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第76段  * ガンホー・オンライン株価の高騰は何故? − 新規株式上場の成功例? −* 

 
3月9日大阪証券取引所のラクレスに新規株式上場(IPO)したガンホー・オンライン・エンタープライズ(以降ガンホー・オンラインと記す)の株価が一見異常とも思えるほど値を上げている。公開価格は120万円、初値で420万円をつけ、4月8日はストップ高の前日比300万円高1959万円(公開価格の16.3倍)で取引を終えた。確かにガンホー・オンラインはエフェクター細胞研究所よりはまともな企業かもしれないが、それにしてもこの異常な人気は何故だろう?

 
ガンホー・オンラインとはどんな企業なのだろうか?1998年7月Internet上でのオンラインインタラクティブオークション事業を目的として、ソフトバンクとオンセール(アメリカ企業)との合弁会社オンセールを立ち上げた。2002年8月社名をガンホー・オンライン・エンタープライズに変更し現在に至る。会長の孫泰蔵氏は言わずと知れたソフトバンクグループの総帥孫正義氏の実弟で、堀江氏とは高校の同級生にあたる。社長の森下一喜氏は31歳バリバリの若手で、平均年齢29.9歳109名の従業員を率いている。主要株主はソフトバンクBB(保有比率:42.98%)、アジアングルーヴ(33.17%)など4社で93.76%保有している。2003年12月期決算で収支は黒字に転じ、2004年12月期決算では売上高42.5億円、経常利益5.7億円となっている。

 ガンホー・オンラインのサイトの会社概要紹介によると事業内容は以下の通り

  ・インターネットを利用したオンラインゲームの企画・開発・運営・配信
  ・モバイルコンテンツの企画・開発
  ・キャラクター商品の企画・開発・販売
  ・その他エンターテイメントコンテンツの企画・開発・配信

 ガンホー・オンラインが提出した『新株式発行並びに株式売出届出目論見書』によると、発行済み株数は16030株(+「新株予約権」901株)に対し公募300株・売出700株の合計1000株(発行済み株式の約6.1%)と極端に少ないこんな上場もありとは驚かされる。それにしても僅か1000株とは・・・極端に流動性が低い。この流動性の低さ、言い換えれば品薄感が異常な人気を煽っているのだろうか?加えて孫正義氏の実弟孫泰蔵氏、更にその背後にはソフトバンクグループがどんと鎮座している。ソフトバンクBBが約43%保有しているので投資家からの信用が厚いと思われる。これらの相乗効果で人気急上昇し凄まじい買い人気になっている。3月29日ライブドア証券が主幹事としてIPOを実施して、その後半値以下に暴落しているエフェクター細胞研究所とはえらい違いだが・・・。

 
”買うから上がる、上がるから買う”ではまるでITバブルそのものではないか?かつてバブル期にYahooの株価が1億数千万つけたことがあるが、今回はそこまでは行かないとは思うがどこまで上昇を続けるのだろうか?あまり株価が上昇すると株式分割もあり得る。ともかく無制限にどこまでも上がるはずもなく、また逆にどこかで突然ストップ安の連続も考えられる。如何にも投機的な株式と看做せ、ここに手をつけるのは大博打と言わざるを得ない。うまく勝負すれば巨額の利益を得る可能性があるが、その反対を考えると恐ろしい。手を出して大怪我をする人がいなければよいが・・・?

 ソフトバンクBBなど主要株主4社の含み益は相当な額になりほくそえんでいるかもしれない。目論見書によると主要株主4社と孫泰蔵氏は、募集及び売出しにかかる元引受契約締結日から上場後原則6ヶ月間は株式を売却しない旨約束している。しかしながらその後の保証はなくどうなるかは分からない。森下氏、孫泰蔵氏などが持っている901株の「新株予約権」行使も気になる。そんな状況を踏まえて、僅か6.1%の極端に少ない公募・売出に胡散臭いものを感じるのは私だけだろうか・・・?何やらIPOが特定の人の錬金術(金儲けの手段)に使われている感があり疑念を感じる。

 エフェクター細胞研究所の場合は業績に対する不安と発行済み株式98050株に対して公募・売出で1万9500株と多いことに加えて、「新株予約権」、「新株引受権」併せて5万40株と極端に多いことが災いしている。もともと供給過剰の恐れがあった上に、潜在株式が大量にあるのはどう考えてもおかしい。投資家を馬鹿にしすぎではないか?投資家からの信用が薄くても何の不思議もない。ガンホー・オンラインとは全く正反対で、両極端のケースを短期間に見せられている様に思える。

 この2つのケースから言えることは、「
特にIPOで株式投資をする場合には目論見書などをしっかり読み、その企業の実態を正しく把握する」必要がある。
証券会社やマスコミ報道を素直に信じてはいけない。何でも他人任せでは怪我をするのは必定。他人に文句を言う前に自分の身を固めるのが先決。
 株式投資は結局は”自己責任”で行なうものだから、きちんとした勉強とリスクを負う覚悟を持って対処しなければならない。

 東証二部上場のニッポン放送が上位10株主の累積保有比率が80%を超えて上場廃止になる恐れがあると問題になっている。しかしながら
大証ヘラクレスに上場したガンホー・オンラインの場合は上位4社の累積保有比率が90%を超えていても全く問題にならない。この違いは何だろうか?

 大証ヘラクレスの上場廃止基準のグロース基準では浮動株式数500単位、株主数200人、浮動時価総額1億円などを定めているが、「少数特定者持株数(大株主上位10名及び役員が所有する株式の総数に上場会社が所有する自己株式数を加えた株式数)」に関する規定はない。つまり上場要件さえ満たせばどの位市場に放出するかはその企業が随意に決定できる。だからこそガンホー・オンラインの様に発行済み株式の僅か6.1%でも許される。見方によっては極力市場への放出数を抑え、希少性を高めることで株価の高騰を狙うことが出来る様に思える。意図的な操作が可能とするのは疑念の持ち過ぎなのだろうか?ガンホー・オンライン株価の異常とも思える高騰には益々疑念を抱かざるを得ない。

 株式公開は従来ある程度の規模と収益性のある企業が行なうとされていて、大きな成長が見込める企業でも要件を満たさずに上場を断念するケースが多かった。その後東証マザース、大証ヘラクレス、名証セントレックスなどの新しい市場が開かれ、新しい企業の上場への門戸が大きく広がることになる。その為一部、二部上場基準に比べるとかなり緩くなっている。

 
市場に株式を上場する為の審査基準には「形式基準」と「実質基準」がある「形式基準」では資産や利益の額、株主数などの要件を定めている。「実質基準」では経営管理体制など公開企業に相応しいか否かを多面的にチェックすることを定めている。証券取引所により基準が異なるが、ここでは潜在的な成長性があり市場性の見込める所謂ベンチャー型の企業が対象となる大証ヘラクレスのグロース基準について説明する。「形式基準」は以下の通り。

  ・総資産、時価総額又は総資産・総収入、利益の額:上場時株主資本の額4億円以上、
   又は時価総額5億円以上、又は利益の額7500万円以上
  ・設立経過年数:1年以上、又は時価総額50億円以上
  ・最低浮動株式数:1000単位以上
  ・最低株式公開数:500株以上
  ・浮動株式時価総額:5億円以上
  ・株主数:300人以上
  ・監査証明:2事業年度虚偽記載を行なっていないこと

 形式基準に適合すると、次に実質基準による審査が企業から提出された資料を基に質疑応答が行なわれる。「実質基準」の主な審査の論点は以下の通り。

  ・申請企業が継続的に事業を営み、かつ経営業績の見通しが良好なものか?
  ・事業を公正かつ忠実に遂行しているか?
  ・企業内容の公開を適切に行なうことができるか?

 大証ヘラクレスの上場基準、上場廃止基準を見ると、一部、二部の基準に比べるてかなり緩いことが分かる大証、及びヘラクレスの上場基準、上場廃止基準はこちら参照)
新規市場の設立目的からして緩くなっても当然だが、使い方を誤まると不正の温床になりかねない。各証券取引所の厳しい審査体制と不正防止の為の厳しい常時監視体制が必要となる

(2005.06.04追記)

 上場してから約3ヶ月経過し、株価は1500万円〜1600万円付近を動いている。昨日の終値は前日比128万円高の1610万円で取引を終えている。昨日の出来高は338株、安値1470万円、高値1682万円でその差212万円!いったいこんな高い株式を誰が売買しているのだろうか?個人でここの株式を売買しているのはどの様な方なのだろうか?世の中には金持ちがたくさんいるもの・・・”お金は天下の回り物”ではなく、”ある所にはある”、いや”ある所にしかない”が正しい。それにしても凡人には恐ろしくて手が出せるものではない。

(2005.07.08追記)

 今日の出来高は63株と近頃連日冴えない取引が続いている。ここの異常とも思える人気にもさすがに蔭りが見えたものと思われる。3月9日に新規上場し4月には一時2300万円まで高騰したが、その後徐々に値を下げ今日の終値は前日比53万円安の1325万円で取引を終えている。最高値と今日の終値の差は実に1000万円あまり・・・。その落差の大きさには驚かされる。儲けた人も損した人もいると考えるとここの株式は恐ろしさに満ち溢れている。まるで博打・・・。


(2005.07.25追記)

 ガンホー・オンラインは1:5の株式分割を行なうと発表した(詳細はこちら)。それによると株式分割基準日は8月31日、効力発生日を10月20日として1:5に分割する。簡単に言うと8月31日時点の実質保有者を対象として10月20日に実施する。何せ1000万円以上の高い株式なので、必ずどこかで株式分割を実施してくるとは思っていた。単純に今日の終値1425万円を5で割ると285万円となるが、間違いなく分割後に株価は跳ね上がる。いったいいくらまで行くだろうか?

 株式分割発表後の後場はストップ高の1534万円の買い気配で取引が成立していない。明日から8月31日までは1ヶ月以上あるが、その間の取引はどう進行するのだろうか?どの程度の売りが出るのだろうか?株式分割が好材料となり売りに出す株主は少ないと思われるが・・・。止むを得ぬ事情で手離す株主がいれば市場に出るだろうが高値がつくのは間違いない。

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