第61段 * テニスの謎 − 不思議なカウント方法 −*
2月6日東京体育館でテニス女子の東レ・バンパシフィック・オープンのシングルス決勝が行なわれ、第2シードマリア・シャラポア(ロシア)が第1シードリンゼイ・ダペンポート(アメリカ)をセットカウント2vs1で破り初優勝を果たした。ダペンポートは世界ランキング1位、シャラポアは第4位、今回のメンバーでこの二人が決勝に残って当然と言えばその通り。ダペンポートは大会3連覇、通算5度目の優勝を狙ったが惜敗した。これでシャラポワはツアー通算8勝目、週明けに発表される世界ランキングではシャラポワは3位に上がる。シャラポアは虎視眈々1位を狙っている。
マリア・シャラポアは1987年4月ロシア生まれの弱冠17歳、183cmの長身と美貌でテニス界の人気を集めている。更にモデルとしても活躍、2004年には日本でもパソコンのCMにも出演している。4歳でテニスを始め6歳の時モスクワで”女王”マルチナ・ナブラチロワに認められる。その際ナブラチロワからテニスの修行はアメリカが最適と薦められ、父と二人でアメリカへ渡る(母は2年後合流)。その後苦労しながら研鑽に励み次第に頭角を現わして行く。2003年16歳の時ウインブルドン大会でベスト16入りを果たし、全世界の注目を集める様になる。また同年にはジャパンオープンで圧倒的な強さで優勝し、日本でも一躍その名を知られることになり人気は高まってきた。そして昨年史上第2位の若さでウインブルドン大会を制し、初のメジャータイトルを獲得した。
リンゼイ・ダペンポートは1976年アメリカ生まれの28歳、こちらも189cmの長身でその強烈なサービスとストロークでファンを魅了している。昨年はメジャー未勝利ながら年間7勝し、若手の台頭著しい女子テニス界でベテラン健在を示し世界ランキング1位に返り咲いた。
さて今日の決勝戦お互いにペースが掴めないのか、第1セットはシャラポアが6vs1、第2セットはダペンポートが6vs3と一方的な展開で決着はFinal
Setに持ち込まれた。第3セットはお互いのサービスゲームをキープし、タイブレークに持ち込まれる大熱戦となった。どちらかと言うと女子の場合サービスにスピード感が足りず物足りない面がある。もっとも男子の場合サービスエースが多すぎて試合がつまらなくなることがあるが・・・。この二人の長身から繰り出すサービスには迫力があり、それにまた二人共反応が良く面白い試合となった。最後は紙一重でシャラポアに勝利の女神が微笑んだが、どちらが勝ってもおかしくない素晴らしい試合であった。
どの世界でも超一流の技は素晴らしい。テニスの世界でも鍛え上げられた肉体と精神力、世界でトップを維持していくのは並大抵のことではない。表に見える所以外でも努力に努力を重ねている。あるレベルまでは努力で達するが、そこから先は天賦の才がないとどうにもならない世界がある。しかしながらいくら天賦の才があっても努力なくしては一流には成り得ない。その様な目でプロの世界を見ていると、「この人達はどれほど努力して今に至っているのだろう」と畏敬の念を感じる。
ところでテニス中継を見ていて不思議に思うことがある。それはカウントの数え方・・・謎めいたカウント方法にはいつも考えさせられる。テニスではラブ→フィフティーン→サーティ→フォーティ→ゲーム(0→15→30→40→ゲーム)と数える。使われている数字とその並びは何だろう?何故0→1→2→3→4→ゲームでないのか?こんなことを考えているとまた寝られなくなってしまいそう・・・(笑)。
このカウント方法については時計説、貨幣説、占姓学説など諸説あるが、いずれも決め手に欠け本当のところが分からないのが真相らしい。その中のいくつかを紹介する。
時計説:昔は試合の経過を記録するのにスコアボードの代わりに時計を使い、1ポイント進む毎に1/4
づつ進めた。でもそうすると”フォーティ”ではなく”フォーティ・ファイブ”のはず?審判がコール
する時”フォーティ・ファイブ”が長くて言いづらく、短かくして”フォーティ”にした。
貨幣説:中世フランスでは貴族の間で「ジュ・ド・ポーム(テニスの前身)」と言う遊びが流行していた。
何か刺激がないとつまらない。そこで勝負にコインを賭けて皆熱くなってPlayしていた。
ゴルフで”にぎり”、つまり密かに(おおっぴらにやると賭博罪)金を賭けて遊ぶのと同じ事。
「15」という単位のコイン(1コイン=15スー)と、それが2枚で「30」、そして15の次に単位の
大きい「40」(12進法で120の1/3)のコイン・・・この様な賭け方をしていた。
その名残りから来ている。
トリプル・ゲーム説:1555年にイタリアで出版された最初のテニス解説書にはトリプル・ゲームの
3、5点制から3X5=15を1ポイントに決めたとある。でも何故”フォーティ”?
単純説:当初は”0、1、2、3、4”とごく普通の数え方だったが、面倒になって?”0、15、30、40”と
短くした。でも何が面倒?どこが短い?何故40?説明がつかないのでは・・・?
皆さんおわかりの様にどの説にも疑わしい点が多く決め手がない。真面目に考えていたら本当に寝られなくなってしまう。別に答えが不明でも何も困らない。こんな説があることを頭の片隅にでも入れておけば良い。まさに無駄知識(トリビア)、人に訊かれたら「こんな説があるよ」と披露するのも面白い。
ところで”0”を何故「ラブ」と言うのだろうか?これも本当のところはわからない。私は昔英語の”love”だと思っていた。フランス語で卵を”loef(ルフ)"と言う。フランス人は”0”の形状から”卵”を連想して”0”を”loef”と呼んでいたが、イギリス人には”love”と聞こえたとする説が有力。競馬用語でスタートのやり直しのことを”カンバイ”と言うのと同じ類。これはスタートのやり直しを英語で”come
back”と言うが、明治初期日本に競馬が入って来た時当時の日本人には”カンバイ”と聞こえそのまま競馬用語として現在に至っている。
また”フォーティ・オール”のなった時何故「デュース」と言うのだろうか?これも本当のところはわからない。恥ずかしながら私は昔”ジュース”と思っていた。フランス語で2個と言う意味の”ア・デュー”から来ているとのこと。もう2ポイントとらないとそのゲームがとれないことから来ているらしい。
いずれも未来永劫真実は明らかになることはなく、恐らく『永遠の謎』であろう。もっとも真実が解明されてもどうと言うことはないが・・・。閑で時間を持て余している時にでも時間つぶしに想像してみては如何?