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第83段     * 三木谷氏の野望 その1 − 狙いはTBS乗っ取り・・・? −

 楽天、村上ファンドがTBS株式を買い集めていると報じられ、今年春のライブドアによるニッポン放送乗っ取り騒動の再現?と大きな話題になっている。10月13日現在楽天は既に約880億円の巨額資金を投入し、発行済み株式の15.46%(約2938万株)を取得して筆頭株主になったことが明らかになった。同日夕方行なわれた記者会見で三木谷氏は「共同持ち株会社の設立による経営統合を申し入れた。」と発表した。持ち株会社の傘下にTBSグループと楽天グループが収まる形になる。ところで経営統合が実現すれば『ネットとメディアの融合』の実現と言うことになるが・・・。そう言えばどこかで聞いたことがある歌い文句だが、騒動の渦中堀江氏がさんざん口にしていたことを思い出す。今回もまた同じことを三木谷氏が口にしている。

 かつて堀江氏が「次の狙い目はTBS」と発言したことがある。TBSは東京・赤坂に優良な不動産を保有しており、更にプロ野球の横浜ベイスターズも所有(約70%)しているなど優良資産を多く持っている。然るに企業価値の割には株価が安く格好の狙い目(投資対象)との指摘が以前からなされている。ニッポン放送同様安定株主が他の民放よりも少なく、敵対的M&Aの標的になり易いとの指摘が既になされている。つまり前々から今回の様な事態が起き得ることが指摘されていた訳けで、TBS経営陣の脇が甘かったとの謗りを受けても仕方がない

 ライブドアは『時間外取引』を使って敵対的M&A目的に1/3超の株式を取得して”脱法行為”と批判を浴びた。楽天はライブドアの事例を学習して敵対的M&Aとの批判を受けない様に立ち回ろうとしているのが随所に窺える。ライブドアのニッポン放送株式買占めの時とは異なり、時間をかけて目立たぬ様に巧妙に買い付けを行なっている。大量保有報告書を見ると楽天は8月15日から2ヶ月かけて連日買い進めている。それに保有比率15.46%の段階でTBSに提案を行なうことで、(少なくとも現時点では)敵対的M&Aの意思はないとの姿勢を示すことが可能になる。それでもTBSからすれば突然株式を大量保有して要求を突きつけられたも同然で、すんなり提案を受け入れるとは考え難い。堀江氏ほど乱暴なやり方ではないが唐突に出現した感は否めなく、TBSが不快感を示しても当然・・・。尤も隙をつかれたTBS経営陣の間抜けさには呆れているが・・・。

 10月14日夕方村上ファンドのTBS株式の大量保有報告書が開示された。それによると村上ファンドが9月末時点で発行済み株式の7.45%(1415万1500株)保有している。村上氏は10月4日TBSに対してMBOを正式提案しているが、一方では楽天がTBS株式のTOBを実施する場合には有利な価格であれば売却する方針を明らかにしている。ニッポン放送乗っ取り騒動でも村上氏は保有株式の多くを有利な条件を示したライブドアに売却している。村上氏はいろいろと能書きを言っているが、恐らく今回も(事態の推移にもよるが)楽天に売却する可能性が高いと見ている。いずれにせよ当面村上氏がライブドアの時同様Key Personとして大きな鍵を握っている。事態がどう動くにせよ”抜け目のない”村上氏がまたまた大儲けすることだけは間違いない。

 村上氏がどの様に動いているのか分からないので現時点では何とも言えないが、もしかしたら村上ファンド、楽天がつるんでの共同作戦?との疑念が生じる。三木谷氏が堀江氏の様に経営権取得を目指して露骨に過半数超を狙うかどうかは分からないが、TBSの対応次第では特別決議拒否権の1/3超取得を目指しTOB実施の可能性を示唆している。しかしながら現状では実質TBS乗っ取りに繋がる持ち株会社設立提案をTBSが承諾するとは考え難い。楽天とTBSの交渉が行き詰まれば村上氏は取得したTBS株式を三木谷氏に譲渡する可能性が高く、楽天vsTBSの壮絶なバトルが勃発する可能性がある。そうなればニッポン放送乗っ取り騒動の再現と言うことになるが・・・?一昨年プロ野球への新規参入で後出しの楽天がライブドアを押さえたが、果たして今度も後出しの楽天が成功するかどうかちょっとした見物になるかもしれない。


 
TBSは今年6月に敵対的M&Aへの防衛策として、日興コーディアルグループの投資会社、日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)に新株予約権を割り当てている。敵対的買収者がTBS株式の20%超を取得した場合、NPIは新株予約権(2000万株)の権利行使できる条件が整う。もし村上氏保有のTBS株式が楽天に売却されて保有比率が20%を超えることになればTBSはこの防衛策実施を検討することになるが、楽天、村上ファンドから訴訟を起こされた場合の対応は用意されているのだろうか?ニッポン放送乗っ取り騒動の教訓として当然しっかりと考えているはずだが・・・。さもないと”●●”な経営陣のレッテルを貼られることになる。ところでニッポン放送乗っ取り騒動の時もそうだったが、後手を踏んで登場して来る仕掛けられた方の経営陣は何故か揃いも揃って冴えない”●●”面を公衆の面前に晒している様に見えてしまう。

 ところで10月15日のサンケイ新聞は『TBSがMBOを検討』していると報じている
(以下原文のまま掲載)

 TBSは14日、旧通産省OBの村上世彰氏率いる投資ファンド(村上ファンド)から提案されている経営陣による自社買収(MBO)を通じた株式非公開化の検討を本格化させていることを明らかにした。また、村上ファンドが9月30日時点でTBSの発行済み株式の7.45%を保有していたことが、関東財務局に同日提出された大量保有報告書で判明した。楽天と村上ファンドに株式を大量取得されたことで、TBSは経営の独立性を守るために「究極の企業防衛策」といわれる自発的な上場廃止を選択肢として浮上させたもようだ。

 村上氏は既に8月にTBSに対してMBO提案しているが、この時はTBSはMBOに消極的で明確に回答していない。それでは何故ここに来てこの様な報道が出たのだろうか?それは楽天が株式を大量取得を背景に共同持ち株会社設立を提案したことが挙げられる。共同持ち株会社と言えば聞こえは良い。ライブドアがニッポン放送乗っ取りを仕掛けた時ほど露骨には感じない。しかしながら
現時点の時価総額を比較すると楽天:TBS=1兆390億:7200億≒6:4・・・共同持ち株会社を設立すれば出資比率は時価総額の比率となり、実質的に楽天が共同持ち株会社の経営権を掌握することになる。とすれば傘下のTBSグループの経営に直接携わらなくても、親会社の意向として強力な影響力を有することが出来る。つまりライブドアの乗っ取り騒動を学習している三木谷氏は世間の批判をかわすべく形を替えて仕掛けているとしか思えない。ズバリ言えば
三木谷氏は表面上”共同持ち株会社を設立”を提案しているが、結局はTBSグループ乗っ取りを目論んでいるとしか考えられない。

 とすれば警戒心を強めているTBS経営陣が防衛策を検討しているのも当然・・・但しどうしても後手を踏んでいるので対応が苦しそうに見える。友好株主への株式買い増し依頼、敵対的M&Aへの対抗策のNPIへの新株予約権発行、それにMBOなど・・・突然の予期せぬ来訪者に慌てふためいていえるのが手に取る様に目に浮かぶ。NPIへの新株予約権発行はTBS内の第三者機関『企業価値評価特別委員会』の承認を得る必要があるが、委員長の諸井氏が朝日新聞の取材に対し楽天の提案を評価する考えを示したと伝えられている。それにニッポン放送乗っ取り騒動の時に同様の手段をとろうとして司法から差し止めされた前例があり、今回も村上氏が株主代表訴訟を示唆するなど実施に向けてのハードルはかなり高いかもしれない。

 そこで
”究極の企業防衛策”と言われるMBOの登場・・・実際にアパレル大手のワールドがMBOにより上場廃止したことは記憶に新しい。確かに上場廃止すれば乗っ取られる可能性はなくなる。しかしながら当然メリット/デメリットがある。例えばTBSがMBOを実施する場合、現時点の株価で考えると約6000億円の巨額資金が必要となる。優良資産を多く保有するTBSと言えども流石にこの巨額の負担は相当に応えるので実施決断にはかなりの覚悟が必要になる。仮に実施して企業防衛に成功してもその後の財務状況を考えると不安がとてつもなく大きい。TBS経営陣は今後どの様な手段を講じるにせよ難しい舵取りを迫られることには違いない。
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