予知協力体制が築かれることを願う2度とこの様な悲劇を起こさない為にも・・・
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