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第82段    * アメリカ南部の巨大ハリケーン被害 − 人災の側面も・・・ −

 アメリカ南部を巨大なハリケーン『カトリーナ』が襲い、数千人もの犠牲者と多大な被害を出している。今回のハリケーンはアメリカの尺度ではクラス4、風速60m以上の超大型・・・昨年もこの辺りを大型ハリケーンが襲い多くの被害を出している。『カトリーナ』はフロリダ半島に上陸した後一旦メキシコ湾に出て、勢力を保ったまま再びルイジアナ州とミシシッピー州の境に近いニューオーリンズ付近に再上陸した。

 フロリダ半島、メキシコ湾付近は日本では沖縄辺りの緯度で海面の温度が高い。カリブ海付近で発生するハリケーンが大型になり易いのは、海面温度が高くハリケーンが発達するのに充分過ぎるほどのエネルギーを供給していることによる。そこに加えて近年の地球の温暖化により更にハリケーンの巨大化を引き起こしていると考えられる。ハリケーンに限らず地球の温暖化現象は世界各地で異常気象などによる様々な災害をもたらしている。しかるにブッシュ政権は未だに温暖化を認めていない。CO削減などを定めた京都議定書を批准していない。”世界の警察”などと大言壮語しているが、実際にやっていることは自己中心のわがままな行為に過ぎない。

 ニューオーリンズはミシシッピー川の河口にあり、ジャズ発祥の地としても世界的に広く知られている。ここは多くの地域が海抜0m以下・・・何と海面より低いところにあり周囲に張り巡らされた堤防で守られている。この辺りはハリケーンの通り道に辺り、日本的に言えば”台風銀座”・・・ところが堤防の強度はクラス3、風速50m位までしか耐える力がない。そこにクラス4のハリケーンが襲って来たのだから一溜まりもない。観測史上最高の8mの高潮発生など凄まじいエネルギーは、2ヶ所の堤防を決壊させ町を一瞬にして破壊し尽くした。ところで海抜0m以下と聞いて”江東0m地帯”を思い出した。今では治水対策がしっかり行なわれ被害は出ていないが、いつ頃までだたろうか(昭和30年代後半?)台風が来ると冠水の被害が出たのを新聞などで見て記憶している。

 
アメリカでも今回被害を受けた地域が最も水害の危険性が高い地域であることは充分に認識されていた。当然堤防の強化計画があったが、資金難を理由に今年度予算でCutされてしまった。アメリカ政府や州政府など関係当局は少なくとも5年前から災害を想定し、机上演習も2回実施していたが分かっている。今年1月に連邦緊急事態管理庁(FEMA)幹部がスマトラ沖大地震・津波の被災地を視察したが、その際もアメリカが学ぶ教訓としてニューオーリンズが最も脆いと結論づけている。そこまで深刻な状況を認識していながら予算不足を理由に危険な状況を放置するとは・・・。今になって関係当局は「堤防決壊までは想定していなかった。」と苦しい言い訳けをしているが、どこの国でも同じ輩がいるもので責任逃れの姿勢が見え見えで本当に見苦しい。

 
ハリケーンによる自然災害ではあるが、愚かな政治家が引き起こした人災の側面もある。昨年フロリダ半島で巨大ハリケーンが大きな被害をもたらしたことは記憶に新しい。本来であれば人命尊重の立場で安全対策を真っ先に執らなければいけないが、予算削減となると真っ先に検討対象に挙げられ実際に削られることが多い。政治家は人気取りの為に何時起きるか分からない災害対策よりも目先の派手で効果がすぐに目に見える事項に特化してしまう。安全対策を疎かにした結果今回の様な大災害がもたらされブッシュ大統領以下政権中枢の面々が慌てふためている。やるべきことをやっていないブッシュ大統領以下政権中枢いる連中には鉄槌が下されなければ筋が通らず道理が引っ込む。

 アメリカ政府の救援活動はなかなか進んでいない。アメリカ国内では過敏とも思えるほど9.11以降テロ対策の重きが置かれ、どうしても自然災害への対応は後手を踏んでいる。イラクへの派兵の為に州兵が少なくなっている為に救援活動や治安維持活動が手薄になってしまっている。TVには被害の甚大さを示す映像の他に、無法地帯となった街中の略奪の様子を映し出している。略奪の様子がTVに映し出される度に限定的だがアメリカの後進性を垣間見る様に感じる。とにもかくにも
今回の様な大災害が起きると思わぬところにイラク戦争の影が見え隠れしている。

 
アメリカの財政逼迫の最大の原因は長期化するイラク戦争への莫大な出費であることは言うまでもない。”世界の警察”を(勝手に)自認しているアメリカは、自らの意にそぐわない国家に対しアメリカが”正義”としている民主主義を押し付けるべく何時でもどこでも介入する。アフガニスタン然り、イラク、かつては失敗に終わった北朝鮮、そしてベトナム・・・。イラクではフセイン政権を倒すべく適当な理由をつけて軍事介入して政権を倒すことには一応成功した。しかしながらフセイン元大統領の支持基盤スンニ派から権力を奪ったシーア派を中心にしてイラク国内を安定させ様とするアメリカの狙いは簡単には実現できない。抵抗勢力の活動は激しくなる一方で一向に「平和なイラク」の姿が見えて来ない。それでも「イラクはアメリカにより自由と平和がもたらされた。」とブッシュ大統領はアメリカの功績を強調する。どこぞの指導者は「■■■を派遣している地域は非戦闘地域」、つまり”平和な地域に行っていあるから安全”と強調している。いずこの政治家も都合の良いところだけを強調する能力は優れているらしい。言い換えれば詭弁の達人と言ったところか・・・?

 
アメリカの最も大きな狙いはイラクに於ける石油利権の確保にある。フセイン元大統領がいる限りアメリカはイラクの石油に手を出せない。そこでフセイン打倒したが、その後のイラク国内の混乱で石油の安定供給どころの話ではない。イラクに平和をもたらし、そして中近東にも平和をもたらし、その結果石油が全世界に安定的に供給されるはずだったが・・・現実にはそれどころではない。中近東に於ける政情不安、中国のバブルの様な経済発展による石油需要の急増、そして今回のハリケーンによるメキシコ湾岸の石油産出地域へのへの打撃・・・原油価格は一時的にせよ1バレル70$を超えるなど高騰して世界経済に深刻な影響を与えている。

 アメリカに対しては日本国内でも基地問題など言いたいことは幾らでもある。近くに厚木基地があり特に横須賀軍港に空母が帰還するととたんに騒音被害がひどくなる。私の家は厚木基地周辺の飛行訓練コースのはずれにあるので(毎回ではないが)米軍機の轟音でTVの音が聞こえないこともある。まさに”人非人”米軍の蛮行・・・とても正常な人間の正気の沙汰とは到底思えない。日米特別地位協定で米軍機は日本の法律に縛られることなく自由にどこでも何時でも好き勝手に飛行できる。これは対等な国家関係とは思えない。幕末に江戸幕府が諸外国と結んだ不平等条約と何ら変わりはない。おかげで明治政府は治外法権の撤廃、関税自主権獲得に長期間費やすことのなった。日米特別地位協定の明らかにアメリカに有利な、言い換えれば不平等な規定は容易に改善されない。既得権を主張するアメリカがこんな美味しい規定を手離すはずがない。日本政府のアメリカべったりの弱腰な姿勢も気に入らない。

 それはさておいて
アメリカ国内で今回のハリケーン被害を受けた方には一刻も早く元の生活に戻れる様になって欲しい。基本的にはアメリカ国内の問題でありアメリカ政府の努力が重要だが、国際協調の観点からは諸外国も出来ることがあれば手を差し伸べなければならない。昨年暮れのスマトラ沖の大地震、そして大津波による凄まじい被害は記憶に新しい。いつ何時大災害が我が身を襲うか分からない。日本政府は50万$の金銭的、物質的緊急援助を決めた。被害を受けた方々の復興の為には必要なことは充分に認識し実施して当然と思うが、反面(アメリカ政府に対する不信感の為か)心の底に何かどうしても割り切れないものを感じる。世界各地にアメリカの身勝手な行為に苦しめられている大勢の民衆がいることをアメリカは認識しているとは思えない。自分達の被害ばかり強調するのではなく他人の痛みをきちんと知らなければならない。それが出来て初めて公平な国際協調と言える。
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